「一部上場企業なのに全員取締役」って、さすがに無茶じゃないですか? 副社長に疑問をぶつけてみた
2020年12月、サイボウズは「次期取締役の社内公募」を発表しました。その後は入社1年目のメンバーを含む17人が立候補し、最終候補者となる予定です。
そんな方法で取締役を増やして、会社の運営は大丈夫なの──? ツイッターなどで寄せられている疑問について、サイボウズ式編集部が取締役副社長の山田理に聞きました。従来の取締役は「あまり機能していない」のでは?
ちゃんと説明できる場が与えられてうれしいですよ。
「立候補した人を全員最終候補者としました。性別も国籍も年齢も、そんなこと関係なく、これが今のサイボウズで取締役になりたかった人たちです。そして、ぼくは立候補しませんでした。 次期取締役最終候補者を公開 新卒1年目を含む計17名の社員が最終候補者として選出」 |
December 22, 2020
まずは、なぜ取締役を社内公募することにしたんですか?
でも、従来の取締役が実際に担ってきた役割を振り返ってみて、一度見直すべきじゃないかと考えたんです。
そもそも、取締役って何のために存在していると思いますか?
でも世の中を見ていると、取締役はあまり機能していないような気がしていて。
そうした人たちのせいで、若い人のアイデアが次々と潰されていると思うんですよ。これでは時代の変化に対応できません。
むしろ、いろいろな人からアイデアをもらったほうが、意思決定のクオリティを高められるはずですよね。
取締役がいいアイデアを持っていることではなく、いいアイデアが社内から生まれるようにすることが大事なんです。
取締役の議論もオープン。「一部の人」だけで決めなくてもいい
一部の人だけが取締役としての権限を持ち、閉じられた場所で会議を開いて進めていくほうが、内部統制においてはよほどリスクが高いと思いませんか?
もし僕がおかしなことをしていたら、ツイッターなどでオープンに意見が出る可能性もあります。
今のサイボウズではそれができるので、経験や知識をもとにするのではなく、「この文化に理解があり、共感してくれる」人が取締役を務めたほうがいいということになりました。
立候補しなくても「実はあなたも取締役なんです」
ツイッターでは「若手の士気を高めるためでは?」「採用面でのアピールでは?」などと推測されていますが。
サイボウズの新しい取締役は権限を行使する必要がないことが前提です。「責任を持たない取締役」だから、職務経歴書に書いても他社からは評価されないと思います。
取締役は、問題がないことを確認した上で、手続き的な場面で承認するだけです。
取締役は、会社に対して善管注意義務を負っています。それに違反して株価が下がったり、何らかの重大事故が起きたりしたときに、株主代表訴訟などの対象となる責任を負っています。
法律上は「権限を持っている人」なので、こればかりは仕方がありません。より正確にいうと、「権限を持たない取締役」は「権限行使の必要がない取締役」ということです。
でも、先ほどお話したように、社内的には取締役だからといって特別な権限があるわけではありません。だから取締役としての報酬もないのです。
誰もが立候補できる前提には、全員が意思決定のプロセスを主体的に見ていることがあります。
今回、取締役にならなかった人たちにも、「実はあなたも取締役なんです」と伝えていける。これがいちばんのメリットだと思います。
全員取締役という考え方は、そのカウンターでもあるんです。
そうなれば、ほぼ「全員取締役」に近い状態ですよね。
「1年間、サイボウズの社外取締役になれますよ」と募集するアイデアも
ガバナンスという意味では、先ほど説明したようにサイボウズの意思決定プロセスは、社員全員が見ています。悪いことをしようと思ってもできない環境です。
また、社外の人の知見がほしいなら、お金を払って教えていただけばいいだけの話です。
1つのアイデアとしては「社外取締役インターン」ですね。
株主総会ではその人に「サイボウズ社外取締役として学んだこと」を発表してもらうのもいいですよね。
もちろん、株主のみなさんにも理解してほしいし、サイボウズが作ろうとしている世界観に共感してほしいと思っています。
「取締役なのに」「取締役のくせに」と言われない世の中になる
「え、君はまだ取締役になってないの? 私なんて3回目やで」みたいな。
もちろん、形として取締役になるかどうかは自由に決めてもらえばいいと思います。会社との距離感も人それぞれなので。
全員取締役を目指す僕たちの真意が世の中へ伝わっていけば、「取締役なのに」と言われることはなくなると思います。
これからのサイボウズの取締役にはリスクはほとんどないので、「おもしろいやん!」と思って挑戦する人が増えてくれたらうれしいです。
「ま、まさか…ぼくですか?」 |
December 22, 2020
幸福の福をあてて「福社長」を名乗ってもいいかもしれませんね。全部ひらがなで「ふくしゃちょう」でもいいかな。
それくらい、今の立場にこだわりはないです。
みんなが理想に共感し、取締役としての意識を持った組織を作ろうとしているのに、僕が「副社長」や「取締役」にしがみついていてもしょうがないですから。
2月27日(土 )株主会議2021のお申し込みページを公開しました。ぜひお気軽にご参加ください〜! 株主会議2021 サイボウズと語る一日 https://t.co/UKPaogIJYZ ※株主の方はもちろんのこと、そうでない方もご参加できます。オンライン開催となります。 |
January 29, 2021
SNSシェア
執筆
多田 慎介
1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。
撮影・イラスト
高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。