先陣をきって育休を取ったイクメンのリアル
フリーランス保育士の小竹めぐみさんが運営するNPO法人「オトナノセナカ」。同法人では平日の夜、パパたちがふらっと集まって子育てについてお酒を呑みながら語る、パパによるパパのための学びの時間「パパノセナカ」を開催しています。今回はこの「パパノセナカ」とサイボウズ式がコラボレーション。育休取得経験がある、あるいはこれから取ろうとしているイクメンパパ3人に「イクメンのリアル」について語り合ってもらいました。
男性の育休取得に男女共に9割以上が賛成(経済広報センター「女性の活躍推進に関する意識調査」)なのに、実際に取った経験のある男性はたったの2%(厚生労働省「雇用均等基本調査」)程度だそう。そんな中、仕事と育児を両立しようと奮闘するイクメンパパは日々、どのように子どもや奥さんと向き合い、どんなことを感じているのか。小竹さんとともに合同会社こどもみらい探求社の共同代表を務める小笠原舞さんもコメンテーターとして加わり、イクメンパパたちのホンネを聞き出します。
「2人目ができたら育休を取得する」と周囲に宣言していた
まず、今日集まっていいただいたパパの共通点として、育休を取った、あるいはこれから取ろうとしているということが挙げられます。陶山さんはこれから取ろうとしているわけですが、なぜ取ろうと思ったんですか?
もともと結婚した時から取りたいと思っていたんです。ただ、1人目が生まれた時はまだ今の会社に転職して半年ぐらいしかたっていなかったのでちょっと難しくて。今回、2人目が生まれることになり、絶対に取ろうと決めました。上の子がまだ2歳と小さいので、お母さん1人で生まれてくる子供の面倒まで見るのは大変じゃないですか? 自分もきちんと育児に関われたらいいなと思ったんです。
なるほど。
奥さんも仕事を大事にしているので、働き続けられるようにしてあげたいという思いもあります。最初の職場でも、育休を取っていた女性はいて、1人目の時は復職していたけれども、2人目でリタイア、となることが多かったんですね。2人目が生まれる、というのは女性のキャリアを考えた時に1つのターニングポイントになると思っていて、そこを支えてあげたいと。
やさしいなあ。相手を尊重しつつ、自分のできることをやろうという意思を感じますね。
育休取得を目前にして、今はどんな気持ちですか? 周りの反応はどうですか?
今は引き継ぎでバタバタしていて大変ですね(笑)。周りの反応については、僕は1人目が生まれた時から、2人目ができたら育休を取ると宣言していて。飲み会などでおめでとう、と言ってもらうたびに、「次は休みを取りますから」と返していたんです。だから、今回上司との面談で育休取得を申し出た際も、「あ、本当に取るんだな」という反応でしたね。
「周囲に意識を植え付けていた」と。これは今後、育休を取ろうと思っている男性はメモですね。
なんで半年なんですか?
当初は3ヶ月にしようと思っていたんです。ただ、出産後、女性の体が元に戻るまで、1ヶ月くらいはかかりますよね? それでもまだ完全とはいえないし、子供もまだ首が座っていない状態だと安心して寝かせておくこともできない。ならば寝返りがうてるくらいになるまで取ろうか、ということで半年にしました。
難しかったのは「今は育休中だ」と割り切れなかったこと
では続いて、すでに育休を取得したお二人のお話を聞いてみましょうか。谷口さんは2週間取ったんですよね? なぜ取ったんですか?
妻は帰省出産だったので、出産後3ヶ月は実家で過ごしていたんです。それまで実家でいろいろサポートしてもらえていたのに、帰ってきたらいきなり1人、という状況はキツいんじゃないかと思いまして。上の娘もまだ1歳8ヶ月でしたし。僕は育休を半年取るのはさすがに無理なので、帰ってきてからの生活のリズム作りを手伝えれば、と考えました。
2週間で何ができるかは正直、わからなかったですが、当社(サイボウズ)社長の青野が2週間取っていて、それを社内の男性社員にも広げようとしていたんです。ただ、営業ではまだ取っている人がいなかった。自分が先陣を切ることで、営業でも取れるんだ、ということを後輩に示したかったのもありますね。
ステキですねえ。育休を取得して、どんなことがよかったですか?
子供と過ごす時間をゆっくり取れたのはやはり貴重でしたね。平日に娘と動物園に行ったりできましたし。週末はどこに行っても混んでいますからね。
逆に難しかったのは、結局、「今は育休中だ」ときっちり割り切れなかった点です。2週間程度の育休ならわざわざ引き継ぎをするまでもないだろう、ということで、何かあったら電話やメールで対応する、としていたんですが、やはり結構、至急対応しなくてはならないことが出てくるんですよ。子供を遊ばせていて、部屋の隅から電話することもしょっちゅうでした(笑)。まあ、営業なので仕方ないところはあるんですが。
そこは本当に難しいですね。松本さんはいかがでしたか?
