フューチャーセッションの効果とは? 社会を変えるチームを生む3つのポイント
ある電鉄会社の会議室──。そこには、数年後の大きな開発プロジェクトの企画を担う若手が集められていました。
みんな、大きなプロジェクトに対する期待と、自分たちに課せられた大きな重圧の両方を感じて、やや硬い面もちです。私はインスピレーションを与えるための講演を依頼され、短い時間で、あるセッションを実施していました
最初の15分は、3人組になっての対話セッションです。
テーマは、「このプロジェクトが関与できそうな社会課題は?」と。ちょっと難しいテーマです。みんな最初はおそるおそる「高齢者のケア」「女性の活躍」と身近な課題を挙げ始めました。
各グループの対話のテンションは上がり始め、「格差の解消」「地方の産業支援」など、明らかに自分たちの開発プロジェクトだけでは達成できない、大きな社会課題が挙げってきました。雰囲気は上々です。
話し合いで出たすべての「このプロジェクトが関与できそうな社会課題」をホワイトボードに張り出しました。
一覧すると、まさに「日本の社会課題のすべてがこのプロジェクトにつながっている」と実感できるものばかり。この時点で、メンバーの間に勇気と自信が湧いてきているのが伝わってきました。
普通の会議とはひと味違う会議
次は1人1枚「あなた自身は、この地域の未来に何を起こしたいか?」という問いでアイデアを書いてもらいました。
会社のプロジェクトについて考える場で、いきなり「自分自身の夢」を問われたわけですが、不思議とみんなスラスラと書き始めました。
A4の紙に大きな文字で書いた「自分自身のアイデア」を掲げながら部屋中を歩き回り、仲間を自分で見つけてもらいました。ここで部屋の中の盛り上がりは最高潮に達しました。
通常、ワークショップの目的は、「企業の課題」に対して「最善の解決策」を考えさせられることが多いです。しかしこのセッションでは、まず「自分ごとの未来」から対話を始めました。それが「共感する仲間」を集め、一緒に「未来を創って行こう」というパワーを生み出して行くのです。
大切なのは「正しい答え」を探すことではなく、「みんなでやりたいこと」を描くプロセスです。 このセッションの形式を「フューチャーセッション」と呼びます。
単なる目の前の仕事の課題解決のための会議より、フューチャーセッションは楽しいんです。この日も、会場はずっと笑顔と笑い声にあふれていました。
この日は、自分ごとのテーマから4つの「社会を変えるチーム」が生まれました。通常の企業の中の「アサインされたチーム」とは異なり、「自ら共感する仲間とつくったチーム」です。
こうして生まれたチームは、楽しく、強く、そして自発的です。誰かに何かを言われなくても一緒に集まろうぜ、となります。自ら共感する人が集まったチームには、さらに共感する仲間が自発的に加わってきます。そして、「社会を変えるチーム」に成長していきます。
社会を変えるアクションが、このチームから次々と生まれるのです。
「社会を変えるチーム」を生み出す3つのポイント
「社会を変えるチーム」ってどんなチームだと思いますか?
私はそのチームが社会を変えるのではなく、次々と社会を変えるアクションをとる人が集い、行動を起こして行くための後押しをしてくれるチームだと思っています。
社会を変えるチームの意味は、そのチーム自体がアクションをとること以上に、そのチームの存在が問題の気づきにつながり、アクションする人が増えることです。社会を変えるチームは、その存在自体に価値があるのです。
そんなチームは、次の3つのポイントを満たしていると思います。これらのポイントは、フューチャーセッションで「社会を変えるムーブメント」を起こして行くプロセスとまったく同じです。
ポイント1:
旗を立てる人の「大切な想い」が、人々の思考の枠組みを変えるパワーを持っている
最初に立てる旗には、誰か個人の強い想いがこもっている必要があります。その想いが、多くの人に共感されると同時に、フレッシュな視点を与えてくれるものであれば、効果的なフューチャーセッションを開催できます。
「社会を変えるチーム」でも一緒です。想いに共感すれば「いいね!」を押すでしょうし、そこにフレッシュな視点があれば、さらにその考えを「誰かに伝えたくなる」はずです。こうして、社会を変えるムーブメントはスタートするのです。
ポイント2:
チームの「コアメンバー」が、参加してほしい人たちを代表する多様性を持っている
フューチャーセッションに多様な人を招き入れるときもそうですが、多様性のある参加者にアプローチする最善の手段は、参加してほしい人の仲間がコアメンバーの一員であることです。
そのために、最初から多様性あるメンバーを揃えることが、大きな広がりを生み出す秘訣です。自分と違うバックグラウンドを持つ人と共感したなら、ぜひともその人と一緒にチームを立ち上げましょう。
ポイント3:
チームの集まる「場」が、つねに新しい参加者にとって心地よいオープンな運営になっている
チームの仲間意識が高まると、どうしても場が内輪向けになってきます。そうなると、新たに参加する人にとっては居心地が悪くなってしまいます。
社会的ムーブメントを起こすためには、場を常に開いておくことが大切です。多様性を受け入れ、新たなメンバーが参加し、活躍できるようにしておきましょう。そうすれば、新たに参加した人がその人のコミュニティをつなぎ、どんどん仲間が広がっていきます。
拡大し続けることを恐れてはいけません。どんどん開いて、広げて、そして新たに加わったメンバーに合わせて、自分自身も変わっていきましょう。だって、自分の視野をもっと広げれば、昔の自分の視野の狭さに気づくはずですから。
社会を変えていくということは、自分自身を変えていくことでもあるのです。
まずは身近な会議を、フューチャーセッション化してみませんか? あなたの目の前の仕事が、社会を変えるチームへ変貌するかもしれません。
「社会を変えるチームを創造 フューチャーセッション」
「自分の"好き"を広げたい」「社会を変えたい」「日本を良くしたい」──。こうした想いを持つリーダーのためのセッションが始まります。ワークショップを通じて行動を起こすチームを結成していくノウハウを学びます。「社会を変えるチーム」を実践したい方のご参加をお待ちしております。
photo credit: Lars Plougmann,gwen via photopin cc
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