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ホームベーカリーの限界点──コデラ総研 家庭部(54)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第54回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ホームベーカリーの限界点」。
文・写真:小寺 信良
先日、2台目のホームベーカリーが壊れたので、3台目を購入した。ホームベーカリーでの食パン作りはおよそ5年前から始めたので、2.5年に1台ぐらいのペースで買い換えていることになる。
特に「朝はパン」と決めているわけではないが、起きるころにパンの焼けるいい香りが漂ってきて、それで目覚めるというのは悪くない人生だ。いや逆に、家庭の幸せを感じる瞬間でもある。これがやめられなくて、4年も続いている。
ホームベーカーリーの主流は、だいたい1斤から1.5斤程度のものだ。まとめて大きなものを焼くよりも1斤ぐらいをこまめに作ったほうが、おいしくいただける。自分で作るものは日数が経つと固くなるし、カビやすいからである。
うちではだいたい1週間に1回程度作っているが、そうすると年間50回。2.5年で壊れたとすると、だいたい120〜130回ぐらい使うと限界がくるという計算になる。2台とも故障の原因は、よく分からない。ある日突然、ちっとも膨らまなくなるのだ。モーターが劣化してうまく材料がこねられないのか、ヒーターの温度調整ができなくなるのか、その辺りだと思う。
実は最初のころ、冬にちっともパンが膨らまなくて故障を疑ったことがある。ところがネットで検索してみると、冬場のパン作りはちょっとコツが必要だということが分かった。室温が下がるので、発酵がうまく進まなくなるのだ。従って水ではなくお湯を使ったり、あるいはコタツの中に入れて温度を上げたりといった工夫が必要になる。
こうした工夫で一時は乗り切ったのだが、再びちっとも膨らまなくなった。特に寒い時期でもなかったため、ドライイーストの不良を疑ったが、新品を投入しても改善しなかったので、2台目を購入した。この2台目も約3年が経ち、温度や材料を工夫しても膨らまなくなった。どうやらここいらが機材的な限界、ということのようだ。
どうする? 3台目
ホームベーカリーは、おいしいパンが食べられる割には、かなり安い調理機器だと思う。特定の機能にこだわらなければ、6000円〜7000円が平均価格だろうか。うちの1台目はそもそも購入したものではなく、クレジットカードのポイントでゲットしたものだった。ツインバードの製品だったが、すでに現行商品ではないため型番は不明である。
2台目は、当時家電製品レビューで評判の良かったオークセールの「siroca SHB-212」というモデルだった。見た目にも丸っこくて可愛い機器だったが、いかんせんモーターの回転音が甲高く、うるさかった。夜中に動作が始まると、2階の寝室で寝ていても気づくレベルだ。うまいパンが焼けるのは結構なのだが、こういった日常生活に関わる部分は、なかなかレビューの評価には現れてこない。
2台目が壊れたとき、3台目をどうしようかと、いろいろ考えた。2、3年しかもたないものを、いつまで買い換え続けるのかということである。機材費や材料費を考えたら、スーパーで食パンを買ってきたほうが全然安上がりだ。
だが週に1度でも、焼きたてのパンの香りで目が覚める幸せは捨てがたい。コストだけを考えて人生を歩むというのも、味気ない。すでに5年も続けているわけだし、3台目を買えばおそらくこれからも飽きずに、ずっと習慣として続けていくのだろう。
もう少し高級なモデルなら耐久性があるかもしれない。だがそれは3年使ってみて、はじめて結果が出る話なので、何の確証もない。価格が高いということは、耐久性が高いというよりも、多機能であったり、特殊機能があることを売りにしている。
筆者が知る中で最も高額なものは、2010年に出た三洋電機のGOPANシリーズだ。約50,000円である。これは米からパンが作れるということで、小麦アレルギーの家族がいる家庭を中心に、大ヒットした。
GOPANは今でも流通在庫があるようだが、メーカーのほうがすでになくなってしまったので、修理やサポートの面を考えれば、今からこれを選択する線はない。米粉パンのようにいろいろなタイプのパンを作ってみたいという方は、機能が多いほうが楽しいだろう。ただその分値が張るし、日用品としてのコストを考えると、高級品を毎週容赦なくぶん回すというのは割に合わない。
ホームベーカリーはそこそここなれたジャンルなので、毎年毎年革新的な機能が搭載されることもない。従って、2、3年前の高級モデルを安く買うというのも作戦としてはアリだ。ただ後継機が出ているということは、すでに現在は生産されておらず、流通在庫ということになる。つまり製造されてからそれなりに時間は経っているということだ。その辺りの価格とリスクのバランスをどう考えるかが難しいところである。
それを踏まえて価格と評判をいろいろ調べた結果、栄えある3台目が決定したわけだ。パナソニックの「SD-BH1000」というモデルで、実売14,000円ほどである。昨年発売のいわゆる型落ちなので、価格もこなれている。ちょっと色が気に入らなかったが、たぶんこれも慣れるだろう。実際の焼き上がりは、次回のお楽しみである。(つづく)
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