あのチームのコラボ術
はてなのチームビルディング術。京都と東京、500キロ離れた拠点を一致団結
「あのチームは、どんなツールを使って、どんな風に仕事をしているんだろう?」を探る本コーナー。今回は、最近気になっている“あの”会社の“あの”チームにお話を伺います!今回は、株式会社はてなです。Q&Aサービス「人力検索はてな」やブログサービス「はてなダイアリー」など、ユーザーに愛されるサービスを世の中に送り出してきたウェブサービス企業。
はてなのサービスを使ったことがないと言う方も「はてブ」という言葉を聞いたことはあるのでは? これは「はてなブックマーク」というサービスのこと。ウェブ上のニュースやブログ記事をお気に入りし、管理しておくことができます。
今回は「はてブ」されたウェブ上の話題を紹介するニュースサイト「はてなブックマークニュース」の立ち上げに携わり、プロモーション企画でも大活躍する山田聖裕さん、営業部マネージャーの高野政法さんにはてなのコラボ術を聞きました。東京と京都で2つの拠点を持つはてなが、どのようにチームワークを育んでいるのか?
「はてブの価値を伝えたい」それが、はてなブックマークニュース
大槻
はてなは2001年に京都でスタートし、2004年に東京にも進出、その後2008年に本社を再び京都に移転し、京都と東京の2拠点体制になりました。京都と東京ではどのように役割を分担しているのでしょう?
基本的に京都はサービス開発拠点、東京は営業とマーケティングの拠点というすみ分けです。
大槻
東京オフィスは何名ぐらいいらっしゃるんですか?
アルバイト含めて23名ですね。そのうち、兼務も含めて7名が営業を担当しています。昨年、山田が京都から異動してきましたが、その頃の東京オフィスは社員とアルバイト含めて3名ぐらいでした。
大槻
京都から東京への進出は営業やマーケティング・広報活動の拡大に向けた足がかりという意味合いが大きいですか?
そうですね。はてなのサービスの中で、広告主企業様のプロモーション企画を展開するのですが、そのお声がけや窓口といった役割を担っています。
サイボウズさんとの取り組みをきっかけに、おかげさまで引き合いも増えています。
大槻
そうなんですか?だいぶ好き勝手やらせて頂きました。「レッドブル大喜利」という新しいスタイルが生まれて良かったです(笑)。
※サイボウズが好き勝手やらせて頂いた企画がこちら。
・はてなチーフエンジニアが聞く、サイボウズLiveのアジャイルな開発現場
・電子メールを使わない仕事術――サイボウズLiveが目指す新しいコミュニケーション
・「クラウド基盤から作りました」――はてなチーフエンジニアとid:TAKESAKOが聞く「cybozu.com」
大槻
はてなブックマークニュースが立ち上がったきっかけは?
はてなブックマークのトップページについて、リンクとテキストだけで何がなんだか分からないというご指摘を頂くことが多かったんです。「○○users」と書かれていても、初めて見る方には意味が分からないですよね・・・。
大槻
言われてみれば・・・確かにそうですね。
はてなブックマークで話題になったネタを紹介したニュース記事がヤフトピ(Yahoo!トピックス)に載ることも多く、「はてなブックマークの価値をもっとたくさんの人に伝えたい」と思っていました。それがきっかけです。
大槻
そして、生み出された新しい媒体を収益に結びつけるため、企業プロモーションでの利用提案を始めたんですね。
そうです。ご出稿頂いた企業の第一号は、ジャストシステムさんの情報整理・活用ソフト xfy Plannerでした。その後、さくらインターネットさん、田中貴金属工業さんと続きました。そして、話題になったライフネット生命 出口社長出演による企画。全部で7本出した記事のうち、出口社長には4本の記事に出演していただきました。
「広告なのにおもしろい」という感想をたくさんいただくことが増えました。すると、企業のマーケティング担当の見る目も「はてなブックマークで話題になると嬉しい」という風に徐々に風向きが変わってきました。
大槻
ウェブ上で話題になる企画を考え出すのは大変ではないですか?
