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調理エリアの効率化──コデラ総研 家庭部(29)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第29回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「調理エリアの効率化」。
文・写真:小寺 信良
毎日料理をしていると、必然的にいつも使う調理道具というのは大体決まってくる。いつもの鍋、いつもの包丁、いつものお玉は、すぐ手が届くようにと、あまりきちんとしまい場所を作らず、常にそこら辺に出ている状態になる。
実際に皆さんの調理エリアというのはどれぐらいのスペースなのだろうか。一般的なキッチンならば、シンクとガスレンジの間、およそ50cm~60cmの隙間みたいな空間でまな板を使っているのではないだろうか。最近のカウンターキッチンではもっと広く取っているようだが、昔ながらの「流し台」が健在な家庭では、大体そんなものだろう。ここでは便宜的にこのスペースを、50cm空間と呼ぶことにする。
例えば4人家族だったとしても、この50cm空間で毎晩3品~4品を調理することになるわけだ。家事の中でもっとも手を抜きたくないのを「料理」と答える人が最多の中で、驚異的な凝縮率である。したがってこの空間を最大限効率化する必要がある。
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うちのキッチンは、目の前がかなり広く、タイル張りになっている。常々この空間というか、面積が無駄だと思っていたので、何か活用できないかと考えた。最初は粘着テープ式のフックなどを買ってきていくつか貼ってみたのだが、3つ4つ何かが掛けられる程度では埒があかない。しかも一度貼ってしまうと気軽に貼り替えもできないので、あーちょっと間が狭かったとかちょっと低かったとか、いろいろ不満も出てくる。
もう少しコマゴマ掛けられないか、と考えた結果、大きめのワイヤーネットをフックに引っ掛けて、そのネットにいろいろ吊るすことにした。ワイヤーネットやそれに引っ掛けるための金具は、どれもダイソーなどの100均ショップで手に入る。
調理器具の穴のサイズがまちまちなので、いろんなタイプのフックが混在する結果となったが、これなら自由に位置が変えられるし、思いのほか大量に器具が掛けられる。引き出しにしまっていたときは、よく乾かしてからしまわないと引き出しの中が何だかじっとりしてしまったが、洗い立ての器具もそのまま吊るしておけばすぐ乾く。
最大の効果は、すぐ使う器具が全部手を伸ばせば届く範囲に並ぶことだ。引き出しの中を漁ったりする必要もなく、作業が1歩圏内で済ませられる。しかも使用頻度が高いものは自然に手前になっていくので、ますます効率が上がる。
ワイヤーネットは4点で止めているが、重量がきれいに真下にかかるせいか、これまで一度も剥がれて落ちたことはない。もしタイル張りではない場合は、突っ張り棒を2本立てて、そこにタイラップでワイヤーネットをくくりつけるという技もある。
壁を収納に使うデメリットは、見た目がゴチャゴチャするところである。まるで住宅メーカーのカタログに載ってるような状態でキッチンを使いたいという、美観にこだわる人には向いていない方法論だ。
空間を瞬時に片付ける
50cm空間で調理していると、そこから大量に生ゴミが出る。必要な分を切り取った残り、すなわち野菜のヘタや芯、皮や魚の頭、骨など、調理が進むにつれて50cm空間やシンク内がゴミだらけになる。この生ゴミを効率的に捌いていかないと、調理スペースがどんどん狭くなってしまう。
そうなる一番の原因は、生ゴミ用のゴミ箱が近くにないからである。したがって一番単純な方法は、調理するときだけ生ゴミを捨てるゴミ箱を近くに持ってくることだ。うちではフタの開閉がしやすいように、バネ式で押せば開くフタが付いたものを採用している。以前は足で踏んで開けるタイプを使っていたが、機構が複雑なために案外壊れやすい。さらに壊れると全体を買い直しになるので、結果的に高いものに付く。バネ式のものはフタだけでも買えるので、壊れたらすぐ買い直しである。
コマゴマした野菜クズなどは、引き出し付きのまな板を購入することで解決した(写真1)。「カット&コレクト」という商品名で売られているもので、まな板の下に引き出しが付いている。切った野菜クズは全部この引き出しの中に落とし、パタンとしまって次の食材にとりかかる。
こうすることで、50cm空間が限りなく有効に利用できる。引き出しがいっぱいになったら、まとめて捨てる。さらにまな板としては横幅が短いので、2つにバラして食洗機の中にすっぽり入るというのも大きい。生肉や生魚を切ったあとのまな板の除菌はなかなか面倒なものだが、これなら手間いらずだ。
ただ材質がポリプロピレンなので、木のまな板よりも歯当たりが固い。そこが好みの分かれるところだろう。さらに中が空洞なので、みじん切りなどするとかなりうるさい。
だが、キッチンが狭いところでは絶大な威力を発揮する。現在1年半ほど使っているが、表面も思ったより汚れない。2000円ぐらいなので、場所の効率化を考えれば、それほど高い買い物でもないだろう。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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