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そろそろ終盤、加湿器のお手入れ──コデラ総研 家庭部(38)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第38回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「そろそろ終盤、加湿器のお手入れ」。
文・写真:小寺 信良
まだ梅雨前だというのに、関東地方はここのところすっきりしない天気が続いている。春の長雨は昔から季語にもなり、菜の花が咲くころであることから、菜種梅雨(なたねづゆ)などと呼ばれているそうだ。
冬の間は暖房による乾燥を防ぐため、多くの家庭では加湿器を使っていたのではないかと思うが、さすがにこう雨が続けば湿度は十分である。そろそろ加湿器の役目も終わりのころかと思う。
国内で売られている加湿器はだいたいスチーム式か、超音波式に分けられる。スチーム式はお湯を沸かすタイプ、超音波式は水を振動で破砕し、それをファンで噴き出すタイプだ。超音波式は一時期は安いということで人気があったが、汚れた水や細菌などもそのまま空中に撒いてしまうので、近ごろは敬遠されているようである。
いずれの方式にしても、水道水を使用する限り、加湿器の汚れは避けられない。ヒーター部や気化部に白くバリバリとしたものがこびりついたのをよく見かけることと思う。これは水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムといったミネラル分が、結晶化して貼り付いたものだ。加湿器の材質によっては簡単に剥がれるものもあるだろうが、複雑な形状のところやフィルタのような柔らかいところにくっついたものは、洗ったり擦ったりしただけでは簡単に落ちない。
そのまま放置しておくとますます固まって取れなくなるので、来年また気持ちよく使うためにも、これをきれいにしてから、収納しよう。
これらのミネラル分はアルカリ性なので、酸性の溶液で中和すれば溶ける。ただ酸性とはいっても、加湿器から出る水分は人が吸ってしまうので、酸性の強力な洗剤を使うのは避けたいところだ。そこで人体に優しい酸性溶液として、クエン酸がよく使われる。
クエン酸は酸味を加えるための食品添加物として長く使用されている、安全性が確認された物質だ。薬局で500gあたり400円程度で売られている。掃除用として100均でも売られているが、そんなに高いものでもないので、国産の食品用のものを買ったほうが安心できるだろう。
アルカリ性には酸性で
まずクエン酸の水溶液を作る必要がある。濃度については諸説あるが、一般的には3リットルの水またはぬるま湯に対して20gという記述が多いようだ。メーカーの説明書に記載のお手入れ法には、2リットルにつき10gとしているところもある。だいたい5%~7%程度の濃度が目安ということだろう。
使用方法は、加湿器のどの部分を掃除するかによる。フィルタのように形状が複雑で柔らかいものは、取り外してクエン酸水溶液に30分~2時間ぐらい浸けておく。そのあと流水でよくすすぎ、水気を切れば完了だ。
一方、本体の内部を洗浄するには、スチーム式か超音波式かで微妙に方法が違う。スチーム式の場合は、クエン酸水溶液をタンクに入れ、1時間程度運転する。その後、水溶液を全部出し、中をきれいにすすいで乾燥させる。
超音波式の場合は、あらかじめ本体内の水を全部抜いておき、タンク内にクエン酸水溶液を入れる。そのまま運転せずに一晩置く。超音波式で運転してしまうと、クエン酸まで空中にばらまくことになる。まあばらまいても害は少ないとは思うが、クッションやシーツが何だか酸っぱい感じになるのはイヤだろう。
翌日水溶液を捨てて、中の汚れを除菌ウエットティッシュなどを使って拭き取っていく。その後、水気を切ってきれいに乾燥させ、収納だ。1回で落ちなかった場合は、もう1度繰り返す。
ストーブなどで暖を取っている場合、シンプルにヤカンに水を入れて沸騰させ、加湿していた方もあるかもしれない。ヤカンも水道水を何度も蒸発させていると、加湿器と同じように底に白くカルシウムなどが固着して、擦っても取れない状態になっていく。
これもクエン酸水溶液を入れて沸騰させ、冷ましながら1時間程度放置する。このあと、タワシやスポンジなどで擦り洗いすれば、簡単に取れる。
注意点としては、クエン酸水溶液は塩素系の漂白剤や洗剤などと混ざらないようにすることだ。この組み合わせはいわゆる「混ぜるな危険」というやつで、人体に有害な塩素ガスが発生する。わざわざ漂白剤と混ぜるようなことはないと思うが、水溶液を捨てる場所がキッチンハイターやカビキラーなどで掃除中だったりすると危険だ。
このあたりは家族でよくコミュニケーションを取りながら、お掃除に邁進していただきたい。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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