tech
漂白と発泡を使いこなす──コデラ総研 家庭部(6)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第6回目。今回のお題は「漂白と発泡を使いこなす」。正しく理解して使いこなすのは、まさにtechな感じですね。今回紹介されている方法は、一歩間違うと大変なことになるので、くれぐれもご注意ください。
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。
次回の「コデラ総研」は、2014年1月16日(木)に公開予定です。お楽しみに。(編集部)
文・写真:小寺 信良
年末の大掃除でわりとお父さん担当になりがちなのが、お風呂の掃除ではないだろうか。浴槽は毎日お風呂洗剤で洗うものの、洗い場のタイルの目地などは、普段目が行かないところで、たまに見ると結構汚れている。お風呂に入ったときに気がつけばいいのだが、あいにく入浴時はメガネを外してしまうから、よく見えないんである。
タイルの目地の汚れは主にカビだが、そんなところに養分はない。元々は頭や体を洗ったときの泡が長期間付着し、そこに含まれるタンパク質などを養分にカビが生えたものである。お風呂用洗剤を付けてタワシでゴシゴシやればまあまあ落ちるのだが、そもそもタワシでこするなどという体力を無駄に消耗する作業をやりたくないわけである。
こういう時には、うちではいつも台所用の塩素系漂白剤を使う。まな板の殺菌などで使うもので、泡が出るスプレー式のものがある。これをお昼頃、お風呂全体が乾いているときに、タイルの目地に沿ってスプレーしながらすばやく横方向に動かす。最初はなかなかうまく目標に当たらなかったりするだろうが、しばらくすると正確に撃てるようになるはずだ。
縦方向の目地は、スプレーすると溝に沿ってどんどん下に流れて行ってしまうので、あまり意味がない。横方向にスプレーした泡が、時間とともに縦の溝に沿って流れるので、横方向だけで十分だ。
そのまま1~2時間も放置しておけば、こすらずにカビは死滅し、目地は漂白されて、もうアホですかってぐらいまっ白になっている。あとはシャワーで軽くタイルを流しておくと、お風呂の時に塩素臭くなくて良好だ。
正しい知識で楽して掃除
これだけ簡単な方法なのに、なぜ一般には知られていないのか。それは、「まぜるな危険」だからである。
何と何を混ぜると危険なのかというと、塩素系漂白剤と酸性のものだ。これが混ざると有毒な塩素ガスを発生する。お風呂場などの水回りでは、トイレと一緒になったユニットバスもあり、「サンポール」などの塩酸系洗剤が置いてある可能性もある。これらが混ざると危険なので、あまりお風呂場では塩素系の洗剤は使われなくなり、変わって酸素系のものが多く使われているようだ。
酸性ということでは、お酢やクエン酸なども危ないので、混ざらないよう注意が必要だ。なぜお酢やクエン酸の話を書いたかというと、実はお風呂場にある鏡の曇り汚れは、水道水に溶けているミネラル類が汚れと一緒に固まったもので、アルカリ性だ。これを落とすのに、酸性のお酢やクエン酸を使う事があるからである。
うちには幸いお風呂場に鏡がないので使う事はないのだが、塩素系漂白剤を使っている時に誰かが知らずにお酢を使って鏡を掃除すると、大変なことになる。この点は、家族できちんと打ち合わせをして、厳重に注意していただきたい。
さてクエン酸の話が出たついでに、お風呂場の排水溝の掃除も手で触れずにやる方法をご紹介しておこう。使用するのは、重曹とクエン酸と水だ。重曹とクエン酸は、ドラッグストアで普通に買える。結構な量買っても、両方で1000円もしないだろう。
クエン酸は粉末なので、小さじ1杯をコップ1杯の水で溶かしておく。排水溝に重曹を多めにふりかけ、そこにクエン酸を溶いた水をかけると、反応して二酸化炭素が発生し、発泡する。この発泡力を使って、汚れを剥がすのである。
この重曹とクエン酸の組み合わせは、夏場はペットボトルの水に両方を小さじ1杯入れるだけで、簡単に炭酸水が作れるという使い道もある。このとき重曹は、掃除・洗濯用のではなく、食品用か医療用の炭酸水素ナトリウムのほうが純度が高いのでいいだろう。ただ、同時にナトリウムが発生するので、若干しょっぱい。
重曹の発泡は、ワイシャツの頑固な襟汚れなどにも使える。「酸素系」漂白剤と重曹を同じ量だけ取って水を加え、ペースト状の練り物にする。くれぐれも「塩素系」漂白剤と間違えないようにしていただきたい。間違うと死んじゃうからね。
これを襟汚れに塗っておき、ヤカンにお湯を沸かす。ヤカンの口から出た湯気に襟の部分を当てていくと、重曹が発泡しながら漂白していく。あとはいつも通り洗濯すれば、綺麗になっているはずである。
これはお掃除業界ではよく知られたテクニックなのだが、以前Twitterに書いたところ、そんなもの混ぜると危ないじゃないかと多量に反論が来た事がある。いくら説明しても、世の中には酸素と塩素、もっとわかりやすくいえばワイドハイターとキッチンハイターの区別も付かない人が大勢いるのだという事がわかった。
読者諸氏はさすがにそんなことはないと思うが、科学的根拠をしっかり理解して行動すれば、他の人よりも楽して掃除ができるのだ。では良いお年を!(了)
変更履歴:
2013年12月24日:タグがアドベントカレンダーのものになっていたのを修正しました。
SNSシェア