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楽してうまい味噌汁を作る──コデラ総研 家庭部(21)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第21回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「楽してうまい味噌汁を作る」。
文・写真:小寺 信良
一人暮らしを始めたときから、どういうわけか夕食に味噌汁は欠かせない存在となった。実家では味噌汁は朝のもので、夜は出たり出なかったりといった調子だったので、これは明らかに一人暮らしをし始めてからの習慣である。人が作った夕飯のときに出なくても特に文句は言わないが、少しさびしい。自分で作るときは、ご飯と味噌汁は必ずセットである。
どこでそういう習慣が生まれたのかなと記憶をたぐると、どうも会社で店屋物を取ったときの思い出が深く作用しているようだ。テレビの仕事をしていた当時、当然のように夜は徹夜だった。したがって昼食夕食夜食と、すべて会社で店屋物を取ることになる。当時赤坂界隈には24時間営業の喫茶店がいくつかあって、夜中の2時3時でも温かい食べ物を注文することができた。
定食だ丼物だといろいろあったが、味噌汁が付いてくると妙に嬉しかった。たとえそれがお湯を入れるインスタントものであっても、イソイソとポットのお湯の残量を確認したりしたものである。単に炭水化物をかき込むだけの食事に潤いを与えてくれる、ちょっとしたゼイタク。たかだか追加料金にして100円ぐらいのものなのだが、これがあるとなしでは全然違う。そんなことから、晩飯には何か汁物がないと落ち着かない体質が出来上がったものと思われる。
自分一人ならインスタントで済ませるところだが、子供を育てているとそういうわけにもいかないので、毎回いろんな具材で味噌汁を作っている。ダシひとつとっても、以前はダシの素をパッと入れて終わりだったのだが、なんだか物足りなくて、最近はいつも煮干しから取っている。普通は煮込む30分前から水につけておかなければならないので、仕込みに時間がかかるのだが、いい方法を見つけた。
ペットボトルに水を入れ、そこに煮干しを10尾ほどいれて、一晩冷蔵庫に寝かしておくのだ。これなら作るときにその中身を鍋にどばーっとあけて、すぐ調理が始められる。そのとき、明日の分のダシとして、またペットボトルに煮干しを仕込んでおく。この無限サイクルで、手間なくおいしい煮干しのダシが楽しめる。
味噌汁づくりに一工夫
以前、味付け時の温度管理の理由として浸透圧の話をしたが、味噌もまた同様である。具材が煮えたらいったん火を止め、微妙に温度を下げつつ味噌を溶く。味噌は高温で煮続けると風味が飛んでしまうので、味噌を溶いたあとは煮立たつ直前で火を止めておく。
人はそもそも、100度に沸騰したものは飲めない。人間の味覚は、体温±25度以上で温度による刺激を受けるのだそうである。したがって味噌汁は、62度~70度ぐらいが飲み頃と言える。温度が低いと、味噌の塩分だけを強く感じてしまい、味が濃く感じてしまうので、食べ始めの温度管理は重要だ。
味噌汁をよりおいしくいただくためには、「吸い口」にも工夫の余地がある。吸い口とは、香り付けのために味噌汁に入れる具材のことで、代表的なのは小ネギを刻んでパラッと入れるといったものだ。豚汁には七味、魚のアラにはショウガなど、昔から合うパターンがよく研究されている。日本人の知恵である。
うちではいつでも新鮮な小ネギを使えるよう、プランターで育てている。育て方は簡単で、一度スーパーで根っこ付きの小ネギを買ってくればよい。根元から5cm程度を残してネギの部分は使ってしまったあと、根っこを植えて水をやれば、勝手にどんどん大きくなる。
使うといっても毎回葉の1本2本、多くても5本程度なので、必要な分だけ取るようにすれば、限りなく生えてくる。花が咲いてしまうと新しい葉が生えなくなってしまうので、花は摘み取ってしまうほうがいいだろう。
たかが味噌汁、されど味噌汁。「いただきます」のあとにすする最初の一口が最高の味ならば、料理全体の満足度も上がる。皆さんも、味噌汁の味をもう1ステップアップしてみてはいかがだろうか。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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