あのチームのコラボ術
「世界一でなくなっても」東京スカイツリーを支えるチームの胆力と大ヒットの背景
「あの企業はどんなツールを使って、アイデアをカタチにするチームを作っているんだろう」。そんな企業を紹介する「あのチームのコラボ術」。今回は話題の東京スカイツリーです。
運営全般を担うのは、東武タワースカイツリー株式会社。東京スカイツリー、商業施設「ソラマチ」、水族館、プラネタリウムなど、タワー周辺の東京スカイツリータウンの来場者は、オープンして4か月強で2000万人を突破し、ニュースになりました。
今年のヒット商品No.1に選ばれ、今や一大観光地となったタワーの裏にはどのようなチームワークがあるのでしょう。「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2012」を受賞されたことを機にチームの話を伺いました。「世界一のもとにみんなが集まってきた」と語るのは、スカイツリー建設時から広報に携わってきた高梨博武さんと、営業計画部の鈴木健大さん。お二人が話すスカイツリーでの仕事とチームとは―。
会社を越えた連携でタワーを支える
スカイツリーの運営は、いつごろから始動となったのでしょうか
椋田
事業会社ができたのは2006年です。 2008年に着工開始、名称決定し、約3年半の期間をかけてタワーが完成しました。スカイツリーの現場には、弊社以外にも警備会社や各店舗、複数の会社が関わってきます。
運営にはさまざまな会社との連携が必要になってくるんですね。
椋田
各会社との連携のために窓口の人がいて、普段はその窓口の社員が各会社との情報共有の橋渡しをしています。
情報共有はどのようにされているのですか。
椋田
現場では社員が専用の携帯電話を持っていて、常に連絡を取り合える体制を整えています。イベントがや大きな催しがあるときは現場にいるメンバー全員が情報共有できるように無線を使います。スカイツリーとその周辺が職場になるので、高さ450mのところや、ショップ、オフィスに社員がいます。
お客様の声や要望などは全社向けにメールで共有しています。要望をみて、各現場で対応し、報告をする。その過程がすべて分かるようになっており、対応が遅れるとアラートが出ます。
社員と社長との距離も近く、1つ1つの要望に対して、解決までのプロセスを共有しています。
社内や運営会社以外にも、地域とのコミュニケーションも必要な気がします。
椋田
そうですね。来場される方や地域住民の方とのコミュニケーション、ご意見等の窓口も広報にて担当しており、住民のみなさんとは、スカイツリーの候補地が決まってから継続して対話しています。
心掛けているのは、「顔の見える対応」です。定例の意見交換の場もありますが、毎日の電話やメールにていただくご意見や要望には、基本は会いに行って話をするようにしています。また、「このポイントでこういう写真が撮れたよ」とか商店街のイベントとの連携の提案の声もたくさん掛けていただきます。
みなさん、スカイツリーを一緒に盛り上げていこうという気持ちが強く、協力いただいています。タワーが無事完成できたことは、地元との連携が大きく働いたことは間違いありません。
スカイツリーの完成前と完成後
開業前はどのような仕事が主だったんでしょうか
椋田
私の業務は旅行会社や運輸会社、行政の観光課などに向けて、スカイツリーの魅力を発信していく仕事です。
開業前は、建設中のところを一目見たい方も多くいらっしゃいましたので、都内名所を回るバスツアーのルートに入れていただき『車窓からツリーを眺める』企画を実行したり、建設現場の近くにインフォプラザという情報発信コーナーを設けて、そこで紹介したりしていました。
オープン後は、ツアーや旅行行程に組み込んでいただく営業活動や修学旅行生、外国の方など、ターゲット別に魅力を伝える企画を立てたりしています。
広報としては、タワーの建設過程から展望台スタッフの制服発表、オープンに関する情報、限定入場、自由入場、と常に外に発信する情報が変わっていきました。 情報を発信する前には、社内に周知し、お問い合わせの体制をつくることも必要です。その体制つくりも併せて整えてきました。
オープンして4か月経った今は、スカイツリーに初めていらっしゃる方向けの情報発信プラス、 リピートして来ていただくための情報発信に注力しています。
オープン当日は、多くの観光客とマスコミが詰めかけましたが、天候はあまりよくなかったですね。
椋田
私は1Fにいて、常にツリーの展望台にいる社員と無線連絡をとっていました。天候の関係で、エレベーターを止めたときもあったのですが、そこでも混乱が起こらないように、社員同士無線で連絡しながら進めました。
お客様を迎え入れるのは誰もが初めての日でしたので、やはり緊張はありましたが、お客様の安全と安心を優先し、メンバーそれぞれの場所で協力しましたね。
オープン時と今と、何か変化はありますか?
椋田
初日から1週間ほどの期間を経て、各現場との連携が強くなったと思います。 日に日に親密度も増し、協力体制が強靭になっています。
様々なバッググラウンドを持つメンバー
ちなみにスカイツリーに携わる前はどのような仕事をされていたのですか。
椋田
旅行会社で営業を担当していました。
私はホテルで支配人をしていました(笑)。
バックグラウンドが違う人たちが集まってるのですね! 各自の事情が異なるところから共通認識を創り上げる苦労などはありましたか?
椋田
みんな共通していたのは「世界一のタワー」にかかわる仕事ができる、という点でしょうか。世界一のタワーの魅力を伝えることにやりがいを感じる人が集まっているので、その部分での苦労はあまり感じませんでした。
旅行会社ではお客様によって様々な企画が可能で、それはそれで面白かったのですが、ここではスカイツリーの魅力を明確に伝え、知ってもらう大きな役割があります。
今は「世界一のタワー」という魅力をさまざまな角度から伝えていくことに面白さを感じています。
スカイツリーの魅力が関わる人のモチベーションの源泉にもなっているということですね。チームでの目標設定は何かありますか。
椋田
運営における最大のミッションは「お客様の安全」です。 安全が確保できないときは、展望台開放も中止します。
安全に運行し、安心できる運営をするというミッションのもと、毎日全員で協力しする意識は欠かせません。
愛されるタワーにしたい
スカイツリー周辺は、観光地として常に多くの人がいる場所となりました。今後の展望について教えてください。
椋田
世界一といってもいつかは抜かれる時がくるでしょう。そのときに私たちが目指すのは「愛されるタワー」です。
最近では、スカイツリーの魅力として、「3,000万人に見られるタワー」という別の言い方もしています。
展望台からはだいたい70km四方が見えます。このエリアに住んでいる人は3,000万人いらっしゃるそうです。展望台に上がるお客様に「3,000万人の方に見られていますよ」とお伝えすると、皆様驚かれますね。
スカイツリーには、都内だけではなく日本全国からお客様がいらっしゃいます。わざわざ遠くから足を運んでいただいたのに、天候事情で展望台に上がれないお客様がいらっしゃることもでてきます。このときが仕事をしてい一番つらい時ですが、お客様の安全を優先します。その時はタワー以外のスカイツリータウンでの過ごし方を案内するなど、みんなで連携して対応しています。
また来たいと思われる、そういうタワーにしていきたいと思っています。
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写真撮影 :橋本 直己
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