妻に対して「手伝う」はNGワード? 父親の役割って何?
NPO法人「オトナノセナカ」代表の小竹めぐみさんが主催する、パパによるパパのための学びの時間「パパノセナカ」とサイボウズ式のコラボレーション企画「イクメンのリアル」後編をお届けします。
前編では、育児休暇を取得した経験がある、あるいはこれから取得しようとしているイクメン3人が、なぜ育休を取得したのか、取得してどう感じたか、といったことについて話してくれました。続く後編では、サイボウズのワークスタイルムービーを観たり、パパたちだけで子育てについて語り合ったりすることを通じて、「父親の役割って何?」というテーマについて考えを深めていきます。「イクメンになりたい」と思っているけれども何をどうしていいかわからない」と悩んでいるパパたち、ぜひ一緒に考えてみてください。
「手伝う」に替わるいい言葉はないか?
それでは、インプットタイムに入っていきましょう。これからサイボウズのワークスタイルムービーを上映します。観終わったら、その感想を、2つのキーワードで挙げてください。
では感想を見てみましょうか。まずは陶山さんからお願いします。
僕は「ママを支えられるのはパパだけ」「自分には見えていないことがあるかも…と常に考える」の2つです。
まず「ママを支えられるのはパパだけ」については、子供って、パパとママが同じだけ愛情を注いでも、結局ママのほうがいいんだろうと思うんですよね。
うーん(笑)。
最終的に子供の支えになるのはママ。じゃあパパができることは何か? というと、ママの支えになることではないかと。
あと、やはり自分には見えていない部分があると考えることも大事だと思うんですよね。僕も自分では育児も家事も頑張っているつもりだけど、やっぱり漏れている部分はあるはず。それを前提にしてママに接することが大事かなと考えます。
拍手喝采したくなりますね(笑)。では松本さんは?
僕は「ママにしかできない」と「大丈夫」の2つです。 「ママにしかできない」はですね……。ビデオの最初のほうで、子供の泣き声がしてママがそっちに行くじゃないですか? うちは子供がまだ離乳していないのですが、泣くのはおっぱいのことが多くて。最初のうちは子供が泣くと、僕も行っていたんですが、実際、行っても何もすることが見つけられなくて、なんとなく座っているだけになり。で、だんだん反応が遅くなって、行かなくなってしまうんです(笑)。
リアルですね〜(笑)。
そういう、結局ママにしかできないことって、どうすればいいのかなと。絶対にママにしかできないのかというとそうではないこともあるとは思いますが…。
「大丈夫」についてはですね、こういうママが大変そうなときに、本当に「大丈夫?」という問いかけでいいのかな? と、気になってしまいました。
いいモヤモヤですね。
僕は、1つ目は「『手伝う』ってNGワード?」です。結局、男性は、主体はあくまでママで、自分は「手伝っている」という意識なんですよね。なので「手伝う」という言葉に、ママはピクッとくるんじゃないかと。自分も気をつけないといけないと思いました。
もう1つは「しょうがない」です。これはさっき松本さんが言っていた「ママにしかできない」に通じるんですけど、やっぱり「しょうがない」と思うことって、正直あるんですよね。
僕の場合、妻も同じ会社で働いていて、僕は営業、妻は人事部門で内勤なんです。営業だと、やはり社外のお客様がいるわけじゃないですか? そうなると例えば、子供が熱を出した時に「お迎えに行けない?」と訊かれても、「いや、そこは内勤のほうが融通がきくでしょ?」と思ってしまう。後ろめたさはありますけれども、そのへんは妻に、ある程度割り切ってほしいですよね。
率直でいいですね(笑)。
「手伝う」に替わる、いい言葉って何かないんですかね? 何をしたらいいか疑問を持って訊く、という時点で、もう主体的ではないですよね。
うわー、「何したらいい?」って、普段むっちゃ言ってるなあ(笑)。
パパたちだけで「こどものための井戸端会議」
「手伝う」に替わる言葉、ぜひ皆さん考えてみてください。さて、このあたりで、皆さんの思いをさらに発散していただくアウトプットタイム「男だけの男対話」の時間に入りたいと思います。「男対話」だとちょっといかつい感じなので、私たちは「こどものための井戸端会議」と呼んでいます。井戸端会議的なおしゃべりは、楽しいだけでなく子供のためにもなっているという考えから、こう名付けているんです。
「こどものための井戸端会議」は、勝ち負けを決める議論の場でも、ただ何となく会話する場でもなく、人がそれぞれ抱いている考え方や価値観を知るための場です。今日は「よりよい家族を築くための父親の役割とは?」をテーマに、これから15分、皆さんに自由に話し合っていただきたいと思います。
<「こどものための井戸端会議」開始>
奥さんとの間で、役割分担ってどうしていますか?
