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片付けの効率化──コデラ総研 家庭部(14)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第14回目(これまでの連載一覧)。今回のお題は「片付けの効率化」。
文・写真:小寺 信良
部屋が片付くという状態は、モノが所定の場所に収納されており、床やテーブル上に散乱していないことを指す。なぜ散乱するかというと、使い終わったあとにすぐに所定の場所に戻していないからである。
そんなことは誰でもわかることだが、いい大人がなぜ放置状態にしてしまうのか。理由はいくつか考えられるが、多いのはまた明日使うから、しばらくはちょくちょく使うから、という理由だろう。例えば読みかけの本などは、いちいち書棚にしまっていては忘れてしまう。だから忘れないようにそこに「置いておく」。
置いておいたのが、誰かに邪魔だからと場所を動かされてしまうと、読みかけだったことなどすっかり忘れてしまい、気がつけば「なんでこの本はいつまでもこんなところにあるのだ?」ということになってしまう。
もう一つ考えられるのは、しまおうと思っても収納場所がない、あるいはどこにしまえば利便性が高まるのか今すぐ思いつかないからである。それらは、カテゴライズできないモノに属する。
例えば多くの家庭では、家族で使う小物が吹き溜まる「謎のヒキダシ」が存在するのではないだろうか。爪切りや綿棒、ハサミやセロテープ、ガムテープ、何かを縛っておいたヒモ、使えるのかどうか不明なボールペンやサインペン、用途不明の鍵、とっくに期限が切れたクーポン券、錆びた乾電池、何かのキャップ、何かの足、磁石、そういうものだ。
これらのモノには、共通点や脈絡はない。どこにもカテゴライズできないけど捨てられないものが、その場所に集まってくる。なぜその場所なのか、今となっては誰にも説明できないが、家族の間では知らぬもののない、「あのヒキダシ」である。だがこのヒキダシのおかげで、小物が部屋中に散乱しないで済むのは事実であり、そこを覗けばなんとかなる救いの場所でもある。
片付けの場の創出
この2つの事象に注目すれば、部屋がなんとなく片付かないのには、片付ける場所が見つかるまでにとりあえずどうにかしとく場所がないからだということがわかる。
そうなると、片付かないままに片付かないものが、地層のように溜まっていく。しかも地層の上の方がすぐ使うかもしれないものであるために片付けられず、もう片付けてもいい下の方を取りだそうとすると雪崩を起こすので誰も触れない状況が、家庭内のあちこちで出現する。
そこで我が家では打開策として、「とりあえずBOX」を設置している。今すぐどこかにしまう必要はないんだけど、そこら辺に出しておくと片付かないようなものは、全部その中にポイポイと放り投げておく。
そうして1週間置いたあと、時間のある土日に中身をチェックすると、その片付かなかった「モノの素性」がはっきりわかる。「この案件が片付くまでは捨てられないもの」は、もっと手元に置いておく。たまにしか使わないものの、捨てたらまた買わなきゃいけないものは、収納場所をゆっくり考えてしまう。1週間結局1度も使わなかったものは、週間というサイクルにははまらないモノなので、捨てるかどうか決断する。
これを続けていくと、「いつか使うかもしれない」みたいなものが、次第にはじき出されてくる。だいたい、いつか使うかもしれないものは、大抵必要になったときにはどこにしまったか忘れてしまって見つからないので、新しく買い直したりするはめになる。無人島で暮らしてるわけじゃあるまいし、必要な時にコンビニや100均などで買える程度のモノを、後生大事に取っておく必要はない。
女性はまた違うと思うが、男性は家庭内のモノのありかや配置を記憶しておこうという意志がない。だから家庭内に棚や引き出しからあふれてしまうほどにモノがあっても、ありかの手がかりがゼロなので、結局は使いたい時に一から家捜しする事になる。世の中の多くの亭主が、家の中でアレはどこだといちいち奥さんに聴くのは(聴かれる側は相当うっとうしいと思うが)そういう事なのである。
「とりあえずBOX」は問題の棚上げだと思われるかもしれないが、その棚を週一で総ざらいすることで、事業仕分け的な意味合いが出てくる。こうしていくと、収まるべきモノは収まるべきところに収まっていき、よくよく考えたらいらなかったモノは、早期に処分できる。
だから「とりあえずBOX」は、可能な限りダメダメな情けないヨレヨレのダンボールとかのほうがよい。そして箱の横にできるだけ情けなく、「とりあえずBOX」と書いておく。オシャレなバケットとかを使うと、もうそれでいいかという気になってそれ以上その箱の中身を詮索しようとしなくなるからである。
断捨離ほど思い切らなくても、とりあえず1週間の猶予があるので、ゆっくり悩んだり考えたりできるのもメリットである。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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