育児は21世紀のビジネススキル──『新しいパパの教科書』出版記念イベント
パパ目線で子どものための情報ブログ「子ナビ」を運営している中野敦史です。2013年10月11日(金)学研ビルで開催された『新しいパパの教科書』の出版記念イベントに参加しました。
イベントでは、仕事だけでなく家事も育児も楽しむ執筆陣や本の帯を書いたサイボウズの青野慶久社長が、幸せな家庭を築く秘訣を伝授しました。以下、共働きで2児の父である30歳サラリーマンのわたしが実感を交えてレポートします!
「笑っている父親になろう!」by ファザーリング・ジャパン
初めに『新しいパパの教科書』の著者であるNPO法人ファザーリング・ジャパン(以下、FJ)理事の東浩司氏が登壇しました。
「Fathering」とは「父親であることを楽しもう」ということ。限りある貴重な体験を楽しむことがカギになるといいます。
『新しいパパの教科書』は、日本初の父親学級「ファザーリング・スクール」の内容を各方面の専門家とともにまとめたものです。『教科書』といっても理想のパパ像を伝えたいわけではありません。子育てに正解はなく、パパのあり方は多様性があって良いのです。いい父親ではなく笑っている父親になりましょう! 少子化対策、女性の活躍支援、児童虐待防止などあらゆる社会問題において父親の行動がカギを握っています。父親が変われば、家庭も地域も企業も、そして社会も変わる。「新しいパパ」の出番を社会は待っています。
自称イクメン社長が語る「バリバリ働く父親の育児」
次に「働く人こそ育児に興味を持ってほしい」という想いから「育児は21世紀のビジネススキル」と本の帯を書いたサイボウズの青野氏が講演しました。
育児休暇をとって話題となった文京区の成澤廣修区長の勧めで、青野氏は2010年に2週間の育児休暇をとります。仕事人間だった青野氏は、初めは会社の宣伝になればという思いでしたが育児の大切さに目覚めます。
育児に参加するうちに、自分の中でも考えが変わってきました。 育児って本当に大事だなと思いました。このままだと、どんどん人が減って物が売れなくなる。「商売する前に育児をしないといけないのではないか。将来の市場がなくなるのではないか」と自分が育児をして初めて気がつきました。
このプレゼンテーションで私に強い印象が残ったのは青野氏の「育児休暇中も仕事ができると思っていたが、実際は1日1時間くらいが限界だった」という一言。それくらい育児や家事に要する時間は多いということです。体験したからこそわかる部分ではないでしょうか。 青野氏は、夫の休日の家事・育児時間が長いほど第2子が誕生するというグラフを紹介。夫の家事・育児参加が、子どもの数に大きく影響しているのがわかります。 青野氏がイクメンとなり授かることができた第2子は、出産前に心臓の問題を、出産後は開頭手術を要する問題を抱えていました。妻の体調も悪化し、危機的な状況を迎えた青野氏は「なんちゃてイクメン社長」から「リアル・イクメン社長」へと変貌します。 「夫ができることは?」と考えた青野氏は、水曜日を出社せず家事と育児に充てるという「水曜育休」を半年間実践したのです。 育休終了後も、青野氏は家事・育児に積極的に取り組んでいます。
仕事・家事・育児に全力で取り組む日々の中で、青野氏も妻にイライラを感じることもあります。そんなときの対処法は「わたしはあなたに影響されない」と思い浮かべること。青野氏は妻への愛情の言葉をあえて子どもに聞こえるように言うなど、日ごろから良好な関係を築くコミュニケーションをしています。 いちサラリーマンである私の率直な感想としては「育児休暇をとる社長というのは理想的すぎる!」ということ。「誰かがやらないと踏み出せない」という日本の職場環境の中、周りに気を使って損をしている方は山ほどいるのではないでしょうか。 青野氏は最後に「育児休暇は必ず取っとけ」と言っていましたが、これには同意。「妻の育児が大変だからサポートする」という流れもあるかと思いますが、後から参加するとその大変さに参ってしまうお父さんたちもいるでしょう!早い段階から育児休暇を視野に入れておくのが良いなぁと私も実感しています。 それにしても「子どもは将来の市場」という言葉は、普通のお父さんからは出ない言葉でしょうね!
個性的な執筆陣が語る「想い」
イベント後半は、執筆陣の子育てトークセッションです。
FJ代表の吉田さん、出版にあたっての想いは?
「笑っている父親になろう」ということを提唱していますが、何事も「自分だけが楽しくて良いのか」ということをご自身に問いかけてほしいです。自分が楽しくなると同時に、ママや子どもも楽しくなる関係性を築いてほしいです。 例えば離乳食をあげるにしても、スプーンを口に持っていくという「いいとこどり」で満足するのではなく、作ったり片付けたりもするとママの負担は軽くなりポジティブな気持ちになれます。パパのほうも仕事だけで煮詰まった脳から脱せます。
ビストロパパの滝村さん、レシピを考えるときにイメージするものはなんですか?