娘2人の着替えと、保育園に行くまでの準備は僕がやっていますね。その間に嫁が朝食を作って、先に嫁が家を出て、僕が娘たちを保育園まで送っていく。そこまでで僕の担当は終わりです。その後は、嫁が保育園に迎えに行って、僕がやるのは、帰ってきた時に洗濯物が取り込まれていなかったり、洗い物が残っていたりした時に、「しょうがないなあ」と思いつつやるくらい。なんとなくの役割分担はありますが、絶対こう、と決まっていることはないですね。
作業分担でいうと、僕は家事寄り、嫁は育児寄り、という感じですかね。僕もお訊きしたいんですが、育児の役割分担ってどうしていますか? しつけの面ではどちらかというと父親が厳しい役割を果たすべき、みたいな考え方もあったりするじゃないですか? まだ自分はあまりそういうことを意識していないんですが。
基本、僕は怒る役割ですね。嫁は甘いところがあるんで。「ダメでしょ」とかいうのは僕です。娘2人なんで、なかなか怒りづらいんですけど。
基本、うちは怒ること自体あまりない。本人に身の危険がある時に怒るくらいですね。それも、お父さんどうこうじゃなく、その時近くにいた人が注意するというか。教育に関する役割分担はないですね。これから変わるかもしれませんが。
また質問なんですけど、お二人は、父親としてこうありたいという理想像ってありますか? あるいはそれを目指しているんだけどギャップがあって悩んでいるとか。
理想としては、ママがいなきゃダメ、というふうにはしたくないんです。ごはんにせよお風呂にせよ、「ママじゃなきゃダメ」と言われるとすごく悔しい。
ああ、わかるなあ。僕も絶対ママに負けたくないというのがあって。いざやってみると勝てないとわかるんですが(笑)、それでもママが一番というのを覆してやりたい、とは常に思っていますね。
だから、休日にママが出かけたい時なんかも、「どうぞどうぞ」みたいな。
パパの良さを刷り込むチャンスだ、と(笑)。
へえ〜、二人ともすごいなあ。僕はママに勝ちたいとかは全くないですね。おっぱいがない時点で勝ちようがないと思っているので(笑)。だから逆に、負けている前提から、自分は何をしよう? と考えます。
ここなら負けないっていうポイントはあるんですか?
いや、それもないですね(笑)。陶山さんはあります?
遊びは勝ちやすいポイントかなと思いますね。うちは女の子だけど、まだ体を使って思い切り遊びたい時期なので。そこは自分のテリトリーですね。谷口さんはどうですか?
改めて言われると意外にないですねえ……。ああ、嫌がっている子供をノセて何かをさせるのは、僕のほうが得意かも。保育園に行きたくないと言っているのをなんとか行かせるとか。
ああ、知り合いの男性が、おっぱいがない分、奥さんより自分のほうが寝かしつけがうまい、と言っていました。ないからこそ、じゃあどうやったら寝かせられるか考えるのかも。
さっきのサイボウズの動画にあったママのケアみたいなことは、意識してやっていますか? 僕は申し訳ないくらいやっていなくて。その根底には、何かあったら俺だってできるし、みたいな変なプライドがあるからかもしれません。
僕もたいしたことはやっていませんが、感謝の気持ちを口に出して表すことは意識していますね。休日はそれこそ10回ぐらい「ありがとう」と言っていて、言いすぎて嘘臭くなっているくらい(笑)。
へえ〜っ!
