tech
お洗濯の宿敵、血液汚れを落とす──コデラ総研 家庭部(67)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第67回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「お洗濯の宿敵、血液汚れを落とす」。
文・写真:小寺 信良
子供の洗濯物は、予想外の事態がたびたび起こる。ポケットにティッシュが入ったままで洗濯機に入れてしまう、いわゆる「ティッシュ爆弾」攻撃を何度受けたか知れない。チョコを与えれば、手についた汚れを洋服で拭いてしまい、お腹の両脇だけが黒ずんだシャツが大量生産される。
そんなこんなを乗り越えて何とかきれいに洗い上げるのだが、なかなか苦戦するのが血液の汚れだ。うちの娘は鼻の中に弱い部分があるらしく、小学生3年〜5年のころは何でもないときに急に鼻血を出すことが多かった。早く気づけばいいのだが、服にこぼれるまで本人も気がつかないときもある。
ここ2年ぐらいはそういうこともなくなったが、今度は生理が始まって、鼻血とは比べものにならないレベルの血液汚れと戦うことになった。生理も本人が処置に慣れてくれば汚れもさほどではなくなるのだろうが、まだ新人なので失敗も多い。先日は習い事の空手の練習中に生理になってしまい、道着の下を真っ赤にして帰ってきたことがある。本人も恥ずかしかっただろう。
血液汚れを落とすのは、時間との勝負だ。黒く固まるまで放置しては、取れるものも取れなくなる。まだ水に溶けるうちに、流水でできるだけ落としてしまう。それだけでは当然シミのような変色までは落ちないので、洗剤を使うことになる。
実は筆者も先日まで知らなかったのだが、血液汚れの強い味方として、「セスキ炭酸ソーダ」をご紹介したい。これ、知ってる人は当たり前に知ってるのだが、知らない人は名前すら聞いたことがないという、非常に知名度にムラのある商品である。
セスキとは一見メーカー名に見えるが、実は「Sesqui」、ラテン語の「3/2」(2分の3)という意味だそうである。セスキ炭酸ソーダには、炭酸ソーダと重炭酸ソーダ(重曹)が半分ずつ含まれる。炭酸ソーダ(sodium carbonate)を「1」、重炭酸ソーダ(sodium bi-carbonate)を「2」とすれば、それが半分ずつなので「1/2+2/2=3/2」ということらしい。
似たような成分なので、ドラッグストアでは洗濯用の重曹の隣に置いてあることが多い。500gで200円〜300円ぐらいのものだ。
重曹とセスキ炭酸ソーダは、似たようなものであるが、性質がかなり異なる。セスキ炭酸ソーダのポイントは、非常に水に溶けやすいというところだ。また油汚れに強いので、洗濯にも向いている。
セスキ炭酸ソーダの使い方
さて血液汚れの落とし方だが、できる限り流水で血液を洗い流したら、洗面器などに水を張って汚れ部分を浸け、そこにセスキ炭酸ソーダを入れる。分量としては、水1リットル当たり小さじ1杯〜2杯程度だ。洗面器なら2リットルぐらいだと思うので、小さじ3杯〜4杯も入れれば十分だろう。
そのまま小一時間ほど浸けておき、そのあと普通に洗濯機で洗濯する。これだけで、血液のシミもなくきれいに落とすことができる。先の血まみれの道着など、買い直さないとダメかと思っていたのだが、2時間ほど浸け置きしたあと洗濯したら、跡形もなくきれいになった。年頃のお子さんを抱えるご家庭では、ぜひ装備して頂きたい。
そのほかにも、油汚れに強いという特徴があるので、制服のワイシャツの襟や袖の汚れなどにも利用できる。市販のスプレー瓶に水を入れ、500mlにつき小さじ1杯の分量を溶かしておく。これを襟、袖汚れの部分にしっとりするぐらいスプレーして、小一時間放置する。その後普通に洗濯すれば、驚くほどきれいに落ちる。
これまで襟、袖汚れは、固形石けんを擦りつけたり、襟汚れ専用洗剤などを使ってきたが、全然きれいにならなかった。それがきれいに落ちるのだから、楽ちんだ。
先日、キッチンの窓にかかっているレースのカーテンを洗濯したのだが、レンジ近くの部分は揮発した油がこびりついて、やや茶色く変色していた。これは浴槽に少し水を張り、セスキ炭酸ソーダを加えてカーテンを浸しておいた。その後普通に洗濯したら、漂白剤も使ってないのにまっ白になった。
洗濯だけでなく、レンジ周りの拭き掃除や、手垢のついた電灯スイッチ周りなども、セスキ水溶液を浸したぞうきんで拭き取るときれいになる。洗剤と違って泡だったりもせず、ぬるつきもないので、掃除にも使いやすい。使ったことがないという方は、ぜひ一度お試しあれ。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
SNSシェア