ブロガーズ・コラム
イクメンが広まった今、父親も子育ての「主体者」であることが、もっとあたりまえになってほしい
サイボウズ式編集部より:チームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。はせ おやさいさんのコラムです。
2010年6月、少子化打開の一助として始動された「イクメンプロジェクト」をきっかけに、あちこちで「イクメン」という単語を見るようになりました。
イクメンプロジェクトのサイトで「イクメン」の定義をみると、
イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと。 または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと。
とあり、男性の育児休業取得率の引きあげを目標に掲げ、ワーク・ライフ・バランスの実現へ向けた取り組みだったようです。
現在「イクメン」という言葉自体が普及して、男性が育児に参加するのはあたりまえのこと、という空気ができつつあります。こうした言葉をつけてカテゴライズし、盛り上げていこうとしていなかったら、いまだに日本の父親の育児参加は「母親のサポート」程度、という状態のままだったかもしれませんし、この取り組みは非常に意義のあるものだと思います。
「男性も育児に能動的に参加するべき」という狙いは、達成できつつあるのでは?
さて2017年。わたし自身の身近な男友達にも、数人ほど育児休暇を経験した友人がいます。小さいときから子どもと触れあえる、母親の体力回復期を支えられる、というポジティブな意見が多く、「父親が育児をする」ことに対する驚きや珍しさを感じることもなくなりました。
ほぼすべての父親が母親のように育児休暇を取得できている、とはまだ言いにくいかもしれませんが、こうして考えてみると、「イクメン」という言葉をつくったときに目指していた「男性も育児に能動的に参加するべき」という概念の浸透は、達成できつつあるのではないでしょうか。
考えてみれば、「男性も育児に能動的に参加する」という状態があたりまえであれば、「イクメン」という呼称を用意する必要はなかったはずなのです。(「イクママ」という呼称がないように)
わたしが印象に残っているのは、一児の母でもあるシンガーソングライターの大森靖子さんが語った「『イクメン』って、私の中では『ニンゲン』くらいの意味合いでしかない」という言葉です。
ここで大森さんがおっしゃっているのは、「育児はそもそも夫婦でするものなのだから、”イクメン”という特別感ある呼称や使われ方に違和感を感じる」ということ。
夫婦が最小単位の家族でありチームであるならば、その2人の共同作業により誕生した命を育(はぐく)むのは、双方が主体者である、というのは当然に感じます。
一方で、60代を超える親世代にはまだまだ「男が稼ぎ、女は家を守る」という価値観が強く残っているのも事実。「女性も社会にでて働くこと」が当然のことであれば、「職業婦人」も「ビジネス・ガール」も「OL」という単語も誕生しなかったかもしれませんね。
「父親と母親の双方が、子育ての主体者である」という概念がもっとあたりまえに普及してほしい
「男性も育児に能動的に参加するべき」という概念は浸透しつつあるかもしれませんが、実態はまだまだです。今となっては、女性が外で働くのは「ごく普通のこと」ですが、ここに育児を兼務しようとすると途端に「ワーママ」という新たなカテゴリが発生します。
働きながら育児をするためには、会社や家族との調整が必要であったり、何かを諦めたり、取捨選択を迫られることが多い。そして「イクメン」に対して「ワーママ」という言葉がさす女性が多いことからも、この取捨選択が女性=母親にばかり負担させる状態が続いていることがわかります。
この状況を打開するにはまず、「父親と母親の双方が、子育ての主体者である」という概念がもっとあたりまえに普及するべきです。そして、おたがいの年収バランスを考えたり、所属している会社や在住区の制度を2人で取捨選択したり、双方が納得した状態で育児を進められるように、今ある情報や状況を整理し、得意分野を分担しよう、という夫婦間の議論があたりまえになることが必要です。
それぞれの得意分野や苦手なことを双方が理解し、どうしたらもっともよい形で目標=育児を達成できるか。そのためには双方の「自分はこうしたい」を明確にし、すり合わせていく。これって、まさにチームビルディングであり、チーム運営ではないだろうか、と思います。
「あるべき姿」をどのくらいリアルに描けるかどうかで、マインドセットも変わってくる
同じチーム内でおたがいが「本当はこうしたいのに」を隠し続ける限り、情報の精度は落ち、選べていたかもしれない選択肢を見落とすことになりかねない。
それぞれの夫婦で「やっぱり俺がフルタイムで働くほうが効率がいい」「ベビーシッターなどでお金はかかるが、自分の仕事を続けたい」といった意見を出し合い、ベストな落としどころを見つけて実行し、うまくいかなかったらすぐに見直しをかける。わたしには子供はいませんが「何かの目標に向けて双方が意見を出し合い、ベストチョイスを探る」というのは、パートナーシップにおいてとても重要な作業だと思います。
理想論かもしれませんが、「あるべき姿」をどのくらいリアルに描けるかどうかで、マインドセットも変わってくるはず。「イクメン」という呼称を誕生させ、概念を普及させなければいけない段階はもう終わりで、あとは実態を理想に引き上げるフェーズにきているでのはないかと思います。
イラスト:マツナガエイコ
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執筆
撮影・イラスト
松永 映子
イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。