「育休2年半」からの復帰はどんな感じ?──時短勤務で高まるスキル、感じるギャップ-
2006年から、最長6年まで育休を取得できるようになったサイボウズ。2013年4月に2人の出産を経て2年半の育休から復帰した社員がいる。第1子が1歳になった直後、保育園の空きがなく待機している際に第2子を妊娠。1年程の育休の会社では復帰が危うくなりかねないこのケース。「仕事より育児が大事」と公言する社長が育む企業風土においては、当人の戸惑いも少なく職場も温かく迎え入れている。
安倍総理が、成長戦略スピーチで「3年育休」に言及して以来、盛んに議論されるようになった長めの育休。実際のところはどうなのか、以下、本人が独特のテイストで紹介する。
はじめまして。サイボウズの中澤です。 私は2010年8月から産前・産後・育児休暇を取得し、この4月にサイボウズに戻ってきました。おおよそ2年半ぶりに帰ってきた職場はどうだったのか。育休中は何をして、どんなことを思っていたのか。サイボウズは女性に優しい企業と言われているが、本当のところどうなの?というあたりを、セルフインタビューで皆さんに、いろいろぶっちゃけます。
復帰後の担当業務は?
まず仕事について教えてください。
人事部で、採用と研修の仕事をしています。
休暇取得前から同じ仕事なんですよね。
よくご存じですね。採用に関しては、ほぼ同じ仕事です。ただ、現在、時短で働いているので仕事の量は減っています。研修は復帰して新しく担当することになりました。
休職前と同じ仕事だと戻ってきたときに安心感がありますよね。
そうですね。経験があるので短い時間で働くとしても何かしら役に立てる部分があるというのは自信にもつながっています。
でも、サイボウズで産休/育休を取得した全員が同じ部署に戻っているわけではないです。実際、私の同期も妊娠出産を経て復職しましたが、前とは別の部署で働いています。以前の経験が活かせる部署への異動ですけど、私のように元いた環境に戻るよりは不安は大きかったでしょうね。
時短勤務で時間の使い方が向上
現在、時短で働かれているそうですが、何時から何時まで?
現在、9時から16時まで働いています。16時で終われずに17時になることも多いです。でも保育所には18時までにお迎えに行くことになっています。17時でも間に合うので、その日の仕事量を見ながら自分で調整しています。
時短で働いていることで以前と比べて何か変わりましたか?
以前は自分で言うのもなんですが、時間に関して無頓着だったんです。平気で19時からミーティングを入れたりしていましたし、多少無茶なスケジューリングでもなんとかなると思っていた部分がありました。でも、今は子供を迎えに行かないといけないので17時過ぎには絶対に帰らないといけない。だから、何かするときのマイルストーンとかスケジュール感とかには、以前より気を使うようになりました。本当は以前からそういう所はしっかりしておかないといけない部分だったんでしょうけどね。
では、時短にすることで一つスキルが高まった感じですか?
そうですね。
良かったですね。普通の勤務に戻ったとしても役立つスキルですよね。
過去の栄光と現実のギャップ
良い影響があった反面、時短で悪いところ、時短で仕事がやりづらいとか周りの目が気になるとかありますか?
周りの目が気になるとかは特にないですね。それは私が休暇前にも同じ部署に時短で働いている方がいたというのが大きいです。自分がフルタイムの時に時短で働いている方に対してネガティブな感情を持ったこともないですし、その人に対して陰で何か言っているというのも聞いたことがなかったので、自分が時短で働いてもそういうことはないだろうなと。
私の実家も/旦那の実家も遠方なんですけど、同じような環境で働いてる先輩ママさんがたくさん居たので、そこは安心感がありましたね。
復帰してみてどうですか?
実際、復帰してみて子供が熱などを出して休むこともありますが、そういう時に先輩ママが「小学校にあがったらほとんど熱を出さなくなるし、今だけだから頑張って」というコメントを送ってくれたりして、その時はちょっと涙が出てしまいました。 制度が整っているのは、すごく大切です。実際に利用できる環境にいて「すごく恵まれているな」と思います。
唯一、時短で困ったことと言えば、自分の中で仕事への折り合いをつけるのが難しかったです。
折り合いとは?
どうしても時間が減ったらできる仕事量も減るわけで、昔の(フルタイムで働いていた頃の)自分だったら、「このくらいは仕事が出来たのに」という過去の栄光と自分が出来ている現実の仕事量のギャップに心の折り合いがつかなくて。働く時間が減っているから、できる仕事の量が減るのは当然なんですけど。なんとなく自分の実力不足のように感じていました。
そこからどうやって復活しましたか?
同期で同じように時短を取っている友人も同じように感じた時期があったらしくって、悩みを聞いてもらっているうちに、「あぁ、そういうもんなのかなっ」て割り切れてきました。
ところで、サイボウズでは場所と時間を選ばない働き方ウルトラワークもできますが、そういう制度は利用されていますか?
実はまだ在宅で勤務したこともないんですよ。というのも我が家、インターネットを引いていなくて。でも、最近インターネットに加入したので、是非、家で仕事したいですね。4月に復帰してから子供の熱なんかで出社できないことも多いので、そういう働き方が出来たら便利ですし、周りにかける迷惑も少なくてすみますから。次に子供が風邪をひいたときは、是非利用したいと思います。
子供の「初めて出来た瞬間」にたくさん立ち会えた
ところで、育休中はどう過ごしてましたか?
