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女性中心の活動とどう向き合っていくか──コデラ総研 家庭部(56)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第56回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「女性中心の活動とどう向き合っていくか」。
文:小寺 信良
写真:風穴 江(tech@サイボウズ式)
男女の意識差を表した漫画や図がときおりインターネットで話題になる。曰く、男性の会話は解決が最重要であり、女性の会話は共感が最重要とされているというのだが、なるほどという事例をいくつか経験したので、少し考察してみたい。
とかくPTAや子供会など、保護者間で活動する場というのは、どうしてもお母さん方が主力になりがちである。そこで会長や委員長などをやっていると、いろんな問題が報告されてくる。
現在僕は子供会の会長をやっているのだが、ある通学班内で、1人の保護者の振る舞いに対して他のお母さん方が納得いかないという話が持ち上がった。子供会役員を免除されるのがずるいとかずるくないとか、そういう話である。実際会長まで聞こえてこない細かいレベルではこの手の不満はよくあるのだが、今回は事が大きくなりそうだった。学校に出向いて校長に対応を迫るというような話も聞こえてきた。
解決するのは相当大変のように思えた。なぜならば、具体的に該当の保護者に対してこちらからアプローチできることは限られており、もはや他のお母さん方の気が済むとか気が済まないとかいうレベルの問題だからだ。とりあえず状況を確認してもらうべく、何度か女性の副会長に話を聞きに行ってもらった。
ところが2回3回と出向いて話をするうちに、もういいという話になっていった。特に何もしてないのだが、話を聞いてもらって共感してもらえたことで、納得したようだ。
もうひとつ、こんなことがあった。この4月に娘が中学校に上がるので、学校説明会に行ってきたのだが、そのときに中学校のPTA会長と役員から、次期PTA会長をやってくれないか、という打診を受けた。
実は同じようなことを、子供が小学5年生になるときにも経験している。そのときに知ったのだが、うちの地域ではPTA連絡協議会や育成会の会合がかなりの頻度で平日の夜に行われており、必ず会長が出席しなければならないということだった。
うちはシングルファーザー家庭であり、僕自身は子供をひとり残して夜に長時間家を空けるのは好ましくないと考えているので、これまでも仕事関係の夜のミーティングや飲み会やなどは極力断ってきている。さらにこれから反抗期も来るし、それまでに子供と向かい合う時間を大切にしたいということをお話しさせていただいたのだが、そうしているうちに先方も、そうなのようちも子供とご飯を食べるのが月に何回もないとか、反抗期は大変だったという話になる。僕もそうでしょうそうですよね、と話を聞いていただけなのだが、特に断ったわけでもないのに、PTA会長依頼の話はうやむやになってしまった。
解決が最終目的か
この話の主旨は、女性の共感力を利用せよという話ではない。意識差というのが厳然と存在する中で、ボランティア活動に男性がどのように参加するべきか、という話なのである。
当然女性であっても、ビジネスの現場においてまで、共感を重視しているわけではないだろう。そもそも社会の中においては、問題を解決することで利益を得ている仕事が圧倒的に多い。ビジネスミーティングで何かと「ソリューション」という単語が出てくるのは、当然である。
一方でPTAや子供会のようなボランティアでやっている活動の場合、常に問題を解決することが最優先されるわけではない。毎年やっていることを、今年もみんなで協力しながらうまく回すというタスクが中心になるため、生産性向上といった「ソリューション」はそれほど必要ではない。すなわち、女性が中心で回したほうがうまくいく世界であることには違いないのだ。
しかしその中でも、ついに活動の限界が見えてきて、どうしても改革が必要というタイミングがある。そういうときに男性がリーダーとして投入されるというのが、望ましい形であろう。ただ、男性特有の問題解決のためのリーダーシップは、男性同士の中では一旦認め合えば安定するが、女性の中においては長く続かない。あくまでも困ったときのワンポイントリリーフみたいなもんであろう。
女性が男性のリーダーに何らかの話を持ってくるときには、それが問題を解決して欲しい案件なのか、共感して欲しい案件なのかを、リーダーは見極める必要がある。例えば女性とミーティングしていると、「お腹すいたねー」とか「今日は寒いねー」みたいな話になるが、男性はじゃあ何か買ってこようかとか、エアコンの温度上げるとかして、解決してしまう。しかしそれはいますぐ解決して欲しい問題ではなく、それをきっかけに話を広げて欲しいのだ。そして共感のネタを増やしたいのである。
ただしここはよく見極めないと、本来は解決したほうがいい大きな問題でも、共感しているうちに、女性側でもどうでもよくなってしまうことが起こりうる。あとで冷静になったときに何も解決してないことに気づき、リーダーの資質が問われることになるのだ。
本来ならば、PTAや子供会も男女均等に保護者が協調するべきなのだろう。ただ現実は、男性がポツンと1人で参加するようなことになりがちだ。男性はどうしても目の前のタスクを「問題」だと捉えて、最短距離で解決しようとするが、女性はそう考えていない。タスクはあくまでも成果であって、目的はコミュニケーションのほうにある。だから、男性1人でいるときは、おかしくなくてもにっこり笑って話しかけやすい表情をすることが重要だ。男というだけで十分に警戒しているのに、仏頂面ではコミュニケーションもままならないだろう。こういうことを飲み込んでおくだけでも、随分と「浮く」ことは少なくなるはずである。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
変更履歴:
2016年01月29日:「生産性向上といった『ショリューション』はそれほど必要ではない。」の「ショリューション」は、正しくは「ソリューション」でした。お詫びして訂正いたします。
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