食べることで身体がつくられます。ママや子どもに優しく、自分も健康になれるような料理を目指しています。
「家事シェアリング」をご担当された三木さん、わたしは片付けが苦手なのですが、コツはありますか?
片付けというとスペースの有効活用や、効率化についての話しが多いですが、僕は、モデルルームみたいなきれいな部屋を作るということだけではなく、家事とか暮らしをシェアするという中で家族の誰もが使いやすい環境を創っていく必要があるのではないかと思っています。そして一番大事なのはそこでのコミュニケーションではないかと思うのです。 あまり料理や洗濯物をたたむのをやらないパパの家庭では、パパが「どこにしまってあるの?」と勇気を出して聞く、ママも嫌がらずに答えるというコミュニケーションが大事なポイントです。
幼稚園教諭の久留島さん、体を使って遊ぶときのコツは何ですか?
急に体を使っても遊べません。子どもが怪我してしまうこともあります。乳児のときから、抱っこして、触れて、だんだん丈夫になってきたなとわかったうえで遊んでください。0歳のときからコミュニケーションをとっていくのが大事です。
何事も「コミュニケーション」がポイント
次に女性の視点から「パートナーシップ」の章を担当した林田香織氏が発言しました。
「愛している」「好き」という気持ちは、伝える必要があります。「目を見ない」「伝えない」は、ネガティブなメッセージを伝えているようなもの。コミュニケーションがないということは「興味がない」と伝わってしまうかもしれません。だからこそ、目を見て「いつもありがとう。がんばっているね」と感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。
これはあまり意識していないパパが多いとですが、温度差が生まれやすい出来事の1つではないでしょうか。気持ちはちゃんと伝えなければ伝わりません。常日頃の態度がママのストレスになっている可能性もあるわけです。 共通するのは「コミュニケーション」という言葉。言ってしまうと簡単でしかも当たり前な行為だと思うのですが、それができていないパパが多いからこそ執筆者のみんなさんが声を大にして語っているのだと理解しました。 そして第2タームでは、4名の方が想いを語りました。その中で、わたしが「これは勉強になった!」というのが、社労士である新田香織氏の話です。
育児休暇の他にも短時間勤務制度や看護休暇など男性が使える制度も存在します。ちゃんと確認することが大切です。女性が取ることが多いですが、パパが週に1度でもいいから、そういった制度を使ってあげることで、ママの負担は大きく変わります。特に共働きのご夫婦には、ぜひ考えてほしいですね。
仕事も子育ても全力でプレイしようぜ
第3タームは、FJ社員でNPO法人えほんうた・あそびうた代表理事の西村直人氏とFJ創立者でNPO法人タイガーマスク基金代表理事の安藤哲也氏によるライブ。場の空気が一気に和みました! 最後に安藤氏から一言。 「やらなくてはいけないのであれば全力で楽しむだけ!仕事も子育ても全力でプレイしようぜ!」 確かにその通りなのです! 「大変」「めんどくさい」と思っているからこそ、時間がかかってしまって余計にやりたくない「作業」という認識になってしまいがちですが、それではいけないのです。全力でやってみると、意外と楽しかったり新しい発見があったりするものです。 私も、部屋を本気で掃除した時にはそのすっきり感に笑ってしまうくらいでしたし……。そして、その作業の大変さを実感することで、いつも育児や家事だけではなく自分の仕事もこなしているママの大変さが身に染みてわかるかもしれないですね! 今回のイベントでの最大の学びは、子どもとのコミュニケーション量だけでなく、夫婦のコミュニケーション量についても意識せねばいけないということでした。「子どもは特別な存在」であることは間違いないのですが、では妻はどうでしょうか?「特別な存在」であるとともに「当たり前の存在」になってはいませんか?結婚して妻になり、子どもが生まれてママになったわけですが、今もこれからも妻なわけなのですよね。 わたしがパパとして家族のためにできることは、仕事をガリガリすることも、育児や家事に参加することもそうなのですが「家族全員とコミュニケーションをとる!」ということなのだと思いました。 妻と何気なく会話をしている中で「久々に2人で話したね(笑)」と。子どもが2人いるし、帰ってくる時間はバラバラだし、確かに久々だったかも。「パートナーとのコミュニケーションが多いほど、家族がHAPPYになれるのは間違いない!」と実感しました。みんなさんもきっかけは何でもよいと思うので、ぜひコミュニケーションをたくさんとってください!
執筆・写真:中野 敦史
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