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窓掃除なんかロボットにお任せ! HOBOT最高!──コデラ総研 家庭部(39)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第39回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「窓掃除なんかロボットにお任せ! HOBOT最高!」。
文・写真:小寺 信良
1960年代以降に家事の電化が爆発的に進み、家事労働は大幅に軽減された。冷蔵庫、掃除機、洗濯機といった家電が社会にもたらした恩恵は決して小さくない。今となっては当たり前過ぎて、それなしでどうやって家事をやるのか分からないぐらい、どの家庭にも存在する。
その一方で、家事の自動化は、近代社会における大きなテーマである。例えば炊飯器、洗濯機、あるいはホームベーカリーといった家電は、仕込んで完成まで、自動である。内部的な構造はシンプルだとしても、本来人が付きっきりで居なければならない作業を、決められた時間でこなしてくれる。考え方としては、ロボティクスのひとつの形である。
一方で掃除は、掃除機によって体力的な問題は解決されたが、付きっきりで人が動かす作業である。2002年にルンバの登場により、自動化の光明が見えてはいるが、初登場から15年が経過した現在、初期モデルから劇的な進化を遂げただろうか。答えはNoだ。
15年、である。相変わらずケーブルに絡まって動けなくなるし、自分で椅子をどかしたりもしないし、階段も掃除できない。障害物の多い床の掃除というところに果敢にトライアルした心意気は評価したいが、競争がないとこうまでテクノロジーは進化しないのかと呆れるばかりである。
他方で掃除の世界には、まだブルーオーシャンの分野が残っている。窓掃除だ。業務の世界では電動ゴンドラと組み合わせて、ビルの窓を自動で掃除する装置もお目見えしているが、まだ最近の高層ビルに限られる。多くのビルでは未だゴンドラに人が乗り込んで、拭き掃除をしているのが実情だ。
家庭内においては、ようやくテレビで便利ロボットとして窓掃除用のロボットが紹介される程度にはなった。ただ便利なのは分かるが、窓掃除だけでいくら出せるのか、そのコストバランスが問題である。
うちは2階建ての一軒家だが、小さな交差点の角に立っているので、三方にガラス窓がある。洋風の飾り窓といったコジャレたものはなく、フルのアルミサッシなので、窓面積が広い。中から見れば壁面のほとんどが窓なので、仕方なくどこかの窓を塞ぐ格好で家具を配置しないと、置き場所がないのだ。するとどうなるか。窓の掃除ができなくなるのである。
2階の窓など、半身を乗り出して外側から拭こうにも、届かない。1階の窓も、道路と敷地を隔てるコンクリートブロックが窓際から20cmぐらいのところに立っているので、ろくに体が入らない。従っていったん道路に出て、自宅のコンクリートブロックを覗き込む格好でしか窓掃除できない。当然、風雨にさらされて汚れ放題である。いつか何とかしたいと思いつつ、ずっと掃除しないままだった。
シンプルながら十分な能力
2014年初頭に、この連載でCESショーにおけるロボディクス事情をお伝えした。このとき、窓掃除ロボットをご紹介したのだが、覚えていらっしゃるだろうか。
あのHOBOTという製品が、実は2014年秋ごろに日本で発売されているのである。発売当初は価格が4万円程度だったので、個人的な事情で申し訳ないが、うちの懐具合からすると合わなかった。だが最近また思い出して調べてみたところ、実売が1万円以上値下がりしていた。2万7000円程度なら、うちの窓の多さからすれば許容範囲かと思ったので、思い切って購入してみた。
製品名としては、「HOBOT-168」というモデルである(写真1、写真2、写真3)。バキュームで窓面に貼り付き、2つのローラーを使って掃除してくれるというものだ。本体のほか、掃除用のマイクロファイバーの布が12枚も付属していた。2つセットなので、6セットもある。さらにこの布は裏表同じ素材なので、裏返しても使える。国産品ではない家電では、消耗品の入手が大きなハードルになる場合もあるが、汚れたら洗えるし、これだけ数があればしばらくは困らないだろう。
内部にはバッテリも搭載するが、基本的にはACアダプタを繋いだままで使用する。内部バッテリは、何かのトラブルでACアダプタが外れた際に、いきなり落下しないための予備電源である。落下防止のためのロープも取り付けられている。最初はバッテリの充電に数時間かかるが、いったん動作可能なぐらいまで充電できれば、あとは使っているうちに充電できる。
掃除したい窓に当てて、スイッチを入れると吸着モーターが動作して、窓に吸い付く。あとはリモコンボタンでコースを設定すれば、自動的に掃除してくれる。標準は、上から下に移動しながら掃除するコースだ。どこでもいいから適当な場所に貼り付けると、まずは窓の右上を目指して移動する。そこから左右に移動しながら少しずつ下に下がっていき、一番下まで掃除すると、ちょこっと上まで登ってそこでコース終了である。
終了時にはアラームが鳴って、知らせてくれる。人間が電源を切るまで、窓には貼り付いたままだ。ガラスクリーナーなどを軽く吹き付けておいても、滑らずに掃除してくれる。本体には室内専用とシールが貼られているが、まあベランダがある場所で外側を掃除する程度なら、落ちても誰にも迷惑がかかるわけではないので、室内と同じだろう。
実際に半間のガラス窓半分を掃除するのに、2分半ぐらいである。1回では心許ない場合、そのまま続けてもう1回掃除させても5分だ。なおどうしても掃除部分が丸いので、窓の四隅が掃除できない。そこはまあ、あとで人がちょこっと拭けばいい話である。
人がやるのとどっちが綺麗かと言えば、そりゃ人が一生懸命掃除したのには敵わない。だがほっとけばそこそこ綺麗になるわけだから、うちの場合はそれで十分である。
まだ全体の半分ぐらい掃除しただけだが、掃除させている間に別のことができる。例えば桟のゴミを掃除機で吸うとか、ロボットと協働で一気に掃除するというのは、たまらなく面白い。動作音はハンディークリーナーぐらいの音はするが、何をしているのか一目瞭然なので、見かけた人も納得してくれる。近所のおばあちゃんもわざわざ見に来て、「今はハイカラなものがあるんだねぇ」と感心して帰っていった。この分かりやすさは、ひとつの強みだろう。
これを買って得するかどうかは、ひとえに窓の多さと高さによる。手の届かないところ、人がやると危険なところこそ、ロボットの出番だ。こういったロボットが贅沢品ではなく、納得できる価格で家電として買える時代になってきたのだなぁと感じる。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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