【子ども×IT:見てある記】tech@サイボウズ式では、「子ども×IT」をテーマの1つに掲げ、未来を担う子どもたちとITとの関係をさまざまな角度から取り上げていこうと考えています。今回は、小中学生を対象にした「富士通パソコン組み立て教室」のレポートをお届けします。
8月10日(土)、小学5年生~中学3年生を対象にした「2013年 富士通パソコン組み立て教室」(主催:富士通株式会社、富士通アイソテック株式会社)にお邪魔してきました。会場は、福島県伊達市にある、富士通のデスクトップパソコンやPCサーバを製造している富士通アイソテックの工場内施設で、パソコン組み立て教室の後には、工場見学も行われました。
終始アットホームな雰囲気の中で行われた「富士通 パソコン組み立て教室」。
今年で10回目(=10年目)を数えるこのイベントは、もともと、工場がある地元福島への地域貢献という趣旨で始めたものだそうです。そのためか、製品プロモーションや販促活動のイベントでありがちな「押しつけ感」はまったくなく、子どもたちがものづくりの実際を、アットホームな雰囲気の中で体験できる貴重な機会になっていると感じました。
「富士通パソコン組み立て教室」は、例年、ここ福島と島根の2カ所で行われていて、工場の役割に合わせて、島根ではノートパソコン、福島ではデスクトップパソコンを、それぞれ組み立てます。福島会場の今年の参加者は13組と、昨年よりも減少したそうですが、これは昨今のデスクトップパソコン離れが影響しているのかもしれません。
今回の「パソコン組み立て教室」で組み立てたのは、ディスプレイ一体型パソコン「ESPRIMO WF2/J」。23型ワイド液晶ディスプレイに、2TBハードディスク、4GBメモリ、Core i7プロセッサを搭載したハイエンドモデルで、市販価格を考えると参加費はかなりお得な内容となっています。
「組み立て」と言っても、フルスクラッチで行うのはさすがに厳しいので、ある程度のところまで組み上げられたパソコンが用意され、参加した子どもたちが、ディスプレイの裏側に各種部品を取り付けていく過程を体験する、という形で行われました。
以下、写真で紹介していきます。
「パソコン組み立て教室」の会場は、福島県伊達市にある富士通アイソテック株式会社。福島駅から阿武隈急行線で20分の「保原」が最寄り駅で、駅のホームから富士通の看板が見えたのですぐに分かりました。
省エネ対策として工場の建物の壁面が緑で覆われていました。高さがある工場の建物に合わせて、ツルが良く伸びるという「西洋朝顔」を選んで植えているとのこと。こうした細かい工夫や配慮が随所に見られました。
車で到着した参加者を出迎えるスタッフ。そろいの赤い法被を羽織り、参加者の1人1人にていねいに声をかける姿が印象的でした。写真奥に見える会場建物の前には「伊達モデル」の赤いノボリが立てられていました。
「パソコン組み立て教室」の作業で用いる部品は、すべてこの黒い箱にまとめられていました。部品の1つ1つに、作業手順に沿った番号が振られているのは、間違ったり迷ったりしないようにという配慮から。
会場は、工場内のレクリエーション施設にある体育館が使われました。今回参加した子どもは小学校5年生から中学3年生までの計13人。たまたま、それぞれの年代が3人ぐらいずつと、偏りがない構成となっていました。
この工場で実際にパソコン製造に携わっているという8人の「プロ」が、組み立て教室のサポート役として参加。参加者に「少し曲がっているようなので、まっすぐにしてみましょう」などと、優しく的確にアドバイス。
ディスプレイ上部にある、ビデオチャット用のカメラモジュールを取り付けているところ。小さい部品に小さいコネクタを差し込むので難しいかと思いきや、案外、子どもたちのほうがさっと上手にこなしていました。
ディスプレイ一体型パソコンの本体に部品を組み付ける作業は、レバーひとつで自在に回転、固定ができる作業台の上で行います。この作業台は、実際の製造工程でも使われているものだそうです。
メモリモジュールをスロットに取り付ける作業。「金色の端子部分には触れないようにしましょう」と言われ、おっかなびっくりで苦戦する子どもも。「思い切って押し込もう」というアドバイスで何とか全員完遂。
ハードディスクドライブの作業は、専用の「置き台」の上で行います。参加者は、用意された作業用エプロン、手袋を装着するなど、工場で実際に行われているものに近い形で作業を体験することができました。
ハードディスクドライブのケーブルは「赤」、Blu-rayドライブのケーブルは「青」と色分けされており、それぞれ同じ色のコネクタに接続。こうした「細かい工夫」は、実際に作業してみるとよく分かります。
ハードディスクドライブを固定するとともに、ディスプレイ台とのヒンジにもなる重要な部品。4カ所のねじ止めは、たすき掛けの順番で締めていきます。ネジ締めは「止まったところから、さらに45度」がポイント。
おそらく今回のパソコン組み立て教室で最も難しかったと思われるのが、TVチューナーカードにアンテナ線を接続する作業。5円玉の穴よりも小さいと思われるコネクタをボード上のピンにはめ込む細かい作業でした。
ここまで作業台に「寝かせて」いたパソコン本体を起こす作業は、重量もあって危ないので「プロ」にお任せ。こんなちょっとした作業でも「プロ」の手際の良さ、迷いのない手さばきは、一目で違いが分かるほど。
前半プログラムが終わった後、参加者全員で記念写真を撮りました。福島県の復興シンボルキャラクター「キビタン」と「キビママ」(福島県の鳥、キビタキがモチーフ)が応援にかけつけてくれました。
パソコン組み立て作業の後は、工場見学へ。工場内にある精密加工センターでは、制御用ソフトウェアでNCデータを作成するデモを体験。彫る深さなどを細かく数値で指定すると、実際の動作をシミュレーションして確認。
制御ソフトウェアで作成したNCデータを使って、ネームプレートに名前を彫るところ間近で見学。「水をかけながら彫ってるのは、なぜ?」「削る際に熱が出るので、それを冷やすため」など、1つ1つの説明に興味津々。
この日は土曜日だったにもかかわらず、パソコン製造ラインが稼働していて運良く実際の作業を間近で見ることができました。1台当たり70点ほどの部品を20分足らずで組み上げていくのだそうです。
細かいスペックが異なるパソコンを、間違わず効率よく製造するために、バーコードで部品を管理するデジタルピッキングシステムが使われています。ボタンを押すと、必要な部品がすぐに分かり、取り忘れも防止。
工場見学の後、会場に戻って、いよいよ電源投入。自分で組み立てたパソコンとあって、やや緊張した様子も見られましたが、全員のパソコンが無事に起動し、ホッと一安心。みんなの顔がパッと明るくなりました。
富士通が提供するクラウドサービス「My Cloud」を紹介。子どもたちにクラウドコンピューティングを説明するために「データの四次元ポケット」というたとえを使い、発表者はのび太とドラえもんに扮して奮闘。
最後にお土産として、NC工作機械で1人1人の名前を彫ったネームプレートをプレゼント。また、組み立て教室や工場見学の様子を主催者側で撮影した写真データなども、USBメモリで持ち帰ることができました。
(了)
変更履歴:
2013年8月13日:「富士通 パソコン組み立て教室」のリンクを設定しました。
2013年9月9日:FireFoxにてレイアウトが崩れる場合があるため、写真のキャプション文字数を調整しました。具体的には、「メモリモジュールをメモリスロットに取り付ける作業。」を「メモリモジュールをスロットに取り付ける作業。」に変更。
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