はてなブックマークのトップページや人気エントリーを見ていると、ネットで話題になっていることがだいたい掴めるので、ある程度の企画フレームワークが社内にあります。一方で「広告っぽさ」を消しつつ、ユーザーに受け入れられて話題になる企画にするという部分で頭を悩ませることも多いです。はてなのサービス全体として、ユーザーにも広告主様にも信頼される媒体としてしっかり育てたいので、線引きを決めながら運用しています。
話題となったライフネット生命上場記念キャンペーンの舞台裏
大槻
はてなの企画力が世にさらに知れ渡ったのは、ライフネット生命の上場記念で展開された「ライフネット生命×Webクリエイター」でしたね。
私たちの企画は「はてなセリフ」という画像中のあらかじめ決められた特定の場所(ふきだし等)に表示したい文字を入力すると、その文字が埋め込まれた画像を生成することができる「セリフジェネレータ」を使った企画でした。
大槻
出口社長のスギちゃんスタイルが話題になりましたね。
ただ、サイボウズ式の記事でも紹介されていましたが、あのプロジェクトはものすごいスケジュールで進んでいったんです。。
大槻
キャンペーン開始までほとんど時間がなかったとか・・・
まず、3/16に「4/16キャンペーンサイト公開」というスケジュールを連絡頂きました。当初、開発拠点である京都のエンジニアにはてなセリフを提案したところ、開発するのに充分な時間がないと一度はねられたんです。でも再度検討した結果、「これが一番盛り上がるよね」ということで社内が一致し、これまでにないスピードで間に合わせてもらいました。制作からは実質3週間ほどで公開したことになります。
大槻
すごい!
その後、画像の元ネタとして使おうと思っていたキャラクターについて出版社からNGを出されたり、開発と並行して出口社長の撮影を行わなければならなかった・・・とても大変でした。
でもおかげさまで、たくさんの投稿数をいただくことができました。
距離を越えてチームワークを育む秘訣は「リアル」×「グループウェア」
大槻
開発拠点と営業拠点が、京都と東京で離れていると、ライフネット生命のときのような突貫プロジェクトは苦労するのではないですか?
それが、弊社は元から京都と東京、遠隔でやることに慣れているので、地理的に離れていることによる苦労というのはあまりないんです。2004年から「はてなグループ」というグループウェアを使っていたので、プロジェクトの過程でドキュメントを残すという文化も浸透していますから。
大槻
普段から密にコミュニケーションを取っていないと、スケジュールが厳しい状況で京都のエンジニアの方にOKを出してもらいにくい、とかありそうですが・・?
弊社は2つに拠点が分かれているからこそ、社内のコミュニケーションを大事にする文化があるんです。例えば、スタッフによる手作りランチを振る舞う「まかない」、隔週金曜日の夜に京都オフィスと東京オフィスをポリコムでつないで、お酒を飲みながら業務の報告を行う「TGIF(Thank God, It's Friday.の略)」など。毎朝、10分程度の朝会もテレビ会議システムのポリコムでつないでやりますね。また、京都メンバーが出張で東京に来るときには積極的に飲みに行くようにもしています。
大槻
リアルでのコミュニケーションも頻繁に行われているんですね。
そうですね。開発チームと営業チームでは、それぞれ目指すものが違うんです。開発チームはユーザーの方を向いているし、営業チームは広告主企業の方を向いている。なので、はてなグループに残している文章だけでは伝わりにくい部分も伝えたいと思うんです。いまのように営業案件が増えてきて、京都の開発チームと顔を突き合わせる機会が増えました。
特にリリース直前なんかは、やっぱり生で話を増やすということが大事だと思います。でも普段は、はてなグループやSkype、IRCなどのオンラインツールでやり取りやタスク管理をしています。ドキュメント化やプロジェクト管理には、はてなグループの中のキーワード機能(Wikiのような共同でドキュメントを制作する機能)をみんなで運用することが多いです。
営業チームでも社内のやり取りには、はてなグループを使っています。新規に訪問する際は、過去の営業履歴を確認してコミュニケーショントラブルを防ぎます。その他、営業マニュアルや議事録を管理しています。私自身、はてなに来るまではEメールで仕事をする文化だったので、ここまで本格的にグループウェアを活用するのは初めてでした。はてなではすっかりEメールを使わないワークスタイルになりました。
大槻
実は以前、山田さんが「東京と京都の2拠点体制だけど、それぞれがんばるべきなのかな」とつぶやかれているのを見てしまったのですが・・・?
ああ、あれは社内の発表会の後に、Facebookに投稿したやつですね。東京オフィスにまだスタッフが少なかった頃は、京都と比べてなかなか一体感というものを感じられなかったんです。でも最近では東京もスタッフが増え、チームとして成果を出すようになって一体感が出てきました。それが嬉しくてあんなことを書いたんだと思います。京都と東京と距離は離れていますが、それぞれやるべきことをやって、全社一丸となってがんばっていきたいです。
大槻
そうだったんですね(笑)
東京オフィスは、10月下旬に表参道に移転し、オフィス面積を2倍に増床します。さらに、新オフィスに「東京開発センター」を開設して、エンジニア・デザイナーの採用を強化し、さらに協力体制を築き、事業をさらに拡大していく時期に差し掛かります。ビジネスの骨格を作り、京都を支える東京になりたいですね。
大槻
京都と東京で離れているのは確かですが、それを感じさせないチームワークですね。
こうやって東京でビジネスを拡大していくことで京都の開発チームに良い影響を与えて、ユーザーに喜ばれる広告商品やサービスを開発していけたらと思いますね。
(写真撮影:橋本 直己)
SNSシェア