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アイロン要らずは本当か? 衣類スチーマーを試す──コデラ総研 家庭部(69)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第69回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「アイロン要らずは本当か? 衣類スチーマーを試す」。
文・写真:小寺 信良
この季節になると、アイロンがけがしんどくなってくる。シャツに1枚アイロンをあてただけで汗がポタポタ落ちてきてしまい、せっかく洗濯したシャツにさっそく汗染みができるのはいただけない。とはいえ、綿などシワになりやすいものは、やはりアイロンをあてればパリッとするので気持ちはいい。だが、中にはアイロンがあてづらい衣類もあって、そこが悩みどころである。
うちには娘のお気に入りの綿のワンピースがあるのだが、ウエストのところにギャザーがあるので、そのまま平たくアイロンをあてることができず、いつも困っていた。そこでママ友の間で評判がいい、衣類スチーマーを試してみることにした。
衣類スチーマーはアイロンに似ているが、平たい面に押しつけてシワを伸ばすものではない。衣類をハンガーにかけておいて、その状態でスチームをあて、シワを伸ばすというものだ。従って立体的なプリーツのある服のシワ伸ばしには最適だという。
とは言うものの、実はうちのパナソニック製コードレスアイロンにも、衣類スチーマー的な機能がある。それを試してみたことがあったが、水は十分あるのに1分ほどで蒸気が息切れしてしまった。温度が下がってしまったのだろう。それが専用機になるとどれぐらい違いが出るものか、興味もあったわけである。
衣類スチーマーはパナソニック、ツインバード、ティファールといった家電メーカーから多種多様なモデルが発売されている。今回は新モデルが出て値段が下がっていた旧モデル、パナソニック「NI-FS310」を購入してみた(写真1)。
モノとしては、旅行用の小型アイロンといったサイズ感だが、縦方向に長い。大量のスチームが出るので、それで火傷しないよう、スチーム孔から距離を持たせてあるのだろう。前後が対称で、アイロンのようにどちらか一方の先が尖っていない。またアイロン面も平らではなく、ラウンドしているのも面白い。構造的にはアイロンに近いものの、似て非なるものといった感じだ。
スチームの吹き出し孔は縦に1列に並んでおり、そこもアイロンとは違う。広さよりも1ポイント集中を目的としているようだ(写真2)。
小型ながら大量のスチーム
使用方法としては、スチームアイロンと同じく内部のタンクに水を入れて電源を入れる。すると30秒程度で使用可能になる。スチームの噴射は、グリップ部にあるトリガーボタンを押す。押している間だけ、グッ、グッ、という振動と共にスチームが出るという仕組みだ。
スチームの量だが、さすが専用機だけあってかなり多い。また途中で息切れすることなく、4分程度は十分に出続ける。さすがは電源直結、コードレスアイロンに付いている同機能とは比較にならない。ただ一度に使用できる衣服量としては、1回の注水につき1枚か、手早くやれば2枚程度である。
シワ伸ばしは、衣類をハンガーにかけて、引っぱりながらゆっくりゆっくりスチーマーを動かしていく。衣類乾燥機による深い乾燥ジワはさすがに取れないが、ちょっとクシャッとなっている程度なら十分効果はある。アイロンのようにパリッとするわけではなく、自然な洗い上がりといった感じに仕上がるのが特徴だ。
注意点としては、蒸気は意外に衣類の向こう側まで通り抜けているので、衣類を引っぱっている手を火傷しがちということだ。世の中には「アイロンミトン」という、アイロン専用のミトンがある。それを併用すれば、通常のスチームアイロン的な仕上げもできるだろう。一度料理用のミトンで試してみたら、蒸気がミトンの中まで通ってきて、火傷しそうになったことがある。やはり専用品は必須だ。
意外に便利だったのが、制服である。中学校の制服はブレザーなのだが、なかなか家庭で簡単に洗えるものでもない。梅雨時には汗と雨に濡れた生乾きの匂いがしたが、スチームをあてて部屋干ししておいたところ、綺麗に匂いが消えた。洗わないといけないほど汚れてはいないものの、匂いを取りたいといった際にも使えるわけだ。焼き肉帰りのスーツやスラックスにも使えるだろう。
ひとつ難点をあげるならば、スチーマーを置く台がゆるゆるで、ちっともフィット感がないことである。特に使い終わって電源ケーブルも畳んで収納しているときの安定感の無さは致命的だ(写真3)。歴史の浅い製品でもないはずだが、ここだけまったく改良の跡が見られないのは不思議である。
しかし価格的にも6000円台で買えるし、アイロン台を出すまでもなく気軽に使えるので、日頃の身だしなみも1ランクアップするはずだ。ないとダメ、というものではないが、細かいところで暮らしぶりが向上するアイテムと言える。(つづく)
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