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洗濯の効率化、抜本的手段に出る──コデラ総研 家庭部(8)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第8回目。今回のお題は「洗濯の効率化、抜本的手段に出る」。
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
文・写真:小寺 信良
前回は散々洗濯の非効率性について書いておきながら、解決策まで届かなかったので、ズッコケた人も多かったようだ。すまんすまん。
前回の論点をまとめると、洗濯の非効率性は洗濯機以降の処理にあり、干す、たたむ、しまうの3工程をなんとかする必要がある、ということである。あんだけ書いといて要点こんだけなのかよというツッコミもあろうが、まあそういうことである。
まず「干す」の効率化だが、これはもう天日で乾かすのをやめて、乾燥機で乾かしてしまうという手段を考えた。実は使用中の洗濯機には、乾燥機能も付いている。だが半乾き程度にしかならないので、時間と電力の無駄だと思い、ずっと使っていなかった。改めてテスト的に使ってみたのだが、乾燥だけで3時間もかけているわりにはやっぱり半乾きにしかならず、結局天日に干さないと乾かないことを改めて確認できただけだった。
そこで色々調べてみると、いわゆる縦ドラム式洗濯機の乾燥機能というのは、だいたいどのメーカーもこの程度であることがわかった。一方斜めドラム式洗濯機の乾燥機能は、きちんと乾くという事がわかった。ただし、汚れ落ち能力は縦ドラム型に軍配を上げる人も多い。洗濯能力を取るか、乾燥能力を取るかで決断が別れるようだ。
別の手段として、乾燥機のみ増設、という方法も考えられる。調べてみると3万円台からあるようで、価格的には決断しやすい。ただ難点は、濡れた洗濯物を乾燥機に移し替える作業は発生するということだ。さらに後付け乾燥機は大抵洗濯機の上に専用スタンドで設置するものなので、うちの場合そのスタンドの脚部が入るスペースがなさそうだった。いや脱衣所のレイアウトを大きく変えれば入りそうだが、できれば現状のまますっぽり入るものが望ましい。
使用中の洗濯機は、購入しておよそ10年ほど経過していたが、特に壊れているわけでもなく、洗濯だけならば十分使える。だが洗濯の労働が家事負担の中で大半を占めるのは事実であるので、思い切って洗濯機丸ごと斜めドラム式のものに買い換えることにした。
ただ、斜めドラム式の洗濯乾燥機は、結構高い。高いものだと店頭で27万円ぐらい、平均すると16~17万円ぐらいだろうか。家事負担を減らす代償としてこの金額が出せるかどうか、微妙な線である。それなら自分が我慢する、という方も多い事だろう。
しかし探せば見つかるもので、すでに生産終了モデルだが、市場在庫で安いものを見つけた。パナソニックの「NA-VD110L」というモデルなら、設置工事費と今ある洗濯機の引き取りも含めて7万円程度で済むことがわかったので、購入することにした。
このモデルは「プチドラム」という、マンション向けの小型シリーズで、洗濯容量は少ないが、その代わり小型で低価格である。後継モデルは「NA-VD120L」になるようだ。
今までの苦労はなんだったんだ状態
このモデルはエントリー機なので、特にウリという機能はない。洗濯が終わってもただピーピーなるだけで、メロディを奏でたりもしない。洗濯開始から乾燥まで、だいたい3時間20分ぐらいかかるが、汚れ落ちもこれまでの洗濯機に比べて特に低いという事もなく、乾燥もきっちり、完全に乾く。
すべての洗濯を乾燥機まかせでいいのかに関しては、当初迷いもあった。天日に干せば、紫外線によって殺菌効果が得られる。一方乾燥機を使えば、一度も紫外線に晒すこともなくまた着るわけだから、健康に対してなんらかの影響が出るのではないかという懸念もあった。
だが実際にこれまで、もう1年ぐらい天日干しなしの乾燥機のみで乾かし続けているが、特に問題は出ていない。個人的には毎日を滞りなく家事運用するに、この程度の妥協は許せる範囲であると考える。どうしても天日で干さないとダメだと頑なに考える人は、そらーもう効率化は諦めて頑張るしかないだろう。
完全に乾く洗濯乾燥機の導入で、洗濯にかかる人的労力はおよそ40%ぐらいに圧縮できたと思う。洗濯物を一つ一つを物干しハンガーに吊るす作業、それらを持って2階のベランダへの移動、乾燥後の取り込み作業がなくなったわけである。オマエ特に工夫も無いじゃないかと思われるだろうが、僕も機材変更だけでここまで楽になるとは正直思ってなかった。うちは2人家族なので、そもそも洗濯物の量が少ないことも、省力化の効果が出やすかったかもしれない。
まだ使える洗濯機を捨ててまで買い換えるべきか、それは各家庭の価値判断や経済事情にもよるだろう。言うなれば干す作業を電力を使って肩代わりするわけだから、原発事故直後ならコンセンサスが得られなかった手法である。だが、昔ながらの家事労働からの解放を目指す当連載においては、合理的判断だと考える。
次回は残りのたたむ、しまうの効率化をご紹介する。(了)
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