tech
ゴミは素早く「排泄」する──コデラ総研 家庭部(30)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第30回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ゴミは素早く『排泄』する」。
文:小寺 信良
写真:風穴 江
前回はキッチンの50cm空間の効率化について述べたが、調理時のゴミは瞬時にゴミ箱行きがもっとも効率がいい。我が家では三角コーナーも使わないし、排水溝と一体化した大型ゴミ受けにもゴミを流さない。ゴミが出た瞬間、逐一ゴミ箱行きである。
面倒じゃないかと思われるかもしれないが、例えばシンク内に生ゴミが溜まっていくと、もう20〜30分経った時点で触りたくなくなってくる。その程度の時間で腐るはずもないのだが、他の野菜の切りくずとペッタリくっついたり、ビニールゴミと一緒に絡まってビショビショになっていると、見た目にも気持ちが悪い。
一方、切ったばかりの野菜の切れっ端や皮は、さっきまで野菜の一部だったわけであり、素手で触っていた部分なので、そのまま手ですくってサッとゴミ箱に捨てられる。衛生の問題と言うよりは、気持ちの問題である。
シンク内に生ゴミをまったく捨てないと、シンクの掃除が格段に楽になる。以前は食器用水切りカゴ下の隠れた部分が、気がつくと黒カビが生えてたりして掃除も難儀したものだ。だが今は食洗機の排水がその部分をなめながらシンク内に回るよう、パイプの角度を調整したため、カビも生えなくなった。洗剤入りの熱湯が定期的に排出されれば、そらカビも生えないだろう。
ゴミと罪
ではそのゴミ箱のゴミはどうするか。現在ゴミを捨てる場合には、自治体によって様々な分別ルールがある。一番細かく分類しているのは徳島県上勝町で、34に分類するという。厳しいところでは、分別ができていないゴミ袋は回収しないといった強硬なところもあるようだ。
厳しすぎるゴミの分別に、ストレスを感じる人も多いことだろう。とはいえ、自治体で決められたルールを勝手に破るわけにもいかないため、いかにスムーズにそれに馴染むかが課題となってくる。
我が家ではキッチンにゴミ箱が5つある。燃えるゴミ用、ビン用、缶用、ペットボトル用、燃えないゴミ用だ。これらのゴミはだいたい食材に関連したものなので、キッチンに置いておくのが合理的である。ビン缶は洗うまではいかないが、中身を綺麗にすすいでから捨てる。そうすることで、次の回収日までの腐敗を防ぐ。
ダンボールや書籍といった大物リサイクル品は、玄関の土間に紐で縛って置いておく。燃えるゴミは週に2度回収日があるが、そのほかは週に1回しかないので、事前にまとめておかないと出すチャンスを失ってしまう。
ゴミ袋は、40Lサイズなので、週2回の頻度だといっぱいにならないこともある。だがそこで1回捨てるのを見送ると、次回までには絶対に腐敗するので、量が少なくても必ず出すようにしている。
筆者の地域では、燃えるゴミの収集時間が午前11時ごろ、場合によっては12時過ぎまで回収されないこともあるので、比較的捨てるチャンスには恵まれているほうである。それでも出せなかった場合は、宅外にある大きなゴミ箱に移しておく。とりあえず家の中から出してしまうのだ。
家庭内から早々にゴミを追い出すということは、ある意味生活における排泄行為と見なすことができる。ゴミは時間が経てば腐るし、匂いも出る。空気が澱めば気分も沈む。ゴミをすぐに宅外に出すことで、我が家では夏でもコバエなど出てきたりしないし、ゴキブリも見かけない。
その一方で、特定のゴミが決まった曜日、決まった時間以外に出せないのは、別の問題も孕む。例えば定期的に夜勤があり、その時間に家に居られない人は、ゴミを捨てられるチャンスが半減する。医師や看護師、工事関係者、タクシードライバー、コンビニ勤務などだ。我々はこういう人たちのおかげで、24時間社会サービスが受けられている。
これらの人々の家庭ゴミ排出問題は、あまり真剣に議論されていない。せいぜい備え付けのゴミ捨て場があるような集合マンションに引っ越すという程度の解決策しかないのが、現状ではないだろうか。
現在のゴミの分別や収集ルールは、1980年代半ばに整備された。一般に大型焼却炉の寿命は20〜30年であり、当時とは代替わりしている。ゴミの処分は、自治体の腕の見せ所でもある。もうそろそろ、議論も次のフェーズに入ってもいい頃であろう。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
SNSシェア