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キッチリしないアイロンがけ──コデラ総研 家庭部(28)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第28回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「キッチリしないアイロンがけ」。
文・写真:小寺 信良
シャツなどきちんと折りたためるような衣類は、比較的アイロンがけに向いている。フォーマルなものは折り目がきちんとしているほうが、清潔感がある。
一方であんまりキッチリしてないほうがいい衣類もある。春秋に着る薄手のジャケットなどは、自分で洗濯もできて便利ではあるが、いったん洗ってしまうとかなりシワになる。こういうものにアイロンを当ててしまうと妙にキッチリしてしまって、ラフさが出ない。ジーンズにアイロンがけしたみたいなマヌケ感が出てしまうのだ。
これまでそういう部分はアイロン台の角を利用して、アイロンがけしていた。だが直角のところに丸いところを当てても、綺麗な丸にはならない。どうしたもんかなといろんな動画を見ていたところ、どうもみんなが今使ってるアイロン台は、うちにあるようなヤツと違うんじゃねえか、ということに気がついた。
よくアイロンがけ指導の動画に出てくるアイロン台は、ボード型というかゆるい台形というか、短辺の片側が直線ではないヤツが使われている。そこに角の部分を着せるようにセットして、そこにアイロンがけしているのであった。
うちにあるアイロン台は、僕が独身時代に買った長方形の板状のものなので、シャツみたいな折りたためるヤツはうまくかかるのだが、丸いところがうまくできない。昔はこんなヤツばかりだったように思うのだが、今アイロン台を検索してみると、どれも台形のものばかりだ。いつの間にか時代が変わってしまったらしい。
そういえばうちの母方の祖母は和裁を生業としていたので、裁縫道具を沢山持っていた。そのときの記憶をたぐっていくと、なんかミニサイズのアイロン台みたいなのがあったなと思い出した。袖口や肩口などは、それでアイロンをかけていたのだ。
あれはなんていうのか検索してみると、「仕上げ馬」というらしい。なるほど、確かに馬っぽい。さっそくAmazonにて購入してみた。1900円。
仕上げ馬の威力
構造的には簡単で、いわゆる折りたたみ椅子を細長くして、座面を厚くしたような構造である。支えの足はX字になっているので、袖口などはそこまでずっぽり入る(写真1)。
さっそくこれで肩口をアイロンがけしてみたところ、綺麗に型崩れせずに当てることができた。肩がふにゃっとしているとシルエット的にも見栄えが悪いので、ラフに仕上げても肩だけはきちっとしたほうがよい。
それだけでは勿体ないので、袖もこれでなんとかならないかとトライしてみた。アイロンがけ指導動画は大抵ワイシャツで説明しているが、それだと袖は平面でかけることになる。
この方法は縫い目のところはキッチリしていていいが、反対側の上になるほうにバキッと袖山が立ってしまう。固い素材はそれもありかもしれないが、柔らかい素材のものは、キッチリ袖山が立つわけでもないが微妙に線は付くという、中途半端な感じになるのがイケてないわけだ。
そこで仕上げ馬を使って、袖を円筒のままにアイロンがけするわけだ。こうすると袖山が付かず、ふんわりと円筒形で仕上がる。袖口も平面に伸ばしてかけるわけではないため、端のほうにシワが寄ったりすることも避けられる。
いやうまい人になれば、仕上げ馬などなくても綺麗にかけられるのだろう。アイロンを綺麗にかけるためには、手順があるのだ。しかしうちの場合アイロンがけは毎日発生するわけではない。たまにしかやらないので、気合いを入れて手順を覚えても、すぐ忘れてしまう。そういうときに、あんまり厳密に手順を覚えなくてもなんとかなる、こういったサポート道具が役に立つわけである。
アイロン台自体も微妙に進化しており、最近は平面ではなく、人型で表面が丸くなっているタイプもあるようだ。これだと生地とアイロン台の間の空気が抜けやすく、アイロン皺ができにくいんだそうである。ただそういう高級タイプだと1万円は下らない。
一般家庭用途でそこまでこだわる人はいるんかいな、と思うのだが、実はアイロンがけは男性のほうがハマる人が多いらしい。キッチリキッチリするのが大好きという男性も珍しくない昨今、あなたもアイロンマスターの道を究めてみてはいかがだろうか。いやオレのことはいいから。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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