妻と会話をしていても本音は聞けていなかった!──イトーキの男性社員が職場で家庭をふりかえる
今年創業126年目を迎えたオフィス家具メーカー、株式会社イトーキの東京イノベーションセンター「SYNQA」にて、イトーキとNPO法人オトナノセナカ、サイボウズのコラボレーションにより、ワークスタイルドラマ「声」(ドラマは公開を終了しました)をインプット材料とした男同士の対話イベントが開催されました。
集まったのはイトーキで働く男性社員。彼らは「声」を観てどのような感想を抱き、それをどのように自身の家庭生活にフィードバックしようと考えたのでしょう? イベントの模様をレポートします。
不満があっても言わないと、いつかダムが決壊してしまう
まずは自己紹介をしたのち、ワークスタイルドラマ「声」の上映です。
あるテーブルでは、「わかる! わかる!」については、
「妻は平気なようでいっぱい、いっぱい」
「育児より残業しているほうが疲れないというのは同感」
「部屋に写真を置いておくのは仲直りのきっかけになるからいいことだと思う」
といった話題で盛り上がったそう。
一方で、「もやもや」については、
「夫が家事をやらなさすぎ」
「夫が子供の気持ちを考えなさすぎる」
といった意見が出たとのことです。
続いて深掘りタイム。
ペアになって、「ドラマに出てくる家族は誰がどうすればよかったのか」を10分ほどかけてじっくりと語り合います。 対話後、何人かに意見を発表してもらったところ、
「人にはそれぞれキャパシティがある。夫婦がもっと対話をしてお互いのモチベーションを高め、補いあっていけるようにするべき」
「奥さんと旦那さんがお互いもっと思っていることを言い合うべき。不満があっても言わないと、いつかダムが決壊してしまう」
といったことが出てきました。
ドラマのテーマは「寄り添うこと」
続いて、ドラマを制作したサイボウズ社員に、制作の裏話を聞くコーナーに。
最初に同社コーポレートブランディング部長の大槻幸夫が、なぜサイボウズがこのようなドラマを制作したのかについて語りました。
ドラマのテーマは「寄り添うこと」です。サイボウズでは2014年にも、働くママを主人公にしたワークスタイルムービー「大丈夫」を制作しています。今回、それに続いて男性を主人公にしたドラマを制作しましたが結局のところ、今の日本はまだまだ男性中心の社会なので、男性も変わらないといけません。
男性は、悪気があるわけではなく、そういう価値観で育てられてきただけです。 一度自分の視点を捨て、パートナーの立場から物事を考えてみるとどういう風景が見えるか考えてもらうきっかけづくりをしたかった。
他者の立場に立って相手に寄り添うことが大事なのは仕事でも同じではないでしょうか? それも実はもう1つのテーマです。
次に同部の渡辺清美が、ママの視点から、ドラマに出てくる家族は誰がどうすればよかったと思うか、意見を語りました。
この夫婦は家庭でも職場でも役割にがんじがらめになっていると見受けられます。もう少し柔軟にカバーし合える関係だと、いざというときも、お互いの立場を入れ替えやすくなるのではないでしょうか。
ドラマは「声」というタイトルがついていますが、思いやりの声として、相手の考えていることを引き出したり、自分の思っていることをきちんと伝えたりできるようになれば、より素敵な家族になれると思います。
渡辺が再婚した夫は優しく、家事や子育ても一緒に取り組んでくれていることを語ると会場からは大きな拍手が沸き起こっていました。
パートナーの声に耳を傾けたい
休憩・席替えを挟んで、後半はアウトプットタイム「男対話」の時間です。「オトナノセナカ」では「こどものための井戸端会議」と呼んでいるそう。
こどものための井戸端会議は、勝ち負けを決める議論の場でも、ただなんとなく会話する場でもなく、人がそれぞれ抱いている考え方や価値観を知るための場です。
ここまで対話をして、こたえではないけれどもこたえのようなものを見つけられたのではないかと思います。それを書いてみてください。
「こたえのようなものシート」にはこのようなことが書かれていました。
「俺に主婦ができるのか!?」
「相手の目線で考えてみる!! 」
「当たり前は当たり前ではない」
「話しづらいことも話せる家族にしよう」
「家事・育児を自分ごととして考える」
「お互いに頑張り過ぎない」
「家族は妻、子供だけではないよ。産んでくれた親は?」
参加者の皆さんの発表が終わったところで、斎藤さんが「こたえのようなもの」について解説します。
今、皆さんにこたえてもらったことは、カーナビの目的地設定のようなものです。人生はこたえのない問いだらけで、大人だって迷うことはありますが、目的地が設定してあれば、何かあったらそこに戻れます。
このこたえは変化してもいいものですが、日々、意識しながら時間を過ごせればいいと思います。
皆さん一様に、大きく頷いていました。
最後に全員が感想を語ります。
「会社のなかでこんなに家族について考えたことがありません。こうやって会社の人と話すのがよかったです」
「映像にすごくはっとしました。立ち止まる機会が大事だなと思いました」
「相手を尊敬する気持ちが大事なのかなと思いました。尊敬する気持ちがあれば相手に対してバッシングはなくてお互いに相乗効果があるのかなと思いました。会に参加してよかったです」
「会話はしているけれど本音は聴けていないんだなと思いました。ドラマのなかで時短の人が大変なときに代わりますよといっていましたが、相手の立場を体験するといいと思います」
「20年前にこんなムービーがあれば、もっと幸せだったかな。妻の笑顔を追求したいと思います」
「ドラマの中で胸につきささるシーンがありました。帰ったら嫁を抱きしめようと思います」
「普段は自分が伝えたいことにフォーカスしがちですが、今後はパートナーの言いたいことに耳を傾けることから始めたいです」
など、出てきた言葉は様々。
皆さんとても有意義な時間を過ごせたようでした。
文:荒濱一 / 撮影:内田明人 / 編集:渡辺清美
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執筆
荒濱 一
ライター・コピーライター。ビジネス、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆。著書に『結局「仕組み」を作った人が勝っている』『やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)。
編集
渡辺 清美
PR会社を経てサイボウズには2001年に入社。マーケティング部で広告宣伝、営業部で顧客対応、経営管理部門で、広報IRを担当後、育児休暇を取得。復帰後は、企業広報やブランディング、NPO支援を担当。サイボウズ式では主にワークスタイル関連の記事やイベント企画を担当している。