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キッチンの衛生管理──コデラ総研 家庭部(15)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第15回目(これまでの連載一覧)。今回のお題は「キッチンの衛生管理」。
文・写真:小寺 信良
キッチンの衛生に対する考え方は、これまで習慣的に行なってきたことを改めて見直していくべき時期に来ているように思う。例えば食器を洗うスポンジひとつとってみても、使い終わったあとシンクに置きっぱなしにするクセの人は少なくない。
だがそんな人も、こういったエントリーを読めば、気が変わるだろう。
家の中でトイレよりも汚い場所は「台所のシンク」だった(ライフハッカー[日本版])
記事中ではロングアイランド大学病院の感染対策ディレクターの談話を引用しているが、この話は以前、「 ファストフードが世界を食いつくす」(エリック・シュローサー著、草思社)の中でも語られていたのを読んだことがある。シンクの中の大腸菌の数は、トイレの水の中よりも多いので、シンクに落ちたポテトを食うぐらいなら、トイレの水にちょっとつけて食った方がまだマシ、という話である。なんでわざわざつけるんだよ、というツッコミもあろうと思うが。
そんなところに、びしょびしょに濡れたスポンジを一晩放置すれば、当然スポンジは大腸菌ほかの雑菌まみれになる。それでまた食器を洗えば、むしろ食器に菌を塗りつける結果になりかねない。
また食事のあとの茶碗類を一晩水に浸けておくという習慣の家庭もあるだろうが、あれはやめたほうがいい。10時間水につけ置きすると、菌の数が7万倍に増殖するとの実験結果が2011年に公開され、話題になった。
食器の「つけ置き洗い」はダメ 菌うじゃうじゃ「排水口並み」汚さ(J-CASTニュース)
うちでは食事のあとは、すぐに食洗機の出番である。
一方で食材を直接乗せるまな板は、生肉や生魚を扱えば、雑菌の繁殖は避けられない。本来は小まめに漂白すべきだろうが、塩素の匂いが嫌いな人も多いだろう。
僕もそうなので、どうしたものかといろいろ考えた結果、やや小ぶりのまな板に変えることにした。小さくなれば、食洗機に入るからである。食器が多いときには無理だが、昼食など食器が少なくて済むときがチャンスとばかりに、まな板も一緒に洗っている。コースの最後に熱湯消毒プロセスがあるので、普通に洗うよりも雑菌の繁殖は抑えられるだろう。
消耗品の活用
次いで気にしたいのが、布巾(ふきん)の扱いである。食器を拭いたりそこら辺を掃除したりと、いろいろに使えるのは便利ではあるが、これを皆さんどれぐらいの頻度で洗濯や交換しているだろうか。案外水で洗って、その辺で干してまた使うといったサイクルを繰り返しているのではないだろうか。
実は布巾のほうが、洗い物のスポンジよりも雑菌が繁殖しやすい場所である。スポンジと違ってそもそも常時洗剤を付けているわけでもないわけだから、当然だ。僕は特に匂いには敏感なたちなので、昔から台ぶきんから水が腐ったような、雑巾のような臭いがするのがたまらなくイヤだった。また水に濡れて、ヌルッとした手触りなのも気持ちが悪かった。
水拭きすればなんでも綺麗になるというのは、迷信に近い。神道には「禊ぎ」という概念があり、清浄な水で洗い流すことで、穢れを祓うと信じられてきた。この概念が生活習慣の中に、今なお根強く残っている。
自分で家事をやるようになったとき、どうせ布巾など小まめに洗えないことはわかっていたので、うちでは布巾は全廃した。その代わりに、キッチンペーパーを使っている。環境に優しくない云々の誹りは免れないかもしれないが、何事も命あっての物種である。下痢しながら地球を守るヒーローなど、どう考えてもかっこ悪い。
炊事のあとに手を拭くためのタオルは別にあるが、これはあえて白地のものを使っている。色が付いていると、汚れてきたのがわからないからだ。白いものが汚れていると見た目にもみっともないので、小まめに交換するようになる。洗濯しても白くならないぐらい汚れたものは、容赦なく廃棄である。
昔はそういうものをミシンで縫って雑巾にしたものだが、雑巾など100円ショップで3枚セットが買えるご時世に、わざわざ自分で作ることもない。そもそも白いタオルなど、引っ越し祝いだなんだとあちこちから貰ったり、温泉に行って入浴のときに買ったりするので、探してみると結構家の中から見つかるものだ。
実はクレジットカードやドラッグストアのポイントを貯めて、こういった消耗品をよく貰っている。だからわざわざお金を出して買うという必要もないのである。しかもこの手のものは、低いポイントでも十分貰えるので、あまり不自由したことはない。
皆さんもキッチン周りの習慣を、衛生の観点からもう一度見直してみてはいかがだろうか。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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