僕は奥さんが会社に復帰するタイミングに合わせて、1ヶ月取得しました。理由は、半ば義務感からですね。もともとは、数年前にサイボウズの青野社長の記事をたまたま目にして「育休をとる社長がいるんだ!」と驚いたものの、それを自分ごととしては考えず育休を取ろうという発想もありませんでした。最近、子供も生まれてサイボウズ式のワークスタイル関連の記事をよく読むようになって、これは自分も取らなくてはいけないのではないかと思うようになって。
僕は会社で、企業理念の浸透の施策などを取りまとめるプロジェクトチームのマネージャーもしており、そういう仕事をしているからには先頭を切って育休を取るべきとも考えたんです。ただ、逆にマネージャーをしているのに抜けてもいいの? という思いもあり。そこで改めて、サイボウズ式や青野社長の育休の記事を読み直して、やはり取ろうと決意しました。
サイボウズ式がきっかけだったんですね。
ええ。取ってよかったのはやはり、子供との親密感が高まったことです。育休を取った時、子供は7ヶ月くらいだったのですが、奥さんは出産で3ヶ月帰省していたのもあり、僕と過ごしていた時間は短くて、何かあると「ママ〜」と泣いていたんですよ。まあ、それは変わらないんですが、育休を取ってからは、保育園に連れて行くと僕と離れたくないと泣くようになり。「ママには負けるけど、保育士さんよりはまだ自分の方がいいんだな」ということで、パパの自覚も強まりました。慣らし保育の期間だけでしたが(笑)
わかりますねえ。
育休取得で芽生えた「当事者意識」
あと、やってみないとわからないことはいろいろあるんだなと思いましたね。それまでは帰ってきて、食器が洗わないまま残っていたりすると、正直、「それぐらいはできるんじゃない?」と思っていたんです。でも、いざ自分がやってみると、こりゃできないな、と。
当事者意識を感じるようになったというのもあります。育休を取るまでは、何を食べさせるか、何を着せるか、あらゆることを全て奥さんが考えていて、僕は言われたことをやっていただけだったんです。そもそも「手伝う」という意識でしたし。でも実際育休を取って、子供と自分だけで接する時間が増えると、ああ、こういうことまで考えないといけないんだな、と改めて感じました。それまでは子供の服やオムツのサイズもよく分かってなかったですからね。
そうなんですよ! ママはよく「一緒に考えて!」とパパに言うんです。でもパパはその意味がわからないんですよね。育休を経験したお二人は、どれくらい取ればいいかというお薦めの期間ってありますか?
長くても1ヶ月かな。それぐらいなら、仕事の面でもきっちり引き継ぎをして「さあ、育休を取るぞ」と構えなくても、もっとライトな気持ちで取れる。3ヶ月となるとやはり、「その間どうしよう?」と思ってしまいますから。
僕も1ヶ月くらいですかね。というのも、そのくらいなら今はクラウドもあるから何かあっても在宅でもなんとかカバーできるかなと思います。良し悪しは別として(笑)。逆に半年、1年となると、どうすればいいんだろう? と思いますよね。その意味で陶山さんには大注目しています。
私は育休を取ったパパの話を聞くのが初めてで。私も会社員をやっていたことがあるので、理想と現実の折り合いをつけるのが難しいというのはよくわかります。
育休という制度についてよく知らない人も多いんですよね。その間、給料が出ないんじゃないか? とか、会社が肩代わりしているんじゃないか? と思っていたりして。実際は、育休中は「育児休業給付金」が雇用保険から支給されるので、不安に思ったり後ろめたい気持ちを持つ必要はないんですよね。
育休(※)の言葉だけは飛び交っているけれど、育休についての詳細は意外に知られていないんですね。 私たちも、今回皆さんのお話を聞いて知れたことがたくさんありました。いろいろ調べて、奥様と話し合い、 育休を取る決断をしたというプロセスが本当に大切ですね。
※本記事において「育休」は「育児休業」「育児休暇」両方の略で使用しました。「育児休業給付金」が支給されるのは「育児休業」です。サイボウズの谷口氏は育児のために有給の休暇を取得した「育児休暇」です。
後編に続く
文:荒濱一 撮影:内田明人 編集:渡辺清美
撮影協力: RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジ
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編集
渡辺 清美
PR会社を経てサイボウズには2001年に入社。マーケティング部で広告宣伝、営業部で顧客対応、経営管理部門で、広報IRを担当後、育児休暇を取得。復帰後は、企業広報やブランディング、NPO支援を担当。サイボウズ式では主にワークスタイル関連の記事やイベント企画を担当している。