あのチームのコラボ術
チームワークなくしてダンスは成り立たない──EXILE サポートダンサーを突き動かすチーム育成法
あの企業はどのような目標を定めて、チームで挑んでいるのだろう――。今回はあの大人気ダンス&ボーカルユニット「EXILE」のリーダーHIROさんが代表を務めるLDHのダンス・ボーカル・アクトスクールEXPGにお話を伺いました。
同スクールは、HIROさんがプロのエンタテイナーとして活動してきた中での“想い”をカタチにしたもの。そのため、生徒一人一人の夢や想いをカタチにすることに力を入れています。また、EXILEと同じ舞台に立つチャンスもあり、スクールに通いながらエンターテイメントの第一線を体感することもできるユニークなスクールです。
「夢を叶え、たくさんの人に夢を与えることで新たな夢を見つけられる。そんなことを教えたい」と語るのは、EXILEの振付師でもあり、ダンスコースでインストラクターを務めるPATOさん。今回はPATOさんに、チームのモチベーションを保つ方法や育て方などを伺いました。
表現者の技術とマインドを教える 3,600名の生徒が通うスクール
まず、スクールについて教えていただけますか?
椋田
当スクールでは、ダンスのほか、ボーカルや演技など“表現”に関わることを教えています。テクニックはもちろんですが、エンタテイナーとして「人を楽しませること」、そして「夢を持つこと」の大切さなど、マインドの部分を伝えることには特に力を入れていますね。
学校の数は何校ぐらいあるんですか?
椋田
日本には、札幌から沖縄まで全8校。海外は台北にも1校あります。生徒数は、台北を含めて全コースで3,600名弱。東京だけでも1,000名ほどの生徒がいます。
東京だけで1,000名とは凄いですね。やはり生徒は学生が多いんですか?
椋田
ダンスコースは、元々は小学生以下のKIDSクラスの生徒が多かったのですが、ダンスが義務教育に組み込まれたことが影響したのか最近は中学生の生徒も増えてきました。 あと、当スクール出身者のE-GirlsやGENERATIONSがデビューしてからは、高校生の生徒も増えてきたように感じます。 社会人も40代の方など、幅広い年齢の方に通っていただいていますね。
クラスは年齢や学年で分けているんですか?
椋田
ダンスコースはKIDSクラスと成人クラスを用意しており、KIDSクラスは3歳から小学生まで、成人クラスは中学生以上で分けています。さらにKIDSクラスは入門から応用クラス、成人クラスは入門から上級までレベルに応じてクラス分けをしています。中には、中学一年生と社会人が一緒というクラスもあります。
そこまで年齢差があると、社会人は恥ずかしくなっちゃいますね。
椋田
(笑)。表現をするという場で大切なのは年齢ではないんですよ。 大きな子が小さな子を見るように社会人が学生を見る。逆に学生に見てもらったり教わったり、全員が一つの目標に向けて同じ目線で高め合っていって欲しいなと。同時に“絆”も肌で感じて欲しいと考えています。
なるほど。「恥ずかしい」なんて思っている時間なんてなさそうですね。
椋田
そうなんです。 大切なのは「お客様に楽しんでもらうこと」。そのためには自分自身も楽しんでいかないといけない。「恥ずかしい」と思っていると、ダンスや演技など表現を通して自分も出せなくなってしまいますので、その気持ちは克服してもらいたいです。
発表の場はどのように設けているのですか?
椋田
保護者向けに参観日を設けて日々の成果を見せたり、経過を伝えたりする発表会を行っています。また、毎年EX SHOWというイベントも実施しています。これは “興行”として、実際にチケットを販売しお客様を入れています。 そのほかEXILEのコンサートや劇団EXILEなど、“プロ”と同じステージで表現できる場を幅広く用意しています。これは当スクールの特長と言えるかもしれません。
“エンタテイナー"を育てる LDHのチーム育成法とは
プロと同じ舞台に立てる、こんな夢を叶えやすい環境は確かに大きな特長ですね! でも、夢が叶えやすいとそれだけモチベーションを維持するのが難しくなりませんか?
椋田
確かにそうですね。 だからこそ、「夢を見つける」ということが重要になってくると思います。 「プロと一緒に踊りたい」と言う夢を持っていた生徒は、プロと実際に踊ってみても「これで終わり」とは思わないんですよ。新たな夢を見つけて、それに向かっていきます。当スクールには、このような勢いを持つ生徒が多いです。
夢を実現しながらまた新しい夢を見つけていくということですね。それが実現できるのはどうしてなんでしょうか?
