ママ友接待の無茶ぶり? 親の反応は?──「男は仕事、女は家庭」を覆す主夫の本音
「男は仕事、女は家庭」という価値観が強かった時代、家事や育児は主に女性=「主婦」が担ってきました。しかし近年、こういった性別役割分担意識は薄れ、家事や育児を主に夫が担う「主夫」家庭も増えつつあります。
現在日本に存在する「専業主夫」は、なんと11万人。この15年で3倍近くに増加しました。(※)
そんな状況のいま、NPO法人ファザーリング・ジャパンに 所属する主夫7名が、「秘密結社・主夫の友」を結成! サイボウズで開催した「入社説明会」トークライブでは「どうして主夫に?」「親や周囲の反応は?」等々、世間一般が抱く「?」に本音で答えました。
※「平成25年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金加入者の第三号被保険者は男性が11万人、女性が934万人。平成10年度の同調査では、男性が4万人、女性が1,178万人だった。
きっかけは病気、介護、収入差、時間の自由度、離婚!?
みなさんこんにちは、「秘密結社・主夫の友」“顧問”の白河桃子です。ふだんは若い女性たちに「“専業主婦になりたい”なんて甘い!」などとリスクを説いていますので、今日はみなさん「怒られるんじゃないか?」と怯えているようですけれど大丈夫、こわくありませんよ~!(笑顔で手を振る)
白河さんといっしょに本日司会をさせてもらいます、「秘密結社・主夫の友」CEOの堀込タイゾーです、よろしくお願いします。
ではさっそくですが、みなさん自己紹介がてら「この道」に入った経緯を教えてください。
中村です。この道に入った経緯は、圧倒的な収入差ですね。
最初は妻も若干家事をやっていたんですが、だんだん僕の比率があがってきて、今がマックス、そして死ぬまでマックス!です。(会場笑)
新潟から来ました、片元です。わたしが体調を崩してしまったのがきっかけで、この道に入りました。
吉田と申します。大学院のときに結婚して僕のほうが時間があったので、自然と家事の分担が多くなり、そこから徐々に増えていったという経緯です(笑)
“しゅうちゃん”こと佐久間です。18年前、結婚して半年のときに難病が発覚して働けなくなり、妻から「わたしが働くから、家で家事のほうをやってくれ」というオトコギのある発言がありまして、そのまま主夫になりました。
村上です。私は同居していた実母が倒れて要介護になったのがきっかけです。当時僕はフリーランスで、妻は企業勤めだったので、母の扶養を妻側に入れてもらったほうがコスト的によかったのと、僕も実親の介護をしたかったので、ワークダウンして主夫になりました。
杉山ジョージです。経緯はいろいろとあるんですけど、かいつまんで短ーく言うと、「離婚がしたかったから」です。(会場笑)
娘の親権を取るためには「家事もちゃんとできるんだぞ!」って言えないといけないので、主夫になりました。でも結局離婚はしていません。
すごい理由ですね(笑)。その辺りは杉山さんの著書に詳しく書いてありますので、ぜひ。
みなさん、本当にいろんな経緯で主夫になっているんですね~。私自身は子どもがいないので育児はしていないのですが、いま、日本の共働き子育て世帯をめちゃめちゃ応援しています。こういうパターン(主夫)は、すごく現実に即している、と思いますね。
稼ぎ頭は交代もアリ
ではまず、最初の質問です。「1・妻の扶養に入っていますか」「2・世帯主は妻と夫のどちらですか」「3・戸籍上の苗字はどちらを選びましたか」。この3つをフリップに書いてもらえますかね。
どこかの時点で稼ぎ手が交代する可能性もありますよね。
その可能性は、誰しもがあるんじゃないですか? われわれもいまは妻がメインで稼いでますけど、妻が病気や交通事故で働けなくなっちゃうことはあるかもしれない。
うちはいまちょうど、その話が出ていますよ。妻がバリバリ働きすぎて体調を崩してワークダウンしているので、妻から日々「あなた稼ぎなさい!」というプレッシャーを受けていてですね……。
えっ、キックオフで村上さん脱退宣言ですか!?(会場笑)
いや、もともとフリーランスの仕事なので、僕が家事をやるのは変わらないから脱退はしないけどね。でも、稼ぎ頭は変わるかも。
“主夫”と名乗ると「奥さんが稼ぎ頭なのね」って必ず言われるんですけど、うちはそうじゃなくて、家のぶんは僕の収入でまわしています。
14年前に嫁さんが学生のときに結婚して、そのときの役まわりがずっと続いているので、いま彼女がいくら給料もらっているか僕は知らないんですよ。たぶんそんなに僕と差はないんですけれど、こっちが担っちゃっている。
妻の小遣いは?
昔の日本の“主婦”みたいに、家計を全部預かって、そこから働く人におこづかいをあげるっていう形の人はいませんか?(2人が手を挙げる)
奥さんのお小遣い、いくらですか?
