tech
アイロンがけとどう付き合うか──コデラ総研 家庭部(27)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第27回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「アイロンがけとどう付き合うか」。
文・写真:小寺 信良
やらなくても死にゃしないんだけど、やればやったでちゃんとした感じになるのが、衣服のアイロンがけである。そう言えば洗濯の話はずいぶん前に書いていたが、アイロンがけの話は書いてなかったことを思い出した。
僕は普段ワイシャツなど着ないし、洗濯のたびにアイロンがけの必要があるような服はあまり持っていない。子供服にしても、素材的にそんなにパリッとした服などないので、日常的にアイロンがけをするようなことはない。だがそれもある意味問題で、いつまでもアイロンがけが上手くならなかった。
こういうのは、小学校の家庭科で教わるのだろうが、あいにくそんな昔の記憶では役に立たない。しかもこれまでの人生の中でいつもしわくちゃの服を着て頓着してこなかった人間にとって、アイロンがけは未知の世界である。
こういうときには、上手い人のやり方を見よう見まねで覚えていくのが一番いい。ネットで話題になったアイロンがけの動画は、これだろう。アイロンがけは英語でIroningというのを初めて知った。
さてこの動画を見て学べるのは、時間をかけてジューッと当てていくのではなく、ポイントポイントで結構圧力をかけて、短時間で済ませているところだろう。おそらくこのほうが、布地に対してダメージが少ないのだろうと推測できる。
これだけでは段取りが分からないので、解説付きの動画も参考にした。
手順は先の動画と多少違うところはあるが、アイロンの動かし方のコツなどが分かる。アイロンは細かく振らずに、ストレートに当てていくのがいいようだ。
プロからは学べないこと
プロの動画で学べることも多いが、逆に実用的ではない部分もある。プロと素人の差は、洗濯後の処理だろうと思う。プロの場合、洗濯終わりから乾燥、アイロンがけに至る時点で、そこそこシワにならないように手をかけて処理している。
一方我々素人がアイロンがけするのは、乾燥機の中で乾ききってクッチャクチャになり、アイロンがけでもしないことにはどうにもならないヤツが相手だ。アイロンがけの前にシュッと綺麗に端が揃うようなシロモノではなく、アイロン台の上で手を離すとスルメみたいに丸まっちゃうようなヤツである。
シワを取るためのアイロンがけは、スチームが有効ではあるのだが、プロ用のパイプが繋がったアイロンならともかくも、タンク背負った程度の民生機ではスチーム量が違う。またスチームの出方も、ここぞというところで出すようなコントロールなどできず、常時シュワシュワと出ているようなタイプだ。
スチームでは水分量が足りないので、事前にハンガーなどにかけて霧吹きで水をかけ、少ししっとりしている状態にする必要がある。のり付けするなら、キーピングのようなスプレー式の糊剤も必要だ。こうした前処理のあとで、アイロンがけに挑むことになる。
ところで最近のアイロンには、蒸気をかけるだけでシワを伸ばす、「シワ取りスチーマー」なる機能が付いているのをご存じだろうか。ハンガーに服をかけておいて、そこにシュッと蒸気を当てていくとシワが取れるという機能だ。
アイロンがけしなくてもシワが伸びるのかこれは便利と、そういう機能付きのアイロンを買ったのだが、正直この機能はかなり微妙だと言わざるを得ない。そういう専用機ならともかく、アイロンに付属の機能では蒸気量が少ないのか、これまでの経験ではあまり芳しい成果は上げられなかった。おそらく時間をかけて根気よくやれば伸びるのかもしれないが、それだったら手早くアイロンがけしたほうが早いんである。
アイロンがけがめんどくさくならないポイントは、「しょうがねえアイロンかけるか」と思い立ってスイッチを入れ、使えるようになるまでの時間の短さだと思う。3分もかかったら長すぎで、それを待ってる間にイヤになってしまう。今のアイロンがそうなら、せめて1分程度で高温まで一気に立ちあがるものに買い換えるのがお勧めだ。
アイロンはそうそう壊れるものでもないので、まだ使えるのにもったいないと思われるかもしれない。僕も若い頃に買ったヤツを30年ぐらい使ってきたが、自分で頻繁にアイロンがけするようになるとこの立ち上がり時間があまりにもやるせないので、新しく買い直した。イマドキのやつなら、コードレスでも1分以内で立ち上がる。
メーカーも毎年毎年新モデルを投入してくるからには、何かしら基本性能は上がっている。30年前と現代のアイロンを比較すると、「ちょこっと使えてすぐ終わる」ように変わっている。いろんな機能があってもどうせ使やしないので、数千円のもので十分だ。それぐらいの投資で効率が上がるのなら、安いものであろう。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
SNSシェア