ブロガーズ・コラム
「平凡な自分がイヤ」だと思う人と、そうでない人の違い
サイボウズ式編集部より:著名ブロガーによるチームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。朽木誠一郎さんのコラムです。
こんにちは、朽木誠一郎です。平凡な名字ではないものの、白哉とルキアのおかげでエゴサがはかどりません。
特殊能力を持ったスーパーヒーローへの憧れ、とまでは行かなくても、これと言ってパッとしない自分へのガッカリ感、というのは、折に触れて味わう人もいるでしょう。いわゆる「平凡コンプレックス」です。
しかし、「平凡」とはそもそも曖昧な言葉。そして、この曖昧さにこそ、いつまでたっても平凡な自分にガッカリしてしまう状態の原因があるのではないか、と思うのです。
僕もずっとこの平凡コンプレックスを抱いており、今はそこから抜け出すことができました。試行錯誤する中でわかったことを共有することで、同じような平凡コンプレックスを抱いている人の気分が、少しでも軽くなれば幸いです。
「平凡コンプレックス」は課題設定の失敗である
「平凡な自分がイヤ」だと思っている人って、じゃあどうなりたいかと聞けば、ほとんどの場合「特別になりたい」か「平凡じゃなくなりたい」と答えるくらいのテンションなんじゃないかな、と思います。
だって、もっと明確に目標を設定できる人は、はっきり言ってしまえば、そもそも平凡コンプレックスで悩まないからです。
というのも、このような曖昧な目標では、なかなか具体的なアクションが起こしにくくなりますよね。どうすれば特別になれるのか、平凡じゃなくなるのか、その定義がどこかにあるわけではないですから。
つまり、平凡コンプレックスを抱える人は、課題設定に失敗しています。曖昧な言葉ではなく、どうすれば自分のことを「特別」あるいは「平凡じゃない」と思えるようになるか、それをこそ考えるべきです。
例えば、僕は職業ライターです。新人の頃はWebの仕事がメインだったので、バズった(ネット上で話題になった)かどうかがわかりやすい、という特徴がありました。
そこで僕は目標を「平凡なライターから抜け出したい」から「月に1回は必ず、1記事で、1000シェア以上か、10万PV以上の結果を出す」に変更しました。僕が特別だと思っているスーパーヒーローたちは、そのくらいの結果を出していたからです。
このように、目標が具体的になると何がいいのか。僕の場合であれば「なぜシェア数が少ないのか」「PVが上がらないのか」など、目の前の課題と解決方法について、仮説の立案とその検証が可能になることです。
「たくさんシェアされる方法」とか「PVを爆上げする方法」とかはネットにたくさんあるので、そちらを参照してもらえればいいかと思います。さまざまなトライアンドエラーを繰り返すことで、今では継続して目標を達成できるようになりました。
同時に、このような目標が職業ライターとして本質的でないことも思い知るわけですが、何らかの課題を達成できたとき、とりあえず人はガッカリするよりうれしく感じるはずです。
ビジネスの場では、みんな口を開けば「PDCAサイクル! PDCAサイクル!」と言いますよね。でも、「理想の自分」のように抽象的なことを考えるときに、それを具体例にまで落としてPDCAサイクルを回し続けている人って、あんまりいないのではないでしょうか。
僕はこのPDCAサイクルという考え方が好きです。だって、これを回せば、理論上は必ず物事が改善されるのだから。なら、これを応用すれば、「もっと改善された自分」になれるのでは? そう気づいたときに、僕は平凡コンプレックスを抜け出すことができたのです。
自分の成長曲線を思い描きつつ、正確な現状把握を
同時に、「はたして今の自分は本当に平凡なのか」というのも、あわせて検討してみるべきでしょう。能力が高いのに自己評価が低い、これではいつまで経っても自分を「特別」「平凡じゃない」とは思えません。
課題設定にもつながることですが、現状把握は適切でしょうか。低すぎる自己評価は、ある意味では自分への保険でもあります。何かに失敗した時に「私は平凡だから」「私は特別じゃないから」という、心理的なクッションになるためです。
もちろん、自分に厳しいことは、それが向上心に結びつけば悪いことではないのですが、それが曖昧な課題設定と結びつくと始末が悪い、と思います。
自分には何ができて、何ができないのか。自分のスキルセットを把握した上で、不足している部分を事実として受け入れる。自分だけでは分からなければ、周囲に聞いてみるのもいいでしょう。
そして最後に、本当に実力的にまだまだである場合。達成感を味わえないのは仕方のないことです。そんなときにぜひ、思い出してほしい考え方があります。それが、「エクスポネンシャル」です。
これは、テクノロジーの進化などについて語られるときに登場する言葉で、要するに指数関数的な成長をするとき、その上げ幅が大きくなる前は低調でガッカリしがち、という意味です。
PDCAのように、課題に対して適切な仮説と検証のサイクルが回っていれば──それは努力と言い換えてもいいのですが──必ず人は成長します。
でも、その努力のリターンは、必ずしも望むようには得られないかもしれません。そのときは、上記の成長曲線を思い描いて、来るべき爆発的な成長を信じて備えましょう。
当然、この時期は決して楽ではありませんが、課題設定さえ正しく行われていれば、むやみに焦ったり、悩んだりということはないはずです。
先の1000シェアの例で言えば、今回は200〜300シェアかも知れないけれど、「前回よりは前進している」「少しずつ目標に近づいている」と自分に自信を持てるようになります。もし後退してしまったとしても、その原因は何かを、数字ベースで検討できます。
大事なのは行動すること、特に、トライアンドエラーを繰り返すこと。課題設定と現状把握を徹底的に具体化し、脱・平凡コンプレックスのチャレンジを続けましょう。
なんとなくすごい人になりたい、という人は、多分すごい人にはなれません。「努力した人は必ず成功する」は偽でも、「成功する人はだいたい努力している」は真、とはよく言われることですよね。
まずは適切な課題設定をし、その課題に最適な解決方法を追求すること、これがまず、平凡コンプレックスから抜け出す方法になります。
それがいつ来るかはわからないけれど、少なくともそうすることにより、あなたは自分の平凡コンプレックスで悩むことが少なくなっているはずです。
イラスト:マツナガエイコ
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執筆
朽木 誠一郎
地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在は報道機関に勤務しながら、フリーライターとしても執筆中。
撮影・イラスト
松永 映子
イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。