CoffeeMeeting誕生秘話──1人でコードを書き、コワーキングで磨き上げた
「サイボウズ式」では、「新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとIT」をテーマにした記事をお届けします。
CoffeeMeetingというネットサービスを開発した山本大策さんは、多くの人に使ってもらえるサービスを作るという信念を持ち、会社に勤めながら、平日の夜や週末を使って開発を続けました。CoffeeMeetingの完成度を高めたのは、コワーキングスペースに集まる仲間や知人のフィードバック。山本さんのネットサービス開発からは、組織という枠にとらわれないゆるやかなチームワークや柔軟なコラボレーションが見えてきます。
「かかわった人がみんな仲間になるような魅力を持っていると思います」――。出会った人にこんな印象を与えるネットサービス開発の旗手がいる。コーヒー1杯を飲む時間を共有し、一緒に過ごしたい人と出会うネットサービス「CoffeeMeeting」を立ち上げた山本大策さんだ。構想からわずか数カ月で作り上げ、現在ユーザー数が9000人を突破した注目のサービスである。
CoffeeMeetingの開発秘話は実に興味深い。サービスを現状の形にするにあたり、コワーキングスペースなどで知り合った人のフィードバックを多く取り入れていった。一人で開発を始めたのに、気がつけばサービスについて真剣に考えてくれるたくさんの仲間がいた。穏やかな人柄の奥に強い求心力を感じるから不思議だ。
CoffeeMeeting誕生までのいきさつは、これからネットサービスを作りたいと思っている人に、仲間と一緒にサービスを作ることの大切さを教えてくれる。開発では、無料コラボレーションツール「サイボウズLive」を活用した。CoffeeMeeting誕生までの軌跡や山本さんの思いをたどると、ネットサービスの新しい作り方が見えてくる。
「お茶できる時間」を共有し、知らない人同士が出会う
- CoffeeMeetingとはどのようなサービスでしょうか?
山本:コーヒー1杯を飲む時間を共有し、一緒に過ごしたい人と出会えるインターネットサービスです。ユーザー同士が空き時間や「起業」「Web」といった興味のある分野を共有してミーティングが成立すれば、今まで出会ったことのない人同士が出会える仕組みです。
成立したミーティングには、起業志望者とベンチャーキャピタリスト、ネットサービス開発者とデザイナーなど、職種を超えた出会いがありました。またミーティング後は、気のあった人同士が飲みにいく仲間になったり、ビジネス上でのつながりができたりといった、継続的な関係が生まれています。
昼間は会社、夜は開発 「毎日必ず1行以上コードを書く」
- 山本さん自身のキャリアや開発について教えてください。開発者としてどのようにネットサービス開発に携わってきたのでしょうか。
山本:僕自身がエンジニアとして会社で仕事をしながら、2006年くらいから個人でネットサービスを作ってきました。
当時開発したサービスの1つが、リクルートの主催するコンテスト「Mashup Awards 4」で受賞しました。個人で作ったサービスを多くの人に使ってもらえることに面白さを感じ、それ以来ネットサービス開発を続けています。CoffeeMeetingもその一環です。
CoffeeMeetingの開発は、僕一人で進めています。平日は会社に行っていますので、平日の深夜0~3時と土日を開発の時間に当てました。正直に言うとしんどい時もありましたが、誰かの役に立つサービスを作りたいという思いで、「1日に1行以上のコードを必ず書く」という決まりを作って、開発を続けました。
- 1日1回必ずコードを書く時間を作ると決めて、どれくらいのペースでサービスを開発したのでしょうか?
山本:2011年11月にCoffeeMeetingの原型となる「OpenTalkin'」を開発しました。要した期間は1カ月くらいです。会議をオープンに開催・共有するというコンセプトのネットサービスを作りました。
OpenTalkin'の開発時は「自分の作ったもので、少しでも世の中を変えたい!」という気持ちを常に持っていました。これまで個人で開発してきたアプリやサービスは「個人プロジェクトだからこのくらいの低い品質でいいだろう」という甘えた気持ちで作っていましたが、今回はその甘えを捨てて、世の中の人たちに受け入れてもらえる品質まで高めたいという思いで作ったのです。
ですが、最初は「このサービスが本当に人の役に立つのか」不安だったので、知人に使ってもらい、印象や使い勝手をヒアリングすることにしました。CoffeeMeetingが今の形になるまでに、多くの方のフィードバックをいただき、改善を続けています。
コワーキングスペース「co-ba」でサービスを形作った
- CoffeeMeetingのフィードバックをもらった人は、山本さんの知人の方ですか?
山本:僕の知人が多かったですね。それに加えて、入居している渋谷のコワーキングスペース「co-ba」で知り合った人にサービスを試用してもらいました。co-baに入居している知人がまた別の人を呼び、ネットサービスに関心のある知り合いが増えていきました。
「co-baに入居してCoffeeMeetingを開発したら、より良いサービスになる」――。「CAMPFIRE」でco-baのプロジェクトを見た瞬間にピンと来たというか、直感が働きました。CoffeeMeetingは今まで面識のない人がお互いの時間を共有するサービスだったので、私が自宅にこもって一人で開発するよりも、多種多様な人が集まる場所で作った方が優れたサービスになると思ったのです。
なるべく多くの人に会い、やりたいことを言葉にして伝え、フィードバックをもらうようにしました。その意見の1つ1つが、今のCoffeeMeetingの形を作っています。みんなの言葉がなかったら、CoffeeMeetingは完成しなかったといっても過言ではありません。
実は僕自身、開発当初はサービスに対する自信がなく、人に会って相手に物事を伝えるのは苦手でした。しかし、ユーザーの意見を聞いた方が良いサービスになると思っていました。「CoffeeMeetingは僕一人ではなく、みんなで作るサービスだ」という考えを持ち続けていたからこそ、多くの人が助けてくれたのだと思います。
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