tech
ロボット掃除機は本当に便利なのか──コデラ総研 家庭部(52)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第52回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ロボット掃除機は本当に便利なのか」。
文・写真:小寺 信良
ロボット掃除機といえば、長年iRobot社のルンバがその代名詞として君臨し続けており、今では類似品も含めて全部この手の製品は「ルンバ」と呼ばれてしまう状況にある。円盤状の自走式ロボットがあちこち動き回って掃除していく様を動画や量販店の掃除機コーナーで見かけた人も多いことだろう。今年も10月に新モデル「ルンバ980」が発売されたばかりで、公式ストアでの価格は13万5000円(税込)となっている。
一方サイクロン型掃除機で人気の高いダイソンも、「Dyson 360 Eye」でこの分野に参入した。他のロボット掃除機の4倍の吸引力として誇らしげだ。キャニスター型掃除機では、「吸引力が変わらない」ことを前面に押し出していたが、実際には吸引力は他社の半分ぐらいしかないというのは周知の事実である。ただその半分の吸引力がゴミを吸ってもずっと変わらないというのは事実で、そこを巧みに利用した広告を展開してきた。一方でロボット掃除機分野では本当に自信があるのか、吸引力を前面に打ち出すという広告宣伝を展開してしまうあたり、その巧みさに舌を巻く。こちらのお値段は、公式サイトで14万9040円(税込)となっている。
一般的なキャニスター型掃除機であれば、安いものは数千円、5万円も出せば高級モデルが手に入る。それがロボット掃除機ともなると、スタートラインが5万円からとなり、15万円弱ともなれば掃除機としては超ハイエンドということになる。キャニスター型なら、ビル掃除で使うような業務用機が買える値段だ。それでもロボット型掃除機を導入した人は、非常に満足しているようである。
筆者はロボット型掃除機の導入には、消極的であった。なぜならば、うちは仕事柄、常時借り物の家電製品が家中にゴロゴロしている。個人持ちの家電もあるのに、同ジャンルの家電がさらに2つ3つ常にある状態なので、おそらく一般家庭の2倍ぐらい家電製品があるはずである。このため、電源ケーブルの配線がテンポラリ的にあちこちに敷設してあるため、ロボット掃除機を走らせるスペースがないのである。
だが、一度ぐらいは使ってみないと、買った人が何に満足しているのか、その価値観がよく分からない。かといっていきなり10万円オーバーの出費をして、結局あんまり使わないということになってもイタい。というわけでAmazonやら価格.comやらをいろいろ調べて購入したのが、ツカモトエイムの「AIM-RC01」というモデルである。購入価格は1万2000円。これなら使わなくなっても諦めはつく。ツカモトエイムは、以前ご紹介した窓掃除ロボット「HOBOT-168」の販売代理店だ。
使ってみて驚いた!
AIM-RC01は、直径およそ25cmの円形お掃除ロボットである。正面に当たり検知のバンパーがあり、その下には回転する2つのブラシがある(写真1)。これでゴミを中央に掻き込み、吸引孔から吸うという仕掛けだ。バッテリは充電式で、自分で交換可能。自動で充電に戻るような機能は当然なく、ボディ横にあるコネクタに自分で接続する必要がある。
実際どれぐらい掃除できるのだろうと、充電完了後、6畳のダイニングの床を掃除させてみた。フローリングなので掃除はしやすいはずだが、椅子がたくさんあるので、これは全部テーブルの上に乗せて動きやすくしてみた。
動作音はそこそこ大きく、ラジコンカーが動き回っているような音がする。前進よりもバックの方が音が大きい。机や壁に当たっては右回りに少しずつ角度を変えつつ前進していくので、気長に待っていればそのうち床全部が掃除できるという仕掛けである。ゴミが落ちていてもなかなかそこにヒットしないので、ずっと見ているとイライラするが、人がついているのであれば自動でやらせる意味がないので、仕事に戻りつつ終わるのを待った。
朝食はパンが多いため、テーブルの下にはどうしてもパンくずが落ちる。それらが綺麗に拾えればOKという程度に考えていたのだが、30分コースで掃除させて、クリーナーパックを開けて驚いた。パンくずなどの大きなゴミも拾えているが、それ以上に大量にフィルターに固まっていたのが、猫と人間の毛である。フィルターにびっしり、ほぼ2cmぐらいの厚みになっていた。
もともとダイニングには、普段からダスキンのフロアモップを常備させており、ゴミが目に止まった段階で掃除をしている。このときも2日前に掃除したばかりで、大したゴミは取れないと思っていたのだが、筆者の目に見えていないだけで、実際にはペットや人間の毛のような細いものが毎日大量に落ちているということなのだろう。
そもそも人間が掃除しなきゃと思うのは、埃のような形で、ある程度ゴミが認識できるようになった時点である。一方ロボットは、人間では汚れてないだろうと思って掃除をしないような部分も、実に愚直に掃除しに行くので、見えないゴミが拾えるわけである。従って人力による目立つところの掃除と、ロボットによる機械的なパターンの掃除の2つを組み合わせると、かなり綺麗になるわけだ。
丸いボディは角が掃除できないとか細かいことを言う人がもあるようだが、実際に使ってみると、そういうのは些細な問題である。筆者は埃があるのが許せないような潔癖性ではないが、さすがにあれだけの毛の塊を見せつけられると、せめてロボットだけは毎日動かしとくかという気になる。
実際に毎日動かしていても、今日は空振りだったということはなく、それなりの量の埃が取れる。バッテリが2部屋分ぐらいしか保たないのが残念なところではあるが、1日2部屋ずつ掃除できれば十分だ。
人間しか住んでいない場合はそれほど埃もないかもしれないが、ペットを飼っている場合、抜け毛の掃除を本気でやると、それだけでかなりの労働力が必要になる。それほど高級モデルじゃなくても、ロボット掃除機は効果があるということが分かった。(了)
「コデラ総研 家庭部」の「掃除」ネタ一覧
◎掃除機のリクツ──コデラ総研 家庭部(11)
◎いつ掃除するのか。今で……──コデラ総研 家庭部(12)
◎窓掃除なんかロボットにお任せ! HOBOT最高!──コデラ総研 家庭部(39)
◎2台目の掃除機にダイソンを買い増す──コデラ総研 家庭部(40)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
SNSシェア