あのチームのコラボ術
話題を生み出す"はあちゅう"式メディア運営術とは? キレナビ編集長・伊藤春香さん
今回は、トレンダーズ「キレナビ」編集長、"はあちゅう"こと伊藤春香さんにお話を伺いました。かつて、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれた伊藤さん。2009年に電通に入社し、2011年12月から現職に。
伊藤さんは現在、編集長業務の傍ら、ソーシャルな焼肉会マッチングサービス「肉会」の運営代表を務めるなど、大変多忙な毎日を送っている。インタビューを行なったサイボウズ式・大槻編集長は、同じ編集長の立場として、伊藤さんのサイト運営に対する姿勢や仕事術などにいろいろとインスパイアされたようです。
編集長としての幅広い活動
大槻
まずは「キレナビ」の編集長としての仕事内容を教えてください。
クーポンや特集内容の企画、Webサイトのディレクションなどキレナビに関してあらゆることをやっています。お問い合わせの電話を直接とったりもします。コンテンツに関しては企画、依頼、取材、掲載、確認作業まで全工程に携わっています。
社内では、メールでの社外の人とのやりとりやキレナビチームとの打ち合わせが多く、その他にプレスリリースの作成や配信作業、SNSの更新や指示などを行なっています。
社外では、メディアへの売り込み、PR活動、取材対応、講演会が月2程度、イベント参加などイレギュラーなものなどもあり、社内、社外は半々くらいの割合で活動しています。
大槻
社外での活動もずいぶん積極的に行なっているんですね。
「キレナビ」は、美肌や痩身、審美歯科といった美容クリニックのクーポンを扱うサイトです。美容医療という分野に不安に感じたり、整形のイメージを持たれる方もいるので、顔を出して"私たちがやっています"というのが非常に重要になると考えています。
また、これまでリーチできなかった層に"人物軸"で興味を持ってもらいたい。そこが編集長の立ち位置ではないかなと思っているので、個人としての活動も「キレナビ」の宣伝に繋がるものであれば積極的にやっています。
それと、ランチは毎日社外の違う誰かと食べるように心がけています。
大槻
それはなぜですか?
編集長として、人と会うこと、そのコネクションが大事だと考えているので、積極的にそのようにしています。夜の外食も同様に考えていて、予定がない時は会社で仕事をしているので、本当に、四六時中、人に会うか仕事してます。
大槻
なるほど。編集長はそこまでやらないといけないのですね。見習わなくては・・・。
「肉会」と「プチ炎上」
大槻
最近話題の「肉会」について少し聞かせてください。あれは会社の仕事とは別に立ち上げたと聞いていますが?
はい。純粋にそういうアプリが作りたいなって思って肉好きな仲間と作りました。インスパイアされたのは「ソーシャルランチ」。あれは、エリア限定でビジネスにも活用できますが、最初からビジネスを目的にした出会いじゃない出会いもありなんじゃないかと思い、考えました。でも、飲み会ツールにはしたくない。そうすると、「よし、焼肉だ!」と。ほら、焼肉って何となくイベント感があって、肉を焼いたりしながら、初対面でも話のキャッチボールが成り立ちませんか?
大槻
確かに焼肉にはそういう力がありますね(笑)。色々と考えられての仕組みだったんですね。
そう言えば、少し前にブログがTwitterで拡散して、一部ではプチ炎上みたいにも取られていたじゃないですか?あの時はどういった気持ちだったのか、もし差し支えなければお聞かせいただけませんか?
もちろんお知らせブログを書くと言うことはより多くリツィートされることを目指しているわけですが、その中で「女性は美容費がかかる」という部分と、肉会の「おごる機能」について記述したことが繋がって、女子はというか、"私はお金がかかるから奢れ"という、意図とは違うメッセージとして伝わっちゃったんです。結果的に5000回以上リツイートされましたが。。
大槻
そうだったんですね。でも、誤解とは言え、いろいろ言われるのは大変ではないですか?
リアルに会う人には私の人間像が伝わっているので、別にいいと思っています。
編集長になったきっかけとは?
大槻
前職の広告代理店での仕事についてお聞かせいただけますか。転職されたのは違うことにチャレンジしたかったからですか?
新卒で電通に入り、すぐに中部支社に配属になり、そこでWebサイトの提案やバナー、メディアの提案などを行なっていました。1年目の冬にクリエイティブ試験に受かり、2年目からはコピーライターとして本社勤務となりました。
もともとは、大企業の安心感があったので、ベンチャーに行こうとは思っていなかったんです。それが、社長(トレンダーズの経沢香保子社長)との出会いがあって、何度かお会いした後に「うちの会社に来てもらいたいと思っている」と言われて。びっくりしたけれど、そういう人生もいいかなって思ったんです。スパイスが欲しかったのかも。
大槻
大きな決断だったと思いますが、悩まなかったですか?
決断は早かったです。翌日には辞表を出していました。でも、これまでお世話になった事やまだ2年しかいないことを考えて、社内の頼りにしている方には相談しました。そうしたら挑戦したらと言って下さったので。
大槻
キレナビは転職後に立ち上がったサイトなんですか?
