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値段の差はココ! ホームベーカリー選びのポイント──コデラ総研 家庭部(55)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第55回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「値段の差はココ! ホームベーカリー選びのポイント」。
文・写真:小寺 信良
ホームベーカリー3台目として、パナソニックの「SD-BH1000」を購入した。過去購入してきたのは7000円〜8000円レベルのものなので、金額としてはおよそ2倍である。
ホームベーカリーの主な価格差は、自動投入機構の有無だ。自動投入とは、後から入れる食材、例えばドライイーストであったり、レーズンやナッツであったりといったものを上蓋部分にセットしておけば、コースの途中で自動投入してくれるのである。
自動投入機構がないものではどうやるかというと、ドライイーストは最初から入れておくしかない。またレーズンのようなものは、練り作業が半分ぐらい終わったところで休止し、アラームが鳴るので、そのときに人間が走っていって投入するのである。別に走らなくてもいいのだが、たいていはずっとキッチンにいるわけではないので、急いで行かないとコースの続きが始まっちゃうのである。それが面倒で、うちではほとんど具入りのパンは作らなくなった。
ドライイーストは、最初から入れておくと、たまに失敗することがあった。ドライイーストは水に弱いのだが、タイマーで動かす場合は水も含めて全部の材料を入れ、そのままで数時間放置することになる。なるべく水に濡れないよう、小麦粉の山になった部分にドライイーストを入れるのだが、時間が経つと水が小麦粉にしみこんで、ドライイーストを濡らしてしまうことがあった。こうなると膨らみが足りず、食感の重たいパンになってしまう。
後から自動投入するタイプなら、先にドライイースト以外の材料を混ぜてしまい、ちょうどいいタイミングでドライイーストが投入されるので、水濡れの失敗がない。
さらに購入するまで知らなかったのだが、パナソニックのホームベーカリーは以前から室温センサーと庫内温度センサーを搭載しており、気温変化に対応しながら焼いてくれるのであった。これまで季節に応じて水の温度を変えたりしていたわけだが、そういう手間がなくなった。年間を通して均一な出来になるのなら、確かに値段分のことはある。
基本性能に大きな差が
それ以外にもメリットは大きかった。以前の低価格のものは、生地の練りが始まると、豪快なモーター音が響き渡った。さらに内部では材料がかき回されるので、ヤワな台に乗せておくとギシギシと揺れる。
ところがSD-BH1000は動作音が低く、テレビを見ていると動いていても気がつかないレベルだ。振動も少なく、台がきしむこともない。やってることはほぼ同じにも関わらず、設計やモーターの違いでここまで差があるのかと驚いた。
もうひとつは、このシリーズの売りである「パン・ド・ミ」がなかなか美味いことだ。パン・ド・ミとは、表面の耳が薄く、中身部分が多いパンのことである。通常の食パンコースに比べると出来上がり所要時間が50分ほど長く、およそ5時間かかるが、タイマーで寝ている間にやらせれば問題はない。天板の裏側に熱の反射板を設けるといった工夫もあり、パンのてっぺんまできれいに均一に焼ける。うちではパン・ド・ミの焼き上がりにすっかり満足してしまったので、普通の食パンは全然焼かなくなってしまった(写真1)。
地味な機能としては、停電時の対策ができている点は素晴らしい。キッチンでは、まれに電気調理器具の組み合わせによってブレーカーが落ちることがある。こういうときに普通のホームベーカリーでは、再度通電したらその続きから……というわけにはいかない。仕込んだ材料が丸ごと無駄になってしまっていたのだ。だがSD-BH1000では、10分以内に電力が復帰すれば、そのまま続きからコースを続行してくれるので、材料が無駄にならない。最近はバターも希少品になってきているので、こういった機能はありがたい。
近頃は急に冷え込んできて、特にタイマーで動作する深夜はかなり寒い。以前なら冬場は焼き上がりにかなり出来不出来のばらつきが大きかったが、毎回均等な出来上がりで焼けるあたり、さすが室温と庫内温度センサーを装備しているだけのことはある。
ただ蓋の密閉度が高いせいか、焼き上がりであまりパンの香りが漂ってこないところは、若干幸せ感が薄いところではある。しかしトータルでは、しっかり値段分の違いは感じることができた。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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