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PTA役員選出の怪──コデラ総研 家庭部(83)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第83回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「PTA役員選出の怪」。
文:小寺 信良
写真:風穴 江(tech@サイボウズ式)
新年が始まってまだ1カ月半ぐらいだが、学校にとってはもう年度末まで1カ月半を切ったことになる。子供はこれから入試や学年末試験で大変な時期を迎えるが、保護者はPTAの役員改選などで大変になる時期でもある。
全国的な傾向なのかは分からないが、小学校時代と違って中学校では、本部役員を2、3年間やるケースが多いようだ。中学校ではそれほどPTA主催の行事が多くないことや、せいぜい長く務めても3年で終わることなどが理由ではないかと思う。
ただ逆に考えれば、最長でも3年しか務められないために、本部役員もどんどん入れ替わっていかざるを得ないということである。筆者の娘が通う中学校のPTA本部では、現3年生の保護者が多いため、かなりの人数を新役員として募集しなければならない。
新しく本部役員になってくれる人を探す委員というのが、あらかじめ決められている。推薦委員会とか、選挙管理委員会とかいう名目になっているはずだ。
名前の通り、本来ならばそれらの委員が推薦者を擁して選挙活動を行ない、投票によって推薦者が役員となるのが筋なのだろう。だが実際には引き受けても良いという人がいたら、他に対抗があるわけでもなく事実上内定してしまうので、あとは総会で拍手にて承認投票が行なわれるだけである。
筆者は今年度、広報部長を引き受けているわけだが、筆者のところにも来年度の本部役員の打診があちこちからくる。なぜあちこちからくるかといえば、複数の選挙管理委員が必死に周りの人に声をかけて、誰か引き受けてくれそうな人を探すので、ターゲットになりそうな人は必然的にダブるからである。
選挙管理委員会は、次年度の委員が決まらないといつまでも解散できない。多くのPTA総会は5月の連休明けぐらいに設定されていると思うが、年度内に内定が決まらなければ、新年度になってもずっと新役員を探す役割が終わらないという悲惨なことになる。ヘタをすれば、もう子供は卒業しているのに、保護者だけ足繁く学校に通う羽目になりかねないので、早めに見つけようとみんな必死になるわけだ。
後で人づてに聴いた話だが、筆者に役員打診が集中する理由がもうひとつあった。うちの中学校は3つの小学校の卒業生が通ってきているが、次年度の本部役員には娘が通っていた小学校の保護者が少ないので、バランスが悪いんだそうである。
だが、それが何だというのか。公立校の場合、居住地の都合で通う小学校が決まっただけで、別に保護者が子供の出身小学校を代表しているわけではない。今は同じ中学校に子供を通わせる保護者でしかないのに、子供の出身小学校で何らかの区分がされ続けるのは、おかしい。
このようなさして根拠のない、誰かが気まぐれで言いだしたような話が、さも明確なルールであるかのように一人歩きしている状況は、自分で自分を縛るだけで、いいことはひとつもない。
変わる役員選出
一方で小学校の子供会の役員選出会も、先週の土曜日に行なわれた。筆者が会長だったのはもう2期前ということになるが、そのときに抽選しかあり得なかった役員選出会の方法を変えた。
以前もご紹介したことがあると思うが、選出会にて子供会の活動意義や活動内容、各役員ごとの仕事内容や忙しさの度合いを詳しく説明したのち、グループで立候補を募るというやり方である。各役職は2名もしくは3名なので、知り合い同士で1つの役職を引き受けてもらったほうが、効率がいい。
加えて、抽選方式のデメリットも伝える。すなわち、自分に向いてない役職でも、抽選で当たったらやらなければならないという点だ。それならば、自分ができそうな役職をすすんで引き受けてもらったほうが、楽にやれるはずである。
この方法を実践して2年目の役員選出は、役員10名のうち全員が立候補で決定した。1年目は10人中9名が立候補だったので、明らかに効果がある。
誰もボランティア組織の役員になりたがらないのは、その組織の運営や構造が不透明だからだ。PTAや子供会といった古い組織になればなるほど、前年と同じことを繰り返しやってるだけで、それにどういう意義があるのか、役員自身も分かっていないケースが多い。
だからどういう仕事内容なのか、きちんと説明できない。内容もよく分からず、黙って1年我慢して働けと言われても、そんな仕事は引き受けられないだろう。しかもノーギャラなのである。
ノーギャラだからこそ、自分の仕事に意義が欲しい。それは人間にとって当たり前の欲求である。役員を頼むのなら、まずはその欲求を満たしてからの話だろう。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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