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模様替えの効能──コデラ総研 家庭部(74)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第74回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「模様替えの効能」。
文・写真:小寺 信良
モノの置き場所は、本来は毎日の生活サイクルの中で最適化されていくものである。ただ子供の成長に合わせて必要な食器や衣服も変わっていくはずなので、この最適化を継続し続けなければならない。だがあまりにも今の配置に慣れ過ぎてしまうと、つい生活のほうをモノの配置に合わせ込んでしまう。生活に停滞感が生まれてくるのは、主にこうした理由だ。
実際に筆者宅のダイニングは、こういう状態であった。娘が中学生になって、平日私服が必要でなくなったり、飲み物のコップが大きく実用的なものになったりといった変化がありつつも、小学校生活に最適化されたままになっていたのだ。それなりに片付いてはいるのだが、使わないものもぎゅうぎゅうに押し込まれている。こうした状態はまさに、「生活しているのに部屋が死んでいる」状態だと言える。
これは他人が見てもそう感じるらしい。よく家に遊びに来る友人も、部屋から停滞感を感じると言う。言われてみればその通りで、もう5年も模様替えなどしてなかったのを思い出した。模様替えが好きな人からすれば、信じられない年数だろう。
そこで友人に手伝って貰い、ダイニングを大幅に模様替えすることにした。とは言っても新たに何か買うのではなく、単純に不要なものを処分し、家具の配置を変えるだけである。
ゴミ袋3つ分の不要品を処分したおかげで、引き出しが壊れていた電話台や、ガタついていた収納棚ともおさらばできた。また2階で余っていたアルミラックを持ってきて、収納スペースはそれで統一した。棚の高さが自由に調整できるので、鍋類を効率良く収納することができる。しかも金網状になっているため、深い影ができない。
壁際を占領していた収納物がすっきり整理できたので、スペースの都合で短辺を壁にくっつけて置いていたダイニングテーブルは、真ん中に引っ張り出しても十分なスペースが確保できるようになった。
部屋が再生する
模様替えの効果は、絶大であった。ダイニングに入っての第一印象が全然違う。これまで鬱蒼とモノが積まれていた澱んだような空間が、引っ越してきた当時のような新鮮さを取り戻した。モノが減ったので広くなっただけでなく、窓を塞ぐものも減ったため、部屋全体が明るくなった。娘も一目見て、新しいレイアウトが気に入ったようだ。
実際に使ってみると、ガスレンジ下の扉がつっかえて開かないなどの問題があり、多少の配置の手直しは必要だったが、バラバラに再構築したわけではなく、ブロックごとに位置変えしただけなので、アレはどこ行ったという混乱はなかった。
必要だろうと空けていたスペースが、実際にはデッドスペースになっていたことも分かった。うちのダイニングには床下収納スペースがあるのだが、これまではその扉がいつでも開けられるよう、机や椅子がその上に乗らないような配置にしていた。だが結局のところ、床下スペースには頻繁に使うものなど入れてないのだ。開けたいときは、机と椅子を少しずらせばいい。
また部屋のアクセントにもなっている出窓は、これまで貰ったはいいがどこに飾ったらいいのかよく分からないものを仕方なく置くスペースでしかなかった。ここも自分のセンスに合わないものは全部捨てた。そのスペースにベランダにあった観葉植物を持ってきて緑を大幅に増やしたため、自分で言うのも変だが、何だかオシャレな感じになった。
部屋の正面には37インチのテレビが置いてあるが、これもいらないかなと思い始めている。と言うのも、食事時に限らず僕も娘もほとんどテレビを見ないのだ。見たいものはほとんどネットサービスにあるので、娘はタブレットを使い、僕は仕事部屋の4KテレビでAmazonのFireTVを使って見ている。ダイニングのレイアウトを、テレビ中心の考え方から解放すれば、かなり自由度が高まるはずだ。
本格的な模様替えは久しぶりだったが、この調子でほかの部屋もどんどんレイアウトを変えていきたいと思っている。日々の仕事や家事に追われて、なかなか部屋の使い方そのものを見直す時間はないかもしれないが、家族集まってエイヤッと変えてしまうのも楽しいはずである。
気分がリフレッシュされれば、生活上の細かいゴタゴタも気にならなくなる。家庭にも新鮮さは必要なのだ。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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