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テレビを壁掛けにしたらステキ空間誕生──コデラ総研 家庭部(84)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第84回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「テレビを壁掛けにしたらステキ空間誕生」。
文・写真:小寺 信良
テレビの薄型化が始まったのは2003年の地上デジタル放送スタートの少し前辺りだと思う。このときからテレビの置き場所は大きく変わった。
従来のブラウン管型テレビは奥行きがあったため、部屋の角に設置するのがセオリーだった。それが薄型になったことで、壁の中央に進出した。
だが実際には、脚部まで入れればまだまだ奥行きはそれなりにある。しかし「薄い」というイメージが先行し、そういう位置に変わっていった結果、日本のリビングのレイアウトは、大きく変化したわけである。
薄型テレビの登場は、同時に「壁掛け」の夢をもたらした。実際にほとんどのテレビは、壁掛けに対応できる構造になっている。だが、20kg以上あるものを壁に取り付けるためには、壁に穴を空けて固定用器具を取り付けなければならない。
持ち家なら、という話もあるが、自分で買った家ならなおさら壁に穴など空けたくないだろう。もちろん賃貸住宅は言うまでもない。そんなわけでテレビは、壁掛けの可能性は秘めつつも、実際にはほとんど実行されていなかった。
ところが、である。何気なくネットのニュースを見ていたときに、テンポラリ的に柱を立てられる道具というのを見つけた。壁に穴は空けられないが、自分で柱を立ててしまえば、それにはいくらでも穴が空けられる。さっそく導入してみることにした。
簡単設置で効果絶大
WAKAIの「ディアウォール」は、Amazonで800円程度で売られている商品だ(写真1)。原理的には「突っ張り棒」と同じで、片側はただの台座だが、もう片方にはバネが仕込まれている。柱の両端にこれを取り付けることで、天井と床の間にはめ込めば、臨時の柱が立てられるというわけである(写真2)。
使える柱は、「ツーバイフォー」と呼ばれる規格に適合するものだ。元々はアメリカ発祥の建築工法だが、断面が2インチ×4インチの柱を使う。ホームセンターでは普通に売られている規格品だ。
ダイニングの床から天井までの高さは240cmだったので、244cmの柱を2本購入した。今回は自分の車に積んで持ち帰ったが、ホームセンターでは1時間程度なら無料で軽トラックを貸してくれるところもある。購入前に問い合わせてみるといいだろう。
取り付けるテレビは、2007年発売の東芝REGZA「37Z3500」である。重量はおよそ23kg。脚部を外せば22kg程度だが、古い製品だけにかなり重い。ディアウォール自体の耐荷重については、ネットでもいろいろ実用例を元に検証もされているようだが、これ自体はただの柱なので、耐荷重という考え方ができない。耐荷重があるのは、棚や壁掛け金具のほうである。
さてテレビもこれぐらい昔の製品になると、純正の取り付け金具を購入するのは難しい。だがそこは良くしたもので、最近では汎用の取り付け金具というものが4000〜5000円程度で売られているのだ。さっそくこれも購入して、壁掛けにしてみた結果がこれである(写真3)。
従来ここは何にも使い道のない壁で、手前にファンヒーターを置いたり掃除道具を立てかけておいたりする程度のことだった。この無駄な面にテレビが来たことで、部屋の視線の流れが変わる。要するに部屋として使う向きが変わるのだ。今はまだテレビを取り付けただけだが、上に棚などを付ければもう少し機能的な空間に生まれ変わるだろう。
一方でこれまでテレビを設置していた出窓部分が片付いたので、植物などいろいろ置いて、リラックスできるスペースにした(写真4)。この部分はこれまでテレビの画面で塞がれていたので、出窓としては機能していなかった。従って部屋としては、のっぺりしたイメージだったのだ。
出窓の凹みを空間としてそのままにしておくことで、部屋に立体感が出た。部屋にあるものの総量は変わらないのだが、空間の使い方に余裕があることで、全体的に広く感じる。
実際に柱を立ててテレビを載せ替えるだけなら、小一時間の作業だった。そのあと出窓を掃除したり配線をやり直したりというほうが、時間がかかる。
これまでうちでは無理と思っていたテレビの壁掛け化が、トータル1万円以下の出費で簡単にできるとは驚きである。部屋が狭いとお嘆きの方は、ぜひトライしてみることをお勧めしたい。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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