tech
家事のルーチン化で日々のタスクを乗り切る──コデラ総研 家庭部(37)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第37回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「家事のルーチン化で日々のタスクを乗り切る」。
文:小寺 信良
カバー写真:風穴 江(「tech@サイボウズ式」編集部)
普段私たちの仕事というのは、どこかで終わりや区切りがある。納品するまでかもしれないし、就業時間が終わるまでかもしれない。何かしら単位で区切れるプロジェクトは、タスクの進捗が分かる。お尻から逆算していって、ここまでにこれができてないとヤバイといったことは、自ずと導き出されるからだ。
家事がこういったビジネスと大きく違うのは、家事には終了点がなく、延々と生きてる限りループするタスクの集合体だという点だ。燃料を消費しながら回転するエンジンに近い。プロジェクトとしての全体のサイズや期間が存在しないので、こういうものに進捗は発生しない。ただ、放置するとスタックはする。いったん1つのタスクがスタックすると、全体の回転が破綻するので厄介である。
ではなぜスタックするのか。それはタスクを毎回イレギュラー処理でこなそうとするからである。気がついたらやろうとか、目に余るようになったらやろうとか、今日は疲れたから明日でいいやとか、なんらかの閾値を設けてしまうからだ。
この閾値は、数値的なものではなく感覚的なものなので、必ず変動する。「目に余るようになったら」のようなふんわりした基準は、だんだんと「目に余る」に耐性がついてきてしまい、閾値がどんどん上がってくる。しまいには「汚部屋」と呼ばれるまで掃除を放置したり、洗濯物が2週間溜まって着るものがなくなり、仕方なく下のほうからまだマシなパンツを引っ張り出して履くとか、靴下を裏返しにしてもう1回履くとか、マンガでしか見たことないようなことが実際に行なわれてゆく。こうなるともう飲み会のネタとしても笑えない。
こういった事態は、「まともに暮らす」という意味や目的がない場合が危険である。特に独身で一人暮らしのケースでは、その状態を見る他人がいないので、放置状態に陥りやすい。一方筆者宅が男一人の割にその状態に陥らないのは、子どもが学校に行っているからである。平日は必ず同じ時間に起き、学校にやり、夜はメシを食わせて宿題をやらせ、風呂に入って寝かせる。こういった時間が固定されたパターンで生活する者が家庭にいるなら、そこを軸に筆者の行動を合わせ込んでいく。
いや合わせ込んでいける、と言い直したほうが正確だろう。文筆業とは基本的に自営業であり、いつ起きていつ寝てもいい。仕事にしても、いつやってもいい。そういう職業だから、パターンで動く相手に合わせられる。
逆に言えば、家事だっていつやってもいいわけだが、そうなると前出のように家事をイレギュラー処理しているのと変わらなくなってくる。だから毎日の家事は完全に固定ルーチンの中に組み込むことにした。
「やらなきゃ」を日常に埋め込む
次の図は、筆者の平日のパターンをサイボウズLiveに入力した結果である。計画を立ててこうしていったわけではなく、1年ぐらいかけていろいろパターンを試しながら落ち着いた結果だ。一度パターンが決まってしまえば、あとは習慣化するので、「やらなきゃ」という感じがどんどんなくなっていく。
ポイントは午前中と夜の動きである。朝子どもを送り出したあと、洗い物は食洗機に入れるだけ、洗濯物はあれば追加でやる。たいていは前夜に終わっているので、やらないときも多い。あとはゴミ出しなどをやり、朝のニュースをネットで読みながら、ゴロゴロする。睡眠が足りなければ二度寝することもある。
その後ダイニングや階段など汚れやすいところの掃除をちょこっとやって、あとは仕事だ。仕事中も煮詰まったりするとその辺を掃除して回る。考えるときにうろうろ歩き回るという人も多いが、筆者はそのついでに掃除して回ることを思いついたのである。そうこうしているうちにいい考えが浮かんだりするので、そのときは掃除を放棄して仕事に戻る。だからうちでは、散らかってはいないが掃除道具があちこちに放置されているという現象が起こる。
夜のポイントは、お風呂のあとの動きだ。洗濯機が脱衣所にあるので、風呂上がりに洗濯機を回す。1日分はたいていこの1回で済むが、洗いきれない場合は翌朝だ。また日によっては大した量じゃない場合もあるが、少なくても必ず回す。
うちは乾燥機一体型なのだが、毎回の量を少なくすれば、それだけ取り出してたたむという作業が少なくて済む。たたんでもたたんでも終わらないという状況では、「なんでオレがこんなことを……」と我に返る瞬間が出てくるので、それが出る前に終わる少ない作業量というのが重要なのである。積んであるタスクをいっぺんに処理するのではなく、常に小さくタスクを刻んでいくことで、いつもタスクが積まれてない状況にしている。
その後2回目の食洗機を回す。夕食後は細々した食器類を全部洗い、2回目は鍋釜類やまな板などの大物を洗う。洗濯機も食洗機も、基本的には放り込んでスイッチを押せばあとは勝手に終わるものだ。調理はクリエイティブな作業なので、そこは自分の手を使うことを重視している。冷凍食品やインスタント食品はめったに使わない。一方食器洗いは単に後始末なので、そこは手作業を極力減らしている。
うちではものすごく家事を自動化しているので、電気代はかなり高いほうだろう。洗濯機は多ければ1日に2回、食洗機は少なくとも4回は使う。2人でこの回数はやはり多いと思う。
震災以降、電気を使わない生活がもてはやされたりもしたが、エネルギー問題はテクノロジー上の課題にしか過ぎないので、いずれ解決する。人が苦労して電気代を5000円節約するよりも、その金を払っても人をクリエイティブな作業に回すほうが、自分らしい生き方だと思っている。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
SNSシェア