普通に専業主婦をしていました。朝起きて、朝食を作って、9時くらいまでに家事をすませて。上の子が歩けるようになってからは毎日公園か児童館に行っていました。
そういう生活を送ってみていかがでしたか?
とても充実していました。子供の「初めて出来た瞬間」にもたくさん立ち会えました。
「仕事に復帰したくないな」と思いませんでしたか?
それはないですね。そもそも復帰しないという発想がありませんでしたし、復帰するつもりだったから毎日のように児童館に行ったり公園に行ったりができた、という面もあると思います。
と言いますと?
もともと、私はとても出不精なんですよ。でも、「子供にずっと密着していられる時間に期限があるんだ」と思ったからこそ、いろんなところに積極的に行こうと思えたのかもしれません。もし、専業主婦で「この生活が未来永劫続くかも」と思っていれば、そこまで頑張れなかったかも(笑)。
その頃の生活と、今の生活とで、私生活は何か変わりましたか?
一番変わったのは休日の過ごし方ですかね。復帰するまでは週末は2日とも、どこかにお出かけということが多かったですけど、復帰してからは、お出かけは、どちらか1日にして、1日は休憩ということが増えました。私自身が疲れるというのもありますし、子供が保育園で疲れているんじゃないかなとも思うので。あと、休みの日の料理は、全部旦那の仕事になりました。
それは良い旦那さんですね。
いやー、どうでしょうね。私からしたら、「平日はほとんど家事が出来ないので、休日くらいやって当たり前じゃない?」と思いますが、世間ではまだ当たり前じゃないのかもしれませんね。
平日にも、もっとやってほしいと?
そうなんですよ。「まぁ、世間で見ればやってくれている方なのかな」と頭では分かっているんですよ。でも、同期の旦那さんがとても家事育児を手伝ってくれるみたいで、そういう話を聞いていると「もっとやってくれてもいいんじゃないの?出来るんじゃないの?」と思ったりします。
社内結婚の良いところ、悪いところ
旦那さんもサイボウズにお勤めですよね?サイボウズは社内結婚も多いそうですが、良かったところ悪かったところってありますか?
良かったところは、お互い、業務とか立場とか環境がわかっているのでそこでのコミュニケーションが早いところ。悪いところは相手の状況が見えすぎてしまうところ。特にサイボウズは情報共有ツールの会社なので、旦那のスケジュールは全部見えてしまう。そうすると、子供が急に熱を出したりしたときに、自分のスケジュールが結構ぎっちり詰まっていて、旦那のスケジュールは真っ白だったりするのも見えちゃうんですよね。
私が迎えに行くのですけど「あなたが迎えに行ってくれてもいいでしょ!」と思ってしまいますね。これも頭ではシステムで共有される以外にも仕事があることはわかっているのですが、私の方に「できれば出たかったな」という会議や面接があったりすると、どうしても「なんじゃこのやろー」と思ってしまいますね。
そう思ってしまうかもしれないですね。
でも、最近は旦那が「迎えに行けるか打診して」と言ってくれるので、ちょっとだけ気が楽になりました。
「アタックチャンス!」で地中海クルーズ
それは良かったですね。育休中の話に戻りますけど、育休中にTV番組に出られたんですよね。
そうです。某クイズ番組に出演しました。
どうして出演したいと思ったんですか?
地中海に行きたくて。(クイズの優勝者への賞品が地中海クルーズ。そうです、あの番組です。「アタックチャンス!」)軽い気持ちで応募しました。まさか自分が出演できるとも思ってなかったですし。
優勝するとも思ってなかった?
そうなんですよ。
でも、優勝なさって。凄いじゃないですか。普段からクイズは、されてたんですか?
結婚前はゲームセンターのクイズゲームでクイズをしたりはしていました。ただ、クイズサークルの方みたいに本格的ではないですし、ゲームでもそんなに強い方ではないので、まさか自分が優勝できるとは思わなかったです。
地中海はどうでしたか?
それが、当時妊娠していたので、結局、地中海には行けなかったんですよ。
それは残念ですね。じゃあ、リベンジしなくっちゃ。
是非、5年後にリベンジします。(番組の規定で5年間は番組に出られない)
5年後は「小1の壁」
5年という区切りの期間が出たところで5年後、どうなりたいと思っているところはありますか?
そうですね。5年後も、ずっと働いていたいですね。「こういう仕事がしたい」という仕事内容のこだわりはないのですが、「社内で必要とされる人でありたいな」とは思います。
5年後だと丁度、長女が小学校1年なので、「小1の壁」をどう超えていくのか、というところも今から若干不安に思っています。ただ、サイボウズにはたくさんの子育ての先輩がいるので、その方々の後ろ姿を見ながら子育てと仕事の両立をしていきたいと思います。
本日はありがとうございました。
執筆:中澤智香 撮影:野水 克也 編集:渡辺清美
参考リンク:サイボウズの多様な働き方について社長が解説しています。
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編集
渡辺 清美
PR会社を経てサイボウズには2001年に入社。マーケティング部で広告宣伝、営業部で顧客対応、経営管理部門で、広報IRを担当後、育児休暇を取得。復帰後は、企業広報やブランディング、NPO支援を担当。サイボウズ式では主にワークスタイル関連の記事やイベント企画を担当している。