椋田
エンタテイナーの最大の目標は「お客様に楽しんでもらうこと」。これにはゴールがありません。それをどうすれば達成できるか、どう表現すれば良いのかを考えながら、スタッフも生徒もこの目標に向かって進んでいるからだと思います。 提示された「目標」に対して、生徒はそこに向かう「道筋」を探す、この二つが明確だからこそ勢いが衰えないんでしょう。
実際に教える立場として、気を遣っている点、苦労している点はありますか?
椋田
基本的には、先ほどの目標はもちろん「夢に向かって努力し続けた経験は人生の中で必ず役に立つ」ことも伝えようと考えています。それをダンスや歌、演技を通して伝えていきたい。 ただ、言葉で伝えることも必要になります。こういう場合は、生徒一人一人の個性や性格を見て、言葉や表現を変えてより確実に伝わる方法を都度都度で考えながら伝えていますね。
そういえば、全国に8校あるとのことでしたが、地域によって生徒の個性なども変わってくるものですか?
椋田
性格や体格で差があります。 性格は、大阪校の生徒は自分を表現するのがとても上手です。札幌校の生徒は、協調性が高い。台北校は元気が良くフレンドリーな生徒が多いです。地域や環境によって、個性や得意分野も異なる。こういう部分をちゃんと見ていないと、せっかくの素質を伸ばせなくなってしまうんですよね。
それぞれの個性を尊重しながら一つの“チーム”としてまとめあげることで、フリが揃ったり、タイミングが合ったりするんですね。
椋田
実は…フリやタイミングって身体で覚えられるので、練習すれば誰でも出来るんです。 フリやタイミングを練習していく中で、それぞれが“チーム”を意識してお互い刺激し合いながら、技と気持ちを高めていくことが重要です。 それがお客様の目の前に立って成果として現れることで、メンバーもステージでどんどん個性や自分を出して行ける。それがダンスにおいての“チームワーク”だと思っています。
「個性や自分を出す」とチームから突出してしまいませんか?
椋田
確かに矛盾しているかもしれません(笑)。 でも、踊るということは最後までただ正しいフリを踊ることではなく、その中で表現すること。「お客様にこう楽しんでもらいたい」と考えながら自分を、チームの中で出して踊る。これが上手くいけば、10名で踊っていても、それぞれの個性が融合したりぶつかり合ったりして、お客様はまるで20名、30名が踊っているようにも感じられます。その分「楽しい」気持ちも倍増しますよね。
共通した“目標”を達成するために、若手スタッフの意見も積極的に取り入れる環境
スタッフのチームについて教えていただけますか?
椋田
HIROさん自身もチームワーク、人のつながりをとても大切に考える方です。僕たちインストラクターは元々ダンスやボーカルなど、プロの表現者として活動してきたので、HIROさんに近い“想い”を根っこで持っています。HIROさんとの距離が近く、意見も出しやすい環境があるので、経験や環境が異なるスタッフにも“想い”がすぐに伝わって、全員が同じ方向を向くまで時間がかからないんですよ。
新しい社員などが入ってきた際、HIROさんの“想い”はどのように伝えているんですか?
椋田
毎週、勉強会を実施しています。 マネージメント、制作、営業など、役員、各部署の部長クラスの人が新人や指名した社員に対して講義をしています。こういう場でHIROさんやスタッフの“想い”を理解してもらった上で、発想の生み出し方やアイデアの作り方なども伝えていっています。 ただ、常に新しいことにチャレンジしていきたいと思っている会社なので、今までのやり方が本当に最適なのかはわかりません。だから、とにかく自身の経験したことを素直に伝えるようにしています。
目標に対して、それぞれが自分の経験から出てきた考えを提案することで、より目標に対して最大限のアウトプットが出せるようにしているんですね。
椋田
その通りです。 「自分はこう思うよ」って話をしたら、相手から「こういうやり方もあるよ」って意見を出して貰えた。それに共感が出来たら自分に取り入れる。会社自体も柔軟にこうした意見を取り入れる環境があるので、一週間で方針が変わったということもあります(笑)。 「お客様を楽しませる」、これに少しでもプラスになると感じた場合、フットワーク軽く取り入れていく会社です。
最後に、今後の展望などをお聞かせいただけますか?
椋田
僕個人で言いますと、より多くの才能と出会いたい。そしてその子の夢を叶えてあげたいと思っています。 HIROさんは「たくさんの才能と出会うことで、アイデアやチャンスが生まれる」と考えています。僕も「人の夢を叶えることで多くの人に夢を与え、さらに新しい夢が生まれる」のではないのかなと、共感しています。生徒が成長するとともに、自分自身もどんどん成長して高めていきたい、そう考えています。 スクールとしては、チャンスがあればどんどん海外にも広げていきたいと考えています。
写真撮影 :橋本 直己
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