「同調圧力」では何も深掘りされない──カーネルハッカー・小崎資広(6)

サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第7回(毎週火曜日に掲載、これまでの連載一覧)。

富士通のエンジニアとしてLinuxカーネルの開発に参加されている小崎資広さんへの「インタビュー:その6」。Linuxカーネルという巨大なソースコードと日々戦っている小崎さんのお話は、きっと「エンジニアの学び方」の参考になるはずです。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に執筆した「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

今回は、今までと少し毛色が変わって、コミュニケーションに関する話題です。同調圧力の強い人とどう付き合うのか? 議論タイプのリーダーが率いるカーネルコミュニティと、同調タイプのリーダーが率いるコミュニティとはどういう違いがあるのか? そういうお話を伺いました。

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小崎資広さん(右)

リーダーが同調圧力タイプだと裏チャンネルが発達する

リーナスが偉いのは、議論しても禍根を残さないところ

Linuxカーネル開発は実用主義

◆     ◆     ◆

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今回、同調圧力の強さによって、コミュニケーションの形が変わるという話を伺いました。受け手が議論タイプでないときには議論はしない。組織が議論タイプでないときには裏チャンネルを使う。興味深い話でした。

大きな組織では、他のメンバーの感情を害さないように配慮することが重要だと考える人も多いでしょう。しかしその配慮が議論の妨げになることもあります。一方でLinuxカーネルの開発コミュニティは、激しく議論を戦わせ、ときに口汚く罵られる場です。議論タイプの組織がうまく回るためには、プロジェクトリーダーが理想主義ではなく実用主義であることが重要なのかもしれません。

正しさを議論する場合「Xが正しい」は「Xでないお前の主張は正しくない」という意味になりがちです。他人に「お前の主張は正しくない」と言われたと感じて、カッとなって「いや俺が正しい」と反論してしまうと不毛な争いになってしまいます。

一方、有用性を議論する場合「Xが有用」は「私の想定している目的にはXが有用」という意味になりがちです。意見の食い違いが起きたときには「どういう目的を想定しているのか?」という疑問が生じて、目的を明確化する生産的な議論が始まります。

哲学の用語としての実用主義(プラグマティズム)は「普遍的な真理は存在せず、自分にとって有益かどうかで自分にとっての真理が決まる」という考え方を指す言葉です[1]。この考え方は不毛な争いを避ける上でとても有用です。

次回は、習慣とスランプについてお話を伺います。本連載の第2回でも「毎日やることが重要」という話がありました。でも、毎日やるのは難しいですよね。このあたりのことを深堀りしたいと思います。(了)


[1]「プラグマティズム」(W. ジェイムズ、岩波書店、1957年)。実用主義派のWilliam Jamesによる著書。


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。
◎インタビュー会場として、「イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA(シンカ)」にご協力いただきました。ありがとうございました。


変更履歴:
2014年10月02日:「実用主義であること重要」を「実用主義であることが重要」に修正しました。編集のチェック漏れでした。申し訳ありませんでした。


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