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在宅ワーカーならではの仕込み料理──コデラ総研 家庭部(23)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第23回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「在宅ワーカーならではの仕込み料理」。
文・写真:小寺 信良
筆者は基本的に、自宅で仕事をしている。もちろん取材や打ち合わせなどで外に出ることも多いが、外に出ている間というのは、実は1円も産んでない。いろんな情報を持ち帰り、家で原稿にしている間が、「生産」だと言える。
どんな仕事でもそうだと思うが、産みの苦しみというのは当然ある。材料が揃っても、どう切ってどう煮込んでどう盛りつけるか、それが見えないと手がつけられない。いわゆる、「構想を練る」というやつである。こんなときに、ただボーっと机の前で座っていても、埒があかない。なにか単純作業で手を動かしたほうがよい。
そんなときにお勧めしたいのが、ちょこっと手を動かしただけでできる、仕込み料理である。メインを作るのではなく、ちょっとあったらいいなというものを作り置きしておくのだ。こういうものは、なかなかちゃんと時間を作って調理するタイミングがないものである。今回はボケっと考え事してても、手だけ動かしてればなんとかなる料理2種をご紹介したい。
圧力鍋で作る簡単リンゴジャム
僕は朝がパン食なので、ジャムはいつでも必要だ。またヨーグルトに入れてもおいしいので、うちでは自家製リンゴジャムが定番になっている。夏場はリンゴが高かったが、秋が近づくにつれて次第に値段も下がり、買いやすくなってくるころだ。ジャムは煮込むのが大変というイメージがあるが、圧力鍋を使えば大して時間もかからず、ほっとけばできるのでお勧めである。
材料
- リンゴ……3個
- 砂糖……150g
- ポッカレモン
- シナモンパウダー
- リンゴを8等分に切り、皮をむく。皮ごとジャムにしても旨いという人もいるが、食感がバラつくので、筆者はいつも皮はむいている。さらにそれを厚さ5mm程度に刻む。リンゴ3個分だと10分ぐらいかかるので、考え事をするにはちょうどいい時間だ。
- 切ったリンゴを圧力鍋に放り込み、砂糖150gを投入。多分初めて作ると、「えっこんなに!」と思える量だ。もちろん甘くなくていいという方は加減しても構わないが、ヨーグルトと合わせるなら甘みが強いほうがいい。カロリーが気になる方は、パルスイートなどの低カロリー甘味料に変えるのもひとつの手だ。もちろん砂糖よりもコストはかかる。
- ポッカレモンを小さじ1杯。本物のレモンを使っても構わないが、レモンもこれまた買ってしまうと他に使い道がなかったりするので、うちではいつもポッカレモンで代用している。レモン汁は味付けのために入れるのではない。ジャムがゲル状なのは、ペクチンという物質がゲル化するからだ。ペクチンはph 3.0ぐらいでゲル化するのだが、酸味の少ない果物の場合、そこまでphが下がらないので、レモン汁で補強するわけである。
- シナモンパウダーを3振りぐらい。これは香りづけなので、なくても構わない。
- 圧力鍋に蓋をして、蒸気が出るまで強火。蒸気が出たら弱火にし、5分過熱する。手がかかるのかここまでで、あとは火を消し、自然に圧力が抜けるまで放置する。そのころには構想もまとまっていると思うので、仕事に向かう。
- そういえばリンゴジャム作ってたよなーと思い出したら、蓋を取る。リンゴの形は残ったままだが、木べらでかき回すと自己崩壊するレベルで柔らかくなっているはずだ。あとはこれをすくって、熱湯殺菌したガラス瓶などに詰めて、蓋をして冷蔵庫で保存する。
完全にゲル状になるまで潰してしまってもいいが、多少リンゴの形が残ったほうが歯ごたえがあっておいしい。最初の15分ぐらい手を動かすだけであとは勝手に出来上がるので、「ちょこっと料理」にはちょうどいいだろう。
また最近のホームベーカリーには、ジャムを作るモードもあるので、そういうのを利用すると火も使わず、ほっとけば出来上がる。
炊飯器でチャーシュー
もう1品は、豚バラのブロックを使ったチャーシューだ。これも頑張るのは最初の10分ぐらいである。
材料
- 豚バラ ブロック……500g
- 長ネギ……半分
- ニンニク……1カケ
- ショウガ……1カケ
- 醤油……大さじ4
- 日本酒……大さじ3
- 砂糖……大さじ2
- 豚バラをたこ糸で縛り、油をひいたフライパンで表面を少し焦げ目がつく程度にサッと焼く。たこ糸は、煮ている間にバラバラにならないようにするためだ。スーパーによっては肉を入れるたこ糸ネットが無料で置いてあるところもあるので、そういうのを利用してもいい。
- 炊飯器の内釜に、ぶつ切りにした長ネギ、ニンニク、ショウガ、醤油、日本酒、砂糖を投入。肉が焼けたら、たこ糸で縛ったまま内釜に投入。あとは肉がひたひたになる程度に水を入れる。
- 普通に「炊飯」をする。
以上だ。豚バラは、脂身がある程度ないと仕上がりがパサパサするので、材料選びは大事である。
普通は火にかけて長時間煮ないといけないので、なかなかその場を離れられない。一方、炊飯器を使えばほっとけばいいので、出来上がりまで仕事ができる。煮上がっても保温に移るだけなので、焦げ付く心配もない。出来上がるまでは、おそらく3~4時間といったところだろう。途中時間があったら、2時間ぐらいのところで蓋を開けて肉を上下ひっくり返すと、色も均等に仕上がる。
出来上がりはとろとろに柔らかいが、あら熱を取ったあと容器に入れて冷蔵庫で保存すると、いい具合に絞まって堅くなる。10日ぐらいはもつので、少しずつ切ってラーメンに入れたり、夕飯に1品足りないときに加えたり、晩酌のおつまみに切り出したりと、色々使える。
ほんの手慰みの料理だが、自宅で角煮レベルのチャーシューを存分に食べる機会というのはそうそうないので、家族ウケは抜群である。ただ煮込んだあとは炊飯器に強烈に匂いがつくので、内蓋などの掃除もお忘れなく。そうしないと、白米を炊いただけでほんわかチャーシュー味になってしまい、せっかくの評判が台無しになる。
仕事に煮詰まったら手を動かす。それで家族にも感謝されるのだから、必殺在宅仕込み料理、ぜひやってみて欲しい。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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