ボツワナの農村格差はチームワークでなくせるか? 日本から来た私が出したたった1つの答え
こんにちは。元サイボウズの長山です。現在、育自分休暇制度を利用して、アフリカのボツワナ共和国で2年間のボランティア活動(青年海外協力隊)にチャレンジしています。前編では、これまでのボツワナでの活動を振り返りました。後編では、ボツワナで学んだ「チームワークの考え方」、そして「これから」についてのお話ししたいと思います。
「チームってなんだろう」自分で掲げた目標に苦しめられる。
「草の根の活動で信頼関係を築いて、何かひとつのゴールに向かって成果をだせるチームをつくること」「そのチームの一員として自分の力を発揮すること」
これは私が、ボツワナに来る前に「2年間のボランティア活動の中で達成したいこと」として掲げた目標です。ぱっと見て「地道に頑張ればできるんじゃん?」と思えますが、そもそも「チーム・成果って何か」を誰も決めてくれないし、評価してくれるひともいません。自分で決めて進むしかないんです。これが想像以上にタフでした。
ふつう、村おこしや地域活性化では、村や町の単位をひとつのコミュニティとして、特産品や地域特有の景観といった資源を利用しながら、住む方々のやる気を盛り立て、特産品の売り上げや来訪者を増やすのが一般的なストーリーです。ですが、今回はちょっと事情が違います。
遠いサバンナに置き去りにされた住民の思い
というのも、所属部署の支援先である4つの村は、もともとそこにあった村ではなく、政府の政策によってつくられた「狩猟採集民族の再定住地域」なのです。
昔はサバンナを自由に移動し野生動物を獲って生活していた彼らですが、ボツワナ政府から「もうこの土地で狩りをしてはいけません。政府が新しい土地、家、学校、病院を用意します。食料も生活用品も配給するので、ボツワナに住む他の民族と同じように、近代的な生活をしなさい」と半ば強制的に移住を余儀なくされ、もう15~35年ほど村人がまるごと政府の支援に頼って生活をしているのです。
つまり、地域活性化に必要な「地域の資源」活動の原動力となる「住民のモチベーションやリーダーシップ」は、遠い故郷のサバンナに置いてきてしまったのです。
もちろんボツワナ政府も長年、雇用創出プロジェクトに取り組んでいますが、村人全員が援助を受けている状況で村の中で経済をまわすことは難しく、主要都市から何百キロも離れていて公共交通機関もない村から消費地にアクセスしてモノを売るのも大変です。
また、村の支援を担当しているオフィサーの優先順位はどうしても、食料配給の事務処理や地域統制の管理業務の方が高くなってしまうので、新しいビジネスを立ち上げたり、村人がつくった工芸品のマーケティングをして販路を得たりする創造的な活動にはなかなか手がつけられません。この悪循環が、行政と地域の依存関係を深めてしまっているのです。
そういう状況で、「村のコミュニティの中でチームをつくってチームワークを向上する」ことだけで問題を解決しようとするのは無理があるというか、もう少し違う視点からのアプローチが必要だと感じました。
ボツワナに来る前は、「草の根で村内のチームワークを向上することがただひとつの使命!」と思っていたのを前提からひっくり返してしまい、「そもそもチームって何だろう……」と、自分の目標に悩まされる日々が続きました。
悩み続けて見えた私なりの「チームと成果」
しかし悩み続ければなんとか答えはでるもので、私なりに「チーム」と「成果」を考えてみました。
まず、おもいきってチームの範囲を広げてみました。都市と地方の間に格差があるなら、その両方が協力しないと解決できない。チームワークの力を発揮するべきは、「ボツワナの中のお金持ち(エリート層)」と「村の失業者の方々」両方のコミュニティだと発想を変えました。
都市に住む高所得者層はクラフト商品を買ってくれるお客さんになってくれるし、マーケティングに長けたひとが多い都市部のプロボノ都市部のプロボノとしてきっと力になってくれるはずです。地方の役所に務めるエリートオフィサー達の力も必要です。
直接的な村人の支援だけに注目するのではなく、村人を支援してくれるボツワナ国内の人材を発掘してコミュニティ化し、ゆるやかなチームをつくれたらと考えています。
チームの「成果」については、この課題にかかわるみんなが「共通して目指せるゴールは何か」をもとに考えました。それは「このクラフトビジネスを成功させること」です。私は現在、青年海外協力隊の同期隊員とハンドメイドクラフト商品の製作・販売のプロジェクト「Gift from Botswana(ギフト フロム ボツワナ)」を立ち上げ、ボツワナの村落部の所得向上を目指しています。
村の女性達が楽しく働き、お客さんがお気に入りの商品に満足し、村に仕事ができることで政府のオフィサーも喜び、この活動を応援してくれた人達もその成功をうれしく思ってくれる。そんなプラスの連鎖をつくり、そこで生まれた喜びをみんなで共有できるような仕掛けをつくれたら、きっとチームは成長していけるんじゃないかなと。
これまではひたすら「村の女性達がつくったクラフト商品を売ること」に集中してきましたが、後半戦はもう少し視野を広げて、都市と地方のコミュニティをつなぐこと、そのコミュニティのチームワークを向上していくことにチャレンジしていきたいと思います。
「助けてくれてありがとう」ではだめ、「あなたと一緒に働けて良かった」を目指したい
最後に「チームの一員として自分の力を発揮する」という目標について。
これを達成するには、まず自分のことを「チームの一員だ」と認めてもらうことが必要です。が、なかなか難しい。「一方的に教えたり指示したりする人」ではだめだし、「ただ親切な人」や「ボランティアとして受け入れてあげている人」もだめです。
この信頼関係を築けるかどうかが、自分がチームに貢献できるかを左右します。これはこの1年の間に、少しずつ積み重ねているのではないかと思います。私自身もまた、彼女ら、彼らのことをとても信頼するようになりました。
「どのように自分の力を発揮するか」もポイントです。
私は世の中の役にたてそうだと思って7年間も化学を専攻したのに、結局自分は化学の研究者に向いてないと気づいた経験があります。そのことから、「自分が好きで得意なことをがんばることが、一番の社会貢献だ」と考えるようになりました。ここボツワナでも、自分が好きで得意なことをがんばって、チームに貢献していきたいと思っています。
例えば、サイボウズでの経験で得たマーケティング、ITのスキルを生かすこと。外国人として目立てる強みを生かしたプロモーション、よそ者だからこそもてる気づきを伝えることや、所属にとらわれずにコミュニティの隙間を埋めること。
帰国するときには、村の女性やオフィサーから「助けてくれてありがとう」ではなくて、「あなたと一緒に働けて良かった」と言われたいです。
国際「援助」じゃなくて、国際「協力」。お互いの強みと弱みを補完して協力しあって、それぞれがチームの一員として成果の喜びをわかちあえるといいなと思います。それが私の理想である「国際協力=世界のチームワークをよくすること」です。
文:長山悦子、編集:吉田将来
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