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「スマートフォンデザインでラクするために」──techな人にお勧めする「意外」な一冊(4)
tech@サイボウズ式のアドベントカレンダー企画、techな人にお勧めする「意外」な一冊の4日目。小笠原 徳彦さんのお勧めは「スマートフォンデザインでラクするために」(石嶋 未来、技術評論社)。小笠原さんと最初にお会いしたのは、Free Standards Group(FSG)のOpen Printingワーキンググループの会合だったと記憶しています。その後、openSUSEの活動でも顔を合わせたりもしました。カヤックを操って川下りするタフな一面も。(編集部・風穴)
文:小笠原 徳彦
私からお勧めさせていただくのは、石嶋 未来 著「スマートフォンデザインでラクするために」です。
私はスマートフォンともWebデザインとも(今のところ)まったく縁がない、しがない中堅SIer勤務の技術者です。そんな私がなんでスマートフォン向けデザインの本を読んでいるのでしょうね?
今の仕事につく前、私はとある事務機器メーカーに所属していました。それで長いことプリンタードライバー開発の部署にいて、社内のデザイン部署に対し、ドライバー向けのUIデザインをお願いするという仕事をしていました。後にオープンソースというものと出会ってコミュニティに出入りするようになり、必然的にWebデザイナーの方たちともお話する機会が増えてきました。
メーカー内のデザイン部署とWebデザイナー、立場が異なるそれぞれの方に異口同音に言われたのは、「デザインは感性じゃなくて、実は理屈なんですよ」ということでした。我々がプログラミングをするときと同じように、理詰めで考えて出てくるものなのだと。
私から見ると、デザインというのは相当に感性的な仕事で、えっ、と思うわけです。じゃあ、その「理屈」とはどんなものなの? と、手がかりを知りたくなるわけです。例えば古典であるD.A.ノーマンの「誰のためのデザイン?」とか読んだりはしたのですが、どうも抽象的でピンと来ない。世の中には「デザイナーのためのプログラミング入門」的イベントや記事はあるのに逆はなくって、なんだか悶々とする日々。うーん……。
そんな中、TLでこの本の情報が流れてきました。なんか私の疑問に答えてくれそうな本だったので即購入。ふむふむ。なるほど!
この本の素敵なところは、もちろんハウツー的なこともちゃんと書いてはあるんですが、「私はこういう理由でこうする」というロジックがちゃんと書いてあることです。
そしてデザインを始める「前」のプロセスが非常に手厚い。プロジェクトの中のポジショニングを意識する話(p.034)であるとか、紙に書きだして案件整理をする話(p.052~054)であるとか、導線設計の話(p.067~073)とかが読んでいて頷いたところです。
4章はまるまる「理由を考えたデザイン」というタイトルで、ここからが実際のデザインワークになるわけですが、例えば「スマートフォンではページングは必要か?」「見出しは必需品か?」といったことに対して「私はこう思う」という理由を明確に丁寧に説明されているので、「なるほど!」と思えます。同じ章の冒頭p.076にて「デザインはセンスでしょうか? それともロジックでしょうか?」という問いに「両方」と答え、少なくともロジック側については、デザインシロートにもわかりやすい説明をしてくれるわけです。
結局デザインにしろプログラミングにしろ、お客様の問題を解決する手段であって、そのためにどう考えたらいいでしょう、というのを、実体験に基づいて丁寧に説明されていると思います。「俺達はこう考えているけど、あの人たちはどう考えているんだろう」という、私の素朴な疑問に丁寧に答えてくれた一冊です。
正直テクニックや実務的な話が増えてしまう6章以降はそれほどおもしろく読めなかったのは事実ではあります。でも「おわりに」に筆者の石嶋さんが書かれている「作成をサポートするツールがたくさん出てきて、デザインはかなりラクになりました。しかし、一番ラクできるのは考え方を知ることです」という言葉のとおり、本書においては技術やツールより「どう考えるか」に重きを置いているので、非・デザイナーである私でも非常に面白く読めました。
「デザイナーさんってどんなふうにデザインをしているんだろう」と思うソフトウェア技術者の方、読んでみるといいと思います。もし、デザイナーさんと直接やりとりする仕事をしているプログラマーさんなら、相手のロジックを知ることはきっと、自分の仕事をラクに、楽しくしてくれると思いますよ。(了)
小笠原 徳彦さんのプロフィール:
事務機器メーカー時代にオープンソースの世界に触れ、勢いで離職、浪人時代を経て現在は(株)ミライト情報システムにてMongoDBなどのオープンソースを用いたシステム開発に関わる。LibreOffice日本語チームメンバー、MongoDB日本ユーザー会MongoDB JPメンバー。
お知らせ:
来る12月21日(土)に、「関東LibreOfficeハッカソン」が開催されます。LibreOfficeに関することなら何でもOKの気軽な集まりです。ご興味ある方は、ぜひどうぞ!
この記事(書籍の表紙画像を除く)を、以下のライセンスで提供します:CC-BY-SA
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