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子供会の役員連絡にメールが使えない5つの理由──コデラ総研 家庭部(48)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第48回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「子供会の役員連絡にメールが使えない5つの理由」。
文:小寺 信良
カバー写真:風穴 江(tech@サイボウズ式)
昨年はPTAで広報委員長を務めたが、今年で娘も小学6年生。小学生に関わり合う活動も、最後の1年となった。さらに下の子が生まれる可能性もないし、本当に小学校との付き合いもこれで最後である。何ができるかなと考えた結果、今年は、子供会の会長を引き受けることにした。
子供会というのも、PTAと並んで昔から存在するものの、実態がよく分かっていない組織である。皆さんも子供のころ、夏休みには首からカードを下げてラジオ体操に行った記憶があることだろう。ああいうのを主催しているのが、子供会だ。
子供会の定義は、地域でスポーツやレクレーションなどを通じて、子供の健全育成を目指すボランティア団体だ。一般的には「○○丁目子供会」といった名称だが、広義には「○○少年団」といった団体も入るという解釈もあるようだ。
子供会のポイントは、地域に密着していることである。自治会や町内会の組織の一部として子供会を持っている地域や、学校の通学区域ごとに別途組織する地域など、いろいろな形態がある。僕の地域の場合は、組織範囲は自治会と同じ区域だが、下部組織ではなく別団体だ。ただ地域のお祭りを始め、自治会対抗運動会などで綿密な協力関係がある。ずっと昔は自治会の中にあったのかもしれない。
各子供会は、それぞれが独立した任意団体ではあるが、市町村レベルで連合会や連絡協議会としてまとめられ、これが集まって公益社団法人「全国子ども会連合会」という形で全国的な組織化もされている。組織構造としてはPTAと似ている。
ただPTAと決定的に違うのは、PTAが保護者と先生によって構成されるのに比べ、子供会の構成員は「子供」である。役員や保護者は、あくまでも「指導者」という立場になる。
活動に対するメールの問題点
子供会の役員は、保護者からの立候補や推薦、抽選などから選抜される。うちの子供会役員は10名で、内訳は会長2名、副会長2名、書記2名、会計3名、全国子ども会連合会担当1名となっている。僕以外は全員女性だ。会員数(子供の数)としては250名超で、近隣ではもっとも大きな子供会である。
子供会は活動歴も長いため、各役職の役割が綿密に分担されている。トップダウンで指示が必要なケースはほとんどなく、むしろ各役職から上がってくる報告のほうが多い。報告はかなりの頻度におよぶことが予想された。
メールによる連絡は、すぐに破綻することは目に見えていた。理由は5つある。
(1)S/N比が悪すぎ
メールというサービスは、今となってはスパムも含め、様々な加入サービスからのお知らせで日常的にメールボックスがパンク状態にある。もはや連絡手段というよりは、プッシュ型の通知ツールとなってしまっている。
(2)同報メールが難しい
役員全員がスマートフォンユーザーだが、10人ものCCやBCCが全員問題なく使えるのか。Gmailのように連絡先をグループ化できればいいが、キャリアメールしか使わない人には無理だ。メーリングリストを運用するという手もないではないが、所詮メールなので、(1)の問題が解決できない。
(3)タイトルと本文が加速度的にズレていく
CCやBCCが難しいとなれば、誰かが同報メールしたものに対して返信するのが一番楽だ。だがそれを繰り返していくと、メールタイトルと話の内容がズレていき、タイトルによるスレッド化が機能しなくなる。「初めまして小寺信良です」というタイトルのメールが半年ぐらいやりとりされることになりかねない。
(4)返信を続けると本文が汚れる
複数人が互いに返信を続けていくと、誰も返信時に引用された相手の本文を消さないので、加速度的に本文に積み重なっていく。たいした内容でもないのに、いつの間にか3000字ぐらいのメールをやりとりするような羽目に陥り、わけが分からなくなる。
(5)気軽な返信ができない
メールとなるとどうしてもフォーマルな文章になってしまい、ひと言「了解」と返信すれば済むことなのに、妙に手間がかかる。こういったストレスが積み重なると、相談や連絡が滞るようになり、活動が活性化されない。
これらのことは、昨年広報委員会の三役をやって、すでに経験済みだ。たった3人のやりとりに過ぎないのだが、上記のような問題が起こっていた。これが10人ともなれば、混乱は目に見えている。何か別の手段を考えないと、とは思っていた。
だがその時点では、LINEを導入するべきか、躊躇があった。なぜならば、当時は個人的にLINEはメインの連絡手段ではなく、むしろFacebookのメッセンジャーのほうがメインであったからだ。しかもLINE上で、大人数のグループでディスカッションした経験がなかった。ただ、将来的には子供もLINEを使うようになるのであれば、保護者らが使ってどういうものなのか体験しておくのは、悪いことではない。
連絡手段をどうするのか逡巡していたのだが、意外なことにLINEを使おうと提案したのは、もう1人の女性会長であった。彼女はすでに上の娘とLINEで日常的に連絡を取り合っており、慣れているようであった。彼女の熱心なプレゼンにより、連絡手段にLINEを利用することはすんなり了承された。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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