それは、自分もありがとうと言ってほしいからなんですよ。僕にとって、パパとしてやりがいを感じられるのって、子供から一番を獲れた時と、ママから感謝された時の2つしかないんです。ママは大変だから、なかなかパパを気遣う余裕はないかもしれないけど、こちらから「ありがとう」と言うと、向こうも「こちらこそ」と返してくれる。そういう下心があるんです(笑)。
僕も全くやっていないなあ。特に、やろうと意識していてもできていないのは「話を聞く」ことですね。子供が寝た後は、なるべく夫婦で会話の時間を持とうとしているのですが、面白い本を読んでいたりする時に、生協がどうこうみたいなことを話しかけられても、それはどうでもいいだろうとなってしまい(笑)。反省しています。
<「こどものための井戸端会議」終了>
今日出した回答はカーナビの目的地設定みたいなもの
あっという間に15分たちました。それではこれから「答えのようなものシート」という紙を配ります。「答えシート」だと、正解が1つしかないように思われてしまうので、あえてそう呼んでいるんです。この紙に「よりよい家族を築くための父親の役割とは…」に続く言葉として、最もフィットする言葉を書いて、発表していただきます。
では、谷口さんから聞いてみましょうか。
僕は「ワイルドカード」です。パパに求められる役割って、場面場面で変わるのかなと。ママの性格も1人ひとり違うので、これだ、と決めるのは難しい。それより、場面場面によって、こういう役割も果たせる、となることが大切だと感じます。
「ママの“セナカ”を支える」ですね。家族のあり方って、ママがどうありたいかによって大きく変わると思うんです。となるとパパにできることは、家族の中で一番影響力のあるママを支えることなのかなと。ママがどこを向いているかで、やれることややらなくてはいけないことも変わるので、そこを常に見ていなくてはと思いますね。
「自分にできることを探してやる」です。先ほども話に出ましたが、ママにしかできないことはやはりあるんじゃないかなと思います。そんな中でも、「これだったら自分にもできるかもしれない」ということを探し、トライアルアンドエラーを繰り返しながらも、とにかくやってみることが大事なのかなと感じました。
今日皆さんに答えてもらったことは、カーナビの目的地設定みたいなものだと思うんです。大人だって迷う時はありますが、目的地が設定してあれば、何かあったらそこに帰れる。この答えはいつ変えてもいいけれども、常に自分の中の目的地を見つけておくことが大事ですよね。
常に「自分に問い続ける」ことが大事
では最後に、お一人ずつ感想を述べていただきましょう。
すごく楽しかったですね。僕はこれまで、あまり育児に積極的に関わっているパパと会ったことがなかったんです。今日はそういう人と話せて本当によかったです。みんな結構同じことを考えているんだなと励みになりました。
僕もイクメンのパパさんと会うことがあまりないのでいい機会でした。ママに負けたくない、ママがいなくちゃダメという環境にしたくない、と考えているという点で、陶山さんとは似ているなと思いましたね。同志が見つかってよかったです(笑)。
僕は正直、今日はここに来るまで気が重かったんです。自分のことをイクメンなんて思っていないので、そんな僕が何を語ればいんだろうと(笑)。けれども実際お二人といろいろお話させてもらって、通じるところがたくさんあると感じ、来てよかったなと思いました。
私はこういう仕事をもう4年もしているのに、育休を取った男性に出会っていなかったのが本当に驚きで。皆さん期間はどうあれいろいろなことを考えているのがわかって、自分にとってとてもプラスになりました。
先ほどモヤモヤした思いを抱えている、とおっしゃっていた方がいましたが、私はそれがいいと思っています。わかったような気持ちになるのが一番怖いことで、そうならないためには常に自分に問い続けなくてはならない。今日ご家庭に帰ってからも、ぜひご自身に問いかけてみてほしいですね。今日はありがとうございました!
文:荒濱一 撮影:内田明人 編集:渡辺清美
撮影協力: RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジ
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編集
渡辺 清美
PR会社を経てサイボウズには2001年に入社。マーケティング部で広告宣伝、営業部で顧客対応、経営管理部門で、広報IRを担当後、育児休暇を取得。復帰後は、企業広報やブランディング、NPO支援を担当。サイボウズ式では主にワークスタイル関連の記事やイベント企画を担当している。