金額ではなくて、「入ってきたものの1割」という決まりです。以前妻はフリーランスで収入に波があったので、多いと「月に10万!」なんてときもありましたね。いまは会社員になりましたけど、やっぱり月収の1割です。
うちも同じです。妻が会社員で、給料もボーナスも1割が小遣い。僕が働いていたときも僕の小遣いは1割でした。
共働きだと夫婦それぞれ別財布で、お互いに収入を知らないという人も多いんですよね。
「世帯主が妻」「戸籍上の苗字が妻」というのは、吉田さんだけかな。奥さんが世帯主になるとき、心の葛藤みたいなものはなかったですか?
ぜんぜんないです。(一同どよめく)
名前(戸籍)のときはちょっと、ありましたけど。でも社会生活は旧姓でやっているので、ふだんは意識しません。子どもの名前も、妻のほうです。
実親・義親はこんな目で見ている
では次に「実親・義理の親から言われたこんな一言」は、何かありますか?
杉山さんの「あなたは女運がないから」って、強烈ですね(笑)。
これは自分の母親から言われます。運の話なのかい、という(苦笑)。
もともと僕は男3人兄弟の一番下で、家の手伝いをすべて任されるような立ち位置だったので「結局あなたは結婚してもそういうポジションになるよね」と思っているみたい。それにしても「バランスがちょっと悪くないかい?」とは感じてるらしい。
しゅうちゃんは「うちの娘は狂った」と言われた?
僕は結婚してわりとすぐ専業主夫になったんですけど、そこから10年くらい、妻の実家の敷居が“富士山”くらい高かったんですよ。
妻のお母さんは近所の人に「うちの娘はトチ狂ったから、そのうち帰ってくる」と言っていたそうで、それを近所の人から聞いたときはショックで、「もう立ち直れない~」と思った(苦笑)。
当時、何度か妻の実家に顔を出しましたけど、家の中がこわいんですよ。お義父さんもお義母さんも、義姉さんも、ものすごい形相でこっちを見るので、3分としてそこにいられない。
きびしい~!(苦笑)
それが、10年くらい経ったときに変わったの。知り合いから「夫婦を10年もやってたら、ちゃんとしてるってことでしょ。認めなさい」と言われて、納得したらしく。
あるとき家に行ったら、急に雰囲気が違うんです。そのとき作ってもらった料理が美味しかったので、「お義母さん、これどうやって作るんですか?」って聞いたら、「こうこう、こうやって作るんだよ」って教えてくれたのね。
それからだんだん、お義母さんと料理のレシピの話をするようになったんです。そのうち「うちの婿に料理を教えることになるとは思わなかった」って、うれしそうに言ってくれた。
10年かかって“雪解け”か、いい話ね。
中村さんの「おめぇよー」というのは?
義理の父からよく言われるんです。名前で呼ばれたことがたぶん一回もない。もしかしたら僕の名前を知らないですね。(会場笑)
妻からの無茶振りあるある
「これまでに困った、妻からの無茶振り」は何かありますか?
しゅうちゃんの「生むだけ生むから育ててくれ」というのは?
最初、妻は「生むのもいやだ」と言っていたんです。妊娠自体がめんどくさいと。でも僕は妊娠できないから、お願いし続けるしかないですよね。それで、やっと言った台詞がこれ、「生むだけ生むから育ててくれ」というね。この言葉が出るまで2年間かかりました。
うちは「ママ友接待」の無茶振りが、よくあります。急に電話がかかってきて「いまからママ友、5、6人が子ども連れで来るから!」とか。
あります、あります!(笑)
突然部下を連れて帰ってくる昭和のお父さんみたい(笑)。でも村上さんはそれで即、すごい料理をこしらえて対応しちゃうんですよね。
みなさん、お料理は得意なんですか?
いちおう調理師の免許はもってるので。僕も5人くらいはいつ家に来ても大丈夫ですね。
料理はやります。夕飯は必ず、ご飯と味噌汁、プラス5品。ただし3品は買ってきます。(一同笑)
でもすごいですよ! 5品あったら皿洗う量も大変じゃないですか?
それ、妻からすっごい文句言われます。娘が小食で大皿だと食わないから、小皿にいろいろ乗せて出すんですけど、嫁さんが「あの人、皿いっぱい使うから洗うの大変」って愚痴を言っている。(一同、笑い&頷き)
じゃ、7品乗せられる「主夫プレート」つくりましょうよ! 食洗機にも入るやつね(笑)。
すごいねー、女同士の会話のようだ。(一同笑)
それにしてもみなさん、すごくゆるっとしてて、楽しそうですね。私はよく働くママや再就職したいママのイベントに呼ばれるんですけど、そっちはみんなもっとピリピリしてるの。
みんな、家に帰ったらピリピリみたいですよ!(一同笑)
次回に続く
文:大塚玲子 撮影:内田明人 編集:渡辺清美
SNSシェア
執筆
大塚 玲子
いろんな形の家族や、PTAなど学校周りを主なテーマとして活動。 著書は『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)。ほか。