ブロガーズ・コラム
「ミスの報告、大歓迎」と言ってみよう
上司はつらいよ
「あんなにていねいに説明したのに、できてない!」
……と思ってムカーッとなったことはありませんか? わたしはあります。
こちらがどんなに心を砕いてていねいに説明して仕事をお願いしても、トラブルが起きるときは起きてしまいますよね。しかも、本当に切羽詰まっているときに限って起きる。自分のせいじゃなくても起きる。つらい。
そうなったとき、正直、そのミスの重大さより「自分にストレスをかけられたこと」が重い負荷となって冷静さを失ってしまいやすいのは、今まで仕事をした仲間を見ていても実感します。
当然の感情の動きといえば動きなんですが、そういうときはお互い本当にきつい。指導する側もいったん深呼吸して冷静さを取り戻す時間が必要だし、ミスを報告する方も何か言われるんじゃないか…と緊張する瞬間です。
社会に出て、何度となくミスを報告する側になってみて思うのは、重いミスほど早く報告するのが重要ということ。早ければ早いほどリカバリの時間が長く作れて、結果的に全体のダメージは抑えられるからです。
一方、ある程度年次が上がると、ミスを報告される側に回るわけで。
そうなってみるまでは「誰かに任せて、その相手がミスったとしても自分も通ってきた道だし、うまくやれるだろ~」と思っていたんですが、どっこいそうでもなく、思ったよりウッとなる瞬間が多い。
部下が付いている時点で自分の仕事の規模は広がっているわけで、その時点で仕事をうまくマニュアル化・仕組み化しておく必要があります。もしあなたが渡したはずの仕事が戻ってきたとき完全にキャパオーバーになってしまうとしたら、それまで関わっていた仕事のタスクが仕組み化できていないせいかもしれません。ここは本当にむずかしい問題で、各人の得意不得意もありますし、仕組み化しにくい仕事もある。
ミスの報告にどう対応するか
とはいえ、報告を受ける立場からも逃げられないわけです。
そして報告される側になるというのは、そのミスが繰り返されないよう、指導しなきゃいけない立場になった、ということでもあります。
悩み悩みながら気付いたのは、まず何より報告を受ける側は、冷静さをキープしなければならないということ。仕事以外の余計な情報や前提をいったん頭から除外して、何が問題か、影響範囲はどのくらいか、この次に打てる手はあるか、をなるべく短い時間で判断する必要があり、ここは常に意識していないとなかなか出来ません。
個人的に「あれはキツイな~」という指導方法のパターンでいうと、相手のライフスタイルやプライベートをミスの原因として責めるやり方。
わたし自身の経験ですが、仕事が終わったあと、お酒を飲みに行ったり食事に行くのが好きで、ちょっとくらい寝る時間が減っても友人といろんな話をして情報交換したり気分転換をしていた時期がありました。
そのことを職場でも特に隠さずにいたのですが、まったく関係ないトラブルのとき、上司が「あいつはいつも飲み歩いてるからこうなるんだ」と言っていたのを聞いてしまって本当にショックでした。
実際に二日酔いとか寝不足で起きたミスだったら素直に謝れたのですが、まったく関係がなかったので、上司を信頼して個人的な話も普通にしていたことを後悔して悲しくなったりしました。
振り返って考えると、そうやって仕事とは関係ない、「責めやすい」ポイントを叩くというのは、指導方法としては楽なんですよね。
もしミスの報告を受けたあと、その原因や、どこで何をしていたら防げていたか? を検証しようとするとき、トラブルに至るまでのいきさつを知りたくさんの仮説を考え、シミュレーションを行った上で個別の対策を立てなければいけません。
その繰り返しがミスの予防につながるんだと思うのですが、正直それって、かなりめんどくさい。
とはいえ、ミスの報告を受ける側になったのであれば、そのめんどくささを乗り越えて「仮説→シミュレーション→対策」を繰り返し、トラブルの芽を潰していく必要があるのですが、日々の業務や自分自身の仕事に追われてしまうとなかなか着手しにくい作業であり、つい後回しにしてしまいがち。
指導者側の悪手としては、前述のようにひとおもいにトラブルのもっとも近くにいた人間の「人的ミス」と決めつけて、そのミスをおかした理由も分かりやすい部分に求めてしまえば、ひとまずは一件落着してしまうわけです。気持ちは分かるけど、根本的な解決になっていないし、結局同じトラブルを繰り返されてしまう可能性を減らせていないので、よくないですね。
ミスやトラブルの報告は歓迎、という空気をつくろう
そんな経験を経て、個人的に絶対にブレないよう心がけていることがあります。
どんなにクリティカルなミスでも、リカバリしようのないトラブルでも、相手が「報告してくれたこと」そのものに感謝すること。
これ、かなりレベルが高くてできてないときのがまだ多いですが、笑顔を引きつらせながらでも、まず開口一発、「報告してくれて、ありがとう」と言うようにしています。
そもそも言われなきゃ気付いてないミスとかトラブルはきっと今でも死ぬほどあって、気付かないままなんとかなってるものもあるかもしれないんですが、自分が把握できていないトラブルの火種がずーっとくすぶっていて突然ドカン! と大爆発を引き起こすよりは、早く言ってくれたほうがよっぽどマシなんですよね。
そしていかに早く報告してもらえるかどうかは、こちらがどれだけ「報告しやすいムード」を作れているかどうか、だと思います。
ただこのバランスが難しくて、「報告しやすい」のと「ミスしても言えば許してもらえる」というのの線引きは、まだわたしも手探り中です。たぶん、原因の洗い出しをシビアにして、予防策をしつこく考えてもらうことで起こしたミスの重要度は理解してもらえてる…のかも。まだ実証実験中ですが。
あとは「すぐに指導する」そして「あとあとまで引っ張らない」の2つ。
厳しく言うならまず報告してくれたことに感謝したあと問題点を伝えて、リカバリ対応を行い、目鼻がついたら原因と予防策を相手にも再度考えて報告してもらう段取りをすること。
そして、その後はなるべく早くに切り替えて、普段通りの空気に戻すこと。
ミスをおかした人と、それを厳しく指導する人、という空気というのは周りも敏感に察知するので、いつまでも引っ張っていると全体にも悪影響を与えることになってしまいます。厳しく伝えた後は、自分から普段通りの空気に戻すよう、周りに声をかけたり立って歩いたり、空気を動かすようにするといいかも。
簡単にできることはでないのですが、まず自分が変わること。
それをコツコツと積み重ねることが緊張感を持って仕事をしつつ、ミスが起きたときに速やかに報告しやすい空気を作るのかもしれません。
まあそんなことよりもミスが起きない仕組みを作るのが何より重要なんですけどね…。それはまた別の話ということで。
今日はそんな感じです。
チャオ!
イラスト:マツナガエイコ
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執筆
撮影・イラスト
松永 映子
イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。