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子供会にLINE導入のハードルとメリット──コデラ総研 家庭部(49)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第49回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「子供会にLINE導入のハードルとメリット」。
文・写真:小寺 信良
子供会役員の連絡手段としてLINEを導入することが決まったのだが、10人中すでにLINEのアカウントを持っている者は7人だった。割合としてはかなり多いように思われるかもしれないが、実は全国平均に近い。
平成27年5月に公開された総務省の「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、平成26年時点の30代のLINE利用率は69.8%、40代で63.4%となっている(図1)。したがって7割のメンバーにLINE利用者がいたとしても、不思議ではない。内訳としては、上の子が高校生ぐらいの保護者は、子供との連絡手段がLINEになっているため、使うようになったという。さらにはママ友の連絡手段としても、今はメールよりもLINEのほうが気安いとして、よく使われているようだった。
LINE未経験者3名のうち、2名にはLINEのアカウント作成から使い方までをレクチャーした。1名はLINEを使うことに抵抗があるとのことだったので、連絡事項をメールで行なうことにした。うまく回るようになれば、そのうち気が変わるかもしれないという期待もあり、当初9名でLINEのグループがスタートした。
こういったグループ運用のコツは、何か新しい事項がなくても、定期的に「そう言えばあの件どうなった?」といった発言を投下することだ。いつも何か事態が動いている感が出るだけで、グループが活性化する。こういった手法は、古き良きパソコン通信時代にボードリーダーとして活動していたときのノウハウである。
メンバーの中で一番LINEを活用しているのは、意外にも初めてLINEデビューした1名である。珍しいということもあるのだろうが、好奇心が働いているうちに活発な議事や連絡事項がどんどん流れてくるので、その利便性に気づいたというところだろう。
ただ連絡事項ともなると、かなりの文章量になる。スマートフォンでそれを入力するのはしんどいので、メインで利用しているのはパソコン用のLINEクライアントである。これがあることで、LINEの稼働率が全然違ったものになった。
スマートフォンのLINEクライアントは、スマートフォン1台に縛られており、別のスマホのクライアントを有効にすると、その時点で「スマホを乗り換えた」という扱いとなり、過去ログが参照できなくなる。一方パソコン用のクライアントは、同時に利用できるのは1つだけという縛りがあるが、複数のパソコンにクライアントをインストールしておき、ログインして利用できる。
例えば家にいるときはデスクトップ機でログインしておき、外出時にはノートPCでログインするという使い方だ。ログインすれば、その場で過去ログがダウンロードされる。つまりスマホのクライアントがメインで、それに対するサブクライアント的な立ち位置だ。
普段は仕事柄、大半の時間をパソコンで原稿を書いて過ごしているので、いちいちスマホに持ち替えずに連絡の返信などができるのは便利だ。利用を始めた当初はグループのノートが参照できなかったり、スタンプや絵文字も表示されなかったが、今はアップデートによってスマホ版と機能の差はほとんどなくなった。
LINEのメリット
実際にLINEによる活動の連絡をすでに半年以上行なっているが、目立ったトラブルもなく、アクティブな状態を維持している。LINE利用に消極的だった1名も、やっぱり話の経緯が分からないと不便ということで、夏ごろからLINEを導入し、現在は全員がLINEのグループ内で連絡が取れるようになった。
この半年の中でいろいろメリットも見えてきたので、整理してみる。
(1)話が他の連絡手段と混じらない
これは個人的な理由だが、50代男性では、LINEの利用率はそれほど高くないだろう。せいぜい娘、息子との連絡ぐらいで、仕事上の連絡手段としてはほとんど稼働してないので、何かメッセージが届いたら、ああ子供会か、と分かるんである。
逆にすべての連絡がLINEに集まるようになったら、結局はメールの欠点と同じように、重要なものが見つからない状態になるだろう。今が一番いいバランスで使えるタイミングだった、ということだ。今年の子供会役員は、これまであまりLINEの利用率は高くなかったため、ほぼ全員がこのメリットを享受できている。
(2)グループでも既読が付くので、伝達率が分かる
これは結構重要なポイントだ。メールでの連絡網では、いちいちメールを読んだら読んだと返信してください、というルールが決まっている会もある。この手間がないだけで、連絡の効率が格段に上がった。誰が読んでないのかまでは分からないが、各投稿に対して今伝達率が何%ぐらいだなというのが分かるので、次の連絡を打つタイミングが分かりやすくなる。
(3)反応が良く、決めごとがやりやすい
メールと違ってLINEのようなチャットでは、単に○とか×の返信だけでも、十分会話が成立する。例えば何日の会議や行事に出られる人、といった出欠を取る機会は結構多いのだが、メールではなかなか全員の意向が集まらないところ、LINEではスピーディーに返事が貰えるため、決めごとがとにかく早い。
(4)流れると困る要件は、ノートに貼れる
グループにはノートという機能があり、トークの内容をコピーして貼っておけるスペースがある。トークは話がどんどん流れていくので、過去の重要な項目を参照するときに見つけづらい。あとできっと見返すなというまとめ的な項目は、ノートに貼っておけばいつでも全員が見ることができる。
(5)意外に通話が使える
今改めて考えてみると、今年は子供会役員名簿というものを作っていない。すべてLINEで済んでしまっているので、自宅や携帯電話の番号をリスト化する必要がなかったのだ。お祭りなどのイベントでゴチャゴチャしている中、緊急に相手に伝えたい案件は、LINEの通話機能を使っている。これもキャリアの着信音と違う音が鳴るので、子供会の誰かからの連絡だとすぐに分かる。
こうしてメリットを上げていくと、これまでのようなメールと電話だけでは手間がかかった部分が省力化できるツールであることが分かる。LINEが今後も失速せず、コミュニケーションツールとしての定番的地位を守り続けられるのかはまだ分からないが、子供が中学や高校になれば、どのみちこの手のツールを使うようになるだろう。その前に、保護者が良い利用方法を経験しておくことは、無駄にはならない。
学校で開催される多くのインターネット安全教室のようなところでは、怖さ、危なさといったデメリットしか教えておらず、どこに利用のメリットがあるのかを教えていない。ネガティブなイメージしか持たない状況で利用しても、メリットは把握できない。こういった状況を改善するには、誰かがリードしてモデルケースを作っていくことが必要なのだろうと思う。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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