ブロガーズ・コラム
情報共有ができないチームの人間関係は破綻する
【サイボウズ式編集部より】「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は日野瑛太郎さんによる「情報共有ができないチームのもろさ」について。
チームで働く場合、情報共有はとても重要です。仮に情報共有を一切しないのだとしたら、それは一人で働いていることとほとんど何も変わりません。チームで情報が共有されることではじめて、他人を手伝ったり意見を言ったりすることができるようになります。情報共有はチームワークの基本中の基本だと言ってもよいでしょう。
しかし、そんな基本中の基本であるはずの情報共有が、あまりうまくできていないというチームを結構よく見かけます。人数が少ないうちはある程度うまくまわっていても、チームの人数が増えるにつれて情報共有がいい加減になってしまうということも少なくありません。
僕がまだ会社員をしていたころに一時期所属していたチームがまさにこのパターンで、人数が肥大するにつれて「誰が何をやっているのかよくわからない」という状況が日に日に強くなっていきました。たまにチーム内から「もっと情報共有を!」という声があがりシェア会などがセッティングされるものの、しばらくすると業務の忙しさにかまけて気づくと元の状況に戻ってしまっていました。それでも情報共有を大切にしよう、という問題意識があっただけまだよかったのかもしれません。
コミュニケーションのコストは人が増えることで飛躍的に増大するので、人数が増えることで情報共有がいい加減になっていくのはある意味では自然の成り行きなのかもしれません。情報共有だけやっていても仕事そのものを進めなければ価値を生み出すことはできませんから、情報共有が敬遠されてしまうのも気持ちとしてはわかります。「情報共有がめんどくさい」のはたしかに事実です。
それでも、情報共有は重要で絶対に軽んじるべきものではありません。情報共有ができていないことで被る不利益は、仕事が円滑にまわらなくなることにかぎらず、チーム内の人間関係にまで影響するからです。情報共有をあまりにも軽んじすぎると、いつしかあなたのチームは働きにくいチームに変わってしまうおそれがあります。
情報共有ができないチームの人間関係が荒廃する理由
情報共有が不十分だったせいで、「え、そんな話聞いてませんけど……」と言われてしまったことはないでしょうか。こういう場合には「すいません、言ってませんでしたね」と言って補足をすればそれだけで済むように思えるかもしれませんが、実際にはもっと大きな問題が生じています。
それは、適切に情報を伝えていなかったことで「相手の信頼」を失っているということです。情報共有の第一の目的は仕事を円滑にまわすための素地をつくるという点にありますが、同時に情報をオープンにすることで仲間との信頼関係を構築するという目的もあることを忘れてはいけません。
情報共有が不十分だった理由が単に「伝え忘れていただけ」だとしても、相手がそのように受け取るとは限りません。「自分のいないところで勝手に話が進められている」「情報が意図的に隠されている」といったように感じられてしまい、そのせいで信頼が損なわれていくことだってありえます。
「情報をメンバーが十分に教えてくれない」と一度感じてしまうと、チーム内の仕事を自分事としてとらえることが困難になっていきます。「相手が教えてくれないなら自分も別に教えなくていいや」と真剣に情報を共有する気持ちがなくなり、仕事もどんどんいい加減になっていきます。チームに貢献しようという気持ちが根こそぎ奪われてしまうのです。
情報共有を軽視し続けたチームは、最終的にはメンバーのモチベーション低下と相互不信によって崩壊します。いくら日々の仕事自体がうまくいっていたとしても、そういう環境で働くのはつらいものがあります。仕事のおまけのように扱われることが少なくない情報共有ですが、チームワークを維持するために必要不可欠な営みであることを意識しなければいけません。
まずは「情報を共有する文化をつくる」ことが最優先
そうは言っても、情報共有は意識して行わないとすぐおざなりになり、気づくと「誰が何をやっているのかよくわからない」「必要な情報すらついうっかり伝え忘れてしまう」という状況に陥ります。チーム内で情報共有を効果的かつ継続的に続けていくには、何が必要なのでしょうか。
ここで「情報共有のための定例でシェア会をやろう」「社内wikiを使おう」「メールを書くときはチームのメーリスをCCにいれよう」と具体的な話をしてもあまり意味はないと思っています。これらはあくまで情報共有のためのツールにすぎません。どんなに優れたツールを使ったとしても、それを使う人達に「情報を共有しよう」という意志がなければ意味のあるものにはなりません。定例のシェア会をやったところで本人たちにその気がなければSNSをいじったり眠ったりするだけで終わりますし、社内wikiも過疎化することは目に見えています。それよりも大事なのは、情報を共有する文化をチーム内に根付かせることです。
そういう意味では、ツールよりも「メンバーが情報を共有すると得する仕組み」を用意するのが一番いいと言えるかもしれません。これは一案ですが、たとえば社内wikiを使うなら投稿数の多い人を可視化して誇らしい気持ちになってもらうとか、情報をシェアしてくれた人には必ず誰かがフィードバックを返すようにして「シェアしたけど誰も反応してくれないからもういいや……」という気持ちにならないようなルールをつくるなど、工夫は色々できると思います。
こういった「情報共有を促進する仕組み」についてどのようなものが考えられるか、一度チームで話し合ってみるのもよいかもしれません。その際には、情報共有をしない人を罰する減点法的なものではなく、情報共有をした人を優遇する加点法的な仕組みにすることが大事です。罰則で縛っても、チームはギスギスするだけだからです。
共有手段は目的に応じて柔軟に
情報共有についてもうひとつ大事なことは、共有手段を無理に固定化しないことです。もちろん、各自が勝手に自分の好きなグループウェアを使い出したりすると収拾がつかなくなりますから、ある程度のガイドラインは必要です。それでも「情報は細大漏らさず、すべてwikiだけにまとめる」(書くのが大変な内容はそもそもシェアがされなくなります)「メールはすべてCCにいれる」(重要なメールが埋もれてしまいます)といった極端な運用は現実的ではありません。
思うに、シェアする情報の内容に応じて適切な共有手段は変化します。チームメンバーにぜひ知ってほしい最新技術を共有したいというのであれば、簡単なシェア会などを適宜招集して口頭で説明するのがよいでしょう。一方で、日常的に繰り返し参照されるような情報は簡潔にwikiなどにまとめていつでも見られるようにするのが望ましいと言えます。クライアントとのやりとりをシェアするのであればCCやBCCを使うのが一番自然です。目的に応じて、もっともコスパのいい方法を選んでいけばよいのです。
適切な情報共有が行われる文化をチーム内につくり、気持よく働ける環境をつくっていきましょう。
イラスト:マツナガエイコ
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執筆
撮影・イラスト
松永 映子
イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。