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「コネクト」──ビジネス書なのにエンジニアにお勧めするワケ
株式会社オライリー・ジャパンから、「コネクト──企業と顧客が相互接続された未来の働き方」という書籍が発売されます(7月20日発売予定)。オライリー・ジャパンのご協力で、本書を発売前に読ませていただいたところ、「これは!」と思うところがあったので、急遽、この記事を書くことになりました。
本書は、同社のラインナップでは珍しいビジネス書で、ソースコードも出てこなければ、実践的なハウツーが書かれているわけではありません。しかし、本書で取り上げられているのは、まさにエンジニア(広い意味で「techな人」)が日々直面している状況であるとともに、将来を真剣に考えるエンジニアなら誰しも抱いている不安や疑問へのヒントになる事柄です。
なお、以下の記述のベースとして、編集を担当した宮川直樹さん、セールス&マーケティングマネージャの渡里健司さんにお話を伺いました。この場を借りて御礼を申し上げます。
舞台はエンジニアが直面している状況
本書の内容を一言で表せば以下のようになるでしょうか。
企業を取り巻く状況は、すべてが相互接続され、複雑さが増す方向に向かっている。
そこで生き残るためには、企業という組織も「コネクト型」に変わる必要がある。
ここで言う「あらゆるものが相互接続され」た状況というのは、インターネット接続デバイスのコモディティ化や、SNSの爆発的な普及によるコミュニケーションコストの急激な低下など、ITの世界で形作られつつある新しい社会状況のことです。一般的な読者をターゲットにするなら、この部分にも言葉を費やして説明を重ねる必要がありますが、ITエンジニアにとっては、これらは、ほとんど日常と言ってもよい状況でしょう。この本で取り上げている「未来」に最も近い位置にいるのが、ITエンジニアなのです。
ビジネス書であるにもかかわらず、本書をエンジニアにお勧めする理由の1つは、まさにそこにあります。
「コネクト型企業」はチーム開発に通ずる
本書が、企業の新しい組織モデルとして提案する「コネクト型企業」は、「Pod」と筆者が呼ぶ自律的な小グループで構成されます。そうすることで不確実な状況にも柔軟に対応し、変化にも素早く対応できるとしています。こうした考え方は、アジャイル開発などのチームによる開発手法に通ずるものがあります。実際に筆者が、アジャイルなどの概念を用いて説明している部分もあります。まさに、ソフトウェア開発の世界で模索され、培われてきた考え方や手法が、企業という組織に適用できる面がある、そういう読み方もできるでしょう。この点でも、一般の読者より、ITエンジニアのほうがより深い理解を得やすいのではないでしょうか。
実例が豊富
ビジネス書というと「根拠が必ずしも明確ではない主張が唐突に出てきたりするのが苦手」と感じる人は、techな人の中には少なくないのではないでしょうか(もちろん、それに該当しないビジネス書も世の中にはたくさんありますが)。本書は、いたるところに具体的な事例が挿入されており、その中には筆者が直接取材したものも少なくありません。「怪しい主張」を延々読まされるということはなく、その点でも心配はいりません。
構造化されていて読みやすい
本書の著者の1人は、ヒット作「ゲームストーミング──会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム」(オライリー・ジャパン刊、2011年)で知られる、Dave Grayさん。前著でもそうだったように、この本も、各章が非常にロジカルに構成されています。構造を優先して章立てを決めたからなのか、章によっては、記述がとても短くなっていたりします(全体的に、各章のボリュームは少ないほうです)。さらに目次には、各章のエッセンスが短くまとめられており(ePub版を除く)、ここをざっと読むだけでも、本書の要点を的確に把握することができるでしょう(立ち読みで済まそうなんて思わないで!)。
イベントで語り合う
本書の刊行記念セミナーが、7月17日(水)開催されます。著者の1人であるDave Grayさんの講演(録画、字幕付き)を、本書の監訳者である野村恭彦さん(株式会社フューチャーセッション代表取締役)が解説するセッションが行われるとのこと。
「コネクト」刊行記念セミナー
7月17日(水)19:00~21:15
新宿区四谷区民ホール(新宿区内藤町87番地)
※地下鉄丸ノ内線「新宿御苑前」駅、2番出口から徒歩5分
(了)
修正履歴:
2013年7月12日:「本書は、オライリー・ジャパンのサイトから、PDF版、ePub版を購入することもできます。」を「本書のPDF版、ePub版が、7月20日からオライリー・ジャパンのサイトで発売される予定。」に変更しました。
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