いえ。私は2011年の12月に転職しましたが、キレナビは同4月に運営が始まっていました。最初は全社広報に、という話だったのが、後から「キレナビ」の編集長しない?と言われて。美容に関心があったのと、美容医療という分野の情報を必要としている人に届ける、そういう媒体にやりがいを感じるだろうなと。それと、自分の"子ども"みたいなサービスを手がけるほうが燃えるだろうなと思ってやることにしました。
トレンダーズのワークスタイルで驚いた事
大槻
転職後、チームの仕事をされるようになって、一番変わったところは何ですか。
一番衝撃を受けたのはサイボウズを使っていることでした(笑)
大槻
えぇ??どういうことですか。
以前の職場では、隣で何をやっているかわからない、先輩がどこで何をやっているかわからないといった感じでした。業務上の守秘義務もあって、情報管理が厳しい会社ですから、全部手帳に記載して、誰がどのクライアントを持っているかも秘密。会議も上の役職の予定を確認しながら埋めていくといった進め方でした。
それが、トレンダーズでは、誰がどこで何をやっているか全部わかります。最初の頃は、空き時間を作ったら予定を勝手に入れられてしまうんじゃないかって、恐怖もあって、本当にカルチャーショックでした。
でも、もはや慣れてしまうとナシではいられないです。今では、外出時に通信環境になくても常に確認できるように、iPhoneでスケジュール画面をキャプチャして持ち歩くといった事もするほど頼りきっています。
大槻
スケジュールを共有しての管理で感じたメリットはどんなことですか?
とにかく予定の調整や変更が早くできるので時間短縮ができることです。興味があれば、社内でどのようなことをやっているかもわかるというオープン性もあると思います。私はお仕事の繋がりでライターさんとお食事することも多いので、そういったものも全部公開しています。人とのリレーションも見えるわけですから。
大槻
以前とはワークスタイルがガラリと変わってしまったわけですが、紙でのスケジュール管理には戻れないですか?
スケジュールに関しては変更が多いので、ちょっと難しいですね。今のようなサイト運営にはスピードが必要不可欠なので。
今はもう紙の手帳には、平日の予定は書かなくなりました。今は昼と夜のご飯を食べる相手と休日の予定しか入っていません。
チーム内でのコラボレーションスタイルは?
大槻
「キレナビ」のチーム体制について教えて下さい。
サイト責任者、システム、SEO対策、広告、営業、編集長といった担当があるにはありますが、お互いの境界を越えることもあり、チーム内で情報を共有しつつみんなで進めています。
大槻
社内で使っているツールについてお聞かせいただけますか。
プロジェクト管理用としては「Redmine」を使っていて、社外の人とのデータのやりとりなどはそこで行っています。Webサイト公開、バナー掲載といったスケジュール管理には「Excel」を使っています。「Google カレンダー」なども使って試行錯誤した結果「Excel」に落ち着きました。
ただ、私は自分の予定とWeb関連のスケジュールを合わせて見たいのでサイボウズにも入れています。あと、個人的には移動が多いので「EVERNOTE」で地図と連絡先を管理してみています。
大槻
その他には何かありますか?
メールやスタッフ全員やキレナビチームなど用途にわけてのメーリングリスト(ML)を使ったやりとり、URLの共有などは「Google トーク」を使っています。企画書やファイルは、PCのローカルに保存してはいけない決まりなので、すべてファイルサーバーで管理されています。また、社内全体で共有している「Facebook」の非公開グループがあるので、MLで全社に流すほどじゃないような話をそこに書き込んでいます。
多忙な編集長が気をつけていることとは?
大槻
編集長としてみんなと仕事をしていくのに気をつけていることは何ですか?
情報を常に共有する事です。定例ミーティングやMLで行う各自のタスクの共有はもちろんのこと、電話をとった者がクライアントやお客様からの問い合わせに、何のことだか分からないということがないように、また、何か問題があった時には最善の改善案を立てられるようにという体制づくりを心がけています。
大槻
メールでお仕事されていると相当なメール量がやりとりされると思うのですが、処理する上でのテクニックみたいなものはありますか。
1日で200通以上のメールを処理する時もあるのですが、"メールは見た瞬間に返したい!"と考えています。「OKです」の一言が遅れた事で、「申し訳ありません」と文面が長くなったり、気が重くなったりするじゃないですか。だから、メールの返事は早ければ早いほうがいいと考えていて、反射神経で返すようにしています。返せない状態や重めの案件の場合は、未読に戻すか印付けし、電話で処理したほうが早いものにはそうするようにしています。受信フォルダは、常に空か、今新しくきたメールのみの状態になっています。
大槻
そういった決断の早さは、先ほどの転職の話にも通じるところがありますね。会社のメール以外にも「Twitter」や「Facebook」などでのやりとりもあると思いますが使い分けはどうですか?
最近では「LINE」で仕事のやりとりをすることもあります。それぞれの属性があるので使い分けというほどではありませんが、やはり会社メールでは形式を整えたメールを心がけていますし、「Gmail」や「Facebook」だとチャットっぽく話が進むので処理能力が早くなるというのはありますね。
これからのキャリアについて
大槻
今回、いろいろお話を伺ってきて、伊藤さんの目的が明確なところ、そこに対してのアウトプットを求める行動の迷いの無さや潔さを強く感じました。
最後に、今後のキャリアをどう考えていらっしゃるかお聞かせください。
学生の頃は、10年後までを考えてプランを練っておいたほうがいいと考えていたんですが、社会に出て、会社というのは自分の裁量ではどうにもならないんだと考えるようになりました。代理店時代、中部支社に行くことも、転職することも全く予想していませんでしたから。常に人生はアップデートしているので、イメージできるのは、2年先位までではないかと。
そこで、私のこの先の2年間ですが、「キレナビ」をやっていると思います。キレナビ」をより良いサービスに育てつつ、認知を広げていきたいと考えています。
(写真撮影:kumadaiworks.jp)
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