ボロ負けからの日本No.1奪取、PVは10倍に――東洋経済オンラインの躍進を支えたのは「マネジメントしないチーム」?
特集「ベストチーム・メソッド」では、絆や協調性といった精神的なつながりではない「新しいチームワークの在り方」を、さまざまなチームの取り組みから考えてみます。今回取り上げるチームは、東洋経済オンライン編集部。競合にボロ負けだったWebメディアをリニューアルし、月間PVは10倍の5300万ページビュー(PV)に。わずか4カ月でビジネス系WebメディアナンバーワンのPVを獲得しました。「編集会議はしない」「すぐにPDCA、マネジメントはいらない」――など、若き編集長 佐々木紀彦さん率いる「マネジメントしないチーム」が成功した理由に迫ります。
東洋経済オンライン 編集部チームの「日本一のWebメディアを作る」という目的達成までの道のりは、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー Webコンテンツ「前編」「後編」をご参照ください。
東洋経済オンラインのビジョン
「ビジネス誌系Webメディアにおいて、ページビューで日本一になる」(佐々木さん)
「社内のデータを生かし、外部の著者と内部の120人の記者がどんどん書いてくれれば、競合に負けるわけがないと思っていた」(佐々木さん)
当初、Webメディア「東洋経済オンライン」は、競合メディアに”ボロ負け”状態でした。経営陣がWebの全面リニューアルを決め、その舵取りに現編集長の佐々木紀彦さんが手を挙げました。「社内リソースをフル活用すれば、必ず日本一になれる」という確信から、大胆なビジョンを掲げ、メディア改革に取り組んでいきました。
リーダーシップ
「佐々木さんは何事にも真っ先に爆速で突っ込んでいくモンスターエンジン」(編集部 伊藤崇浩さん)
「下の人間は『俺も続くぞ』という気になるし、上の人もフォローしたいと思う」(伊藤さん)
東洋経済オンラインの編集部メンバー 伊藤崇浩さんによると、佐々木編集長は上記のように映ります。決裁権がない場合もまずは「決める」ことを優先し、その後担当部署と相談をしながら、新しいメディアを作っていきました。「FCバルセロナのサッカーのように、常に攻め続ける。攻撃が最大の防御」というのが佐々木さんのリーダーシップの根本にある考え方です。
モンスターエンジンの暴走でチームがばらけないよう、伊藤さんはチーム全体に目を配るムードメーカーの役割を引き受けます。編集長が発揮するリーダーシップに対して、編集部員は個々でフォロワーシップを発揮する。お互いを高め合えるチームが自然とできあがったようです。
チームの作り方
「最年少でも上司の指示を待たずに業務を進められる"徹底的にフラット"な体制」(佐々木さん)
「フラットな組織はメディアでは珍しく、Web企業と似ているかもしれない。上下関係がないし、思ったことは何でも言っていい。オープンで口が軽すぎると思うぐらい」(佐々木さん)
編集部は20~30代を中心に、編集メンバー、広告部の若手エースなど、各部署から7人が集まった部門横断型で構成されています。編集部が目指すのは「徹底的にフラットなチーム」。まずは無駄な会議をなくし、雑談で編集部員のコミュニケーションを増やすことに努めました。
企画やアイデアをどんどん出し合い、それをメンバー同士が認めながら、指示待ちをせずに業務を進めるチームができあがったそうです。このスピード感にマッチした編集部員 伊藤さんは、最年少ながらいくつものヒット特集企画を生み出しました。
プロジェクトの進め方
「紙の場合は5割の完成度で出てきたものを何度も直して9割ぐらいに高めるが、Webは6~7割ぐらいのものを出し、あとは読者の判断に任せる。結果はページビューという形でその日のうちに出るのだから、とにかく回したほうがいい。スピードと効率化が大事だ」(佐々木さん)
「マネジメントはチェックする役割ではなく、この人にはこれが合うんじゃないかと提案する役割なのかも」(佐々木さん)
自由な裁量を信じて、メンバー全員に任せられるのは、結果がページビューですぐに反映されるからです。結果を見ながら、その場で形にした仕事の自己反省をし、各メンバーがPDCAを回しています。これにより、「マネジメント」をしなくてもチームが回るようになっていきました。
「びっくりさせたいがモチベーション」と伊藤さんは話します。みんなが驚く企画を出したいという思いが生まれ、メンバーごとにリーダーシップを発揮して自ら仕事を作っていくように自然となりました。佐々木編集長も率先して企画を出し続けるなど、スピード重視でメディア運営を進められる体制になりました。
最後に
東洋経済オンラインの躍進を支えたのは、「日本一になる」という強い思いと佐々木さんのリーダーシップです。物事を停滞させずにとにかく「決め」、その後は綿密なコミュニケーションで周囲を巻き込んでいきます。その姿勢が編集部員のやる気に火を付け、マネジメントをしなくても編集部が回るようになりました。月間500万~700万程度だったPVは、リニューアル後の2013年3月に5300万となり、「PVで日本一」という目標も達成できました。
東洋経済オンライン編集部の取り組みは、若手主体のチームだからと恐れることなく、これまでの常識や慣習を大胆に変え、新しい価値を作っていくことの大切さを教えてくれます。
「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」では、東洋経済オンライン編集部の取り組みを取材しました。前編『「マネジメントしない」チームで勝ち取った日本一』、後編『「FCバルセロナのように攻め続け、爆速で突っ込む」「メディア界の人材輩出企業に」』もお楽しみください。
(写真撮影:橋本 直己)
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