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強炭酸水で「炭酸フルーツ」を作る──コデラ総研 家庭部(62)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第62回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「強炭酸水で『炭酸フルーツ』を作る」。
文・写真:小寺 信良
前回は「SodaStream」を使っていつでも炭酸生活のシアワセ具合をご紹介した。あれから毎日1リットルの炭酸水を作っているが、まだガスはなくなる気配が全然ない。オマケのシロップが残り少なくなってきたので、炭酸水の別の活用方法として、「炭酸フルーツ」を作成してみることにした。
炭酸フルーツとは、強炭酸水にフルーツを漬け込むことで、食べるとシュワシュワな食感が楽しめるという、一種のデザートレシピである。一般に広く認知されたのは、2013年にNHKの「ためしてガッテン」で紹介されたのがきっかけのようである。SodaStreamの公式サイトにもレシピが載っているが、作り方は簡単。好きなフルーツを密閉ビンに入れ、強炭酸を注いで冷蔵庫で冷やすだけだ。
まずは近所のスーパーで手に入るフルーツで試してみた。いちご、ぶどう、カットパイン、りんごの4種である。りんごはそのままでは入らないので、適当なサイズにカットした。ビンは、ネジ式の蓋のついたジャムの空きビンと、ゴムパッキンがついた広口ビンの2つを用意した。
まずジャムの空きビンだが、そもそもジャムの製造工程では、一旦真空に引いてから蓋をするという作りになっている(写真1)。
つまり蓋は、外圧に強い構造になっている。一方炭酸水を入れて密閉すると、今度は内側から圧力がかかる。そっちからの圧力にはあまり強くないようで、蓋をきつく締めても少しずつ炭酸が漏れているようだった。上に重しを乗せるなどして、密閉を工夫する必要がある。
ゴムパッキン付きの広口ビンのほうは、内側からの圧力に耐えられるように作られているはずだ(写真2)。
だが実際に強炭酸を入れてみると、内側からの圧力が強すぎるのか、やはり少しずつ漏れ出している。こちらも重しを乗せることでカバーした。
フルーツによって大きく異なる結果に……
では味の方はどうか。レシピには、皮付きで食べられるものがおすすめとあるが、実際にやってみるとその理由が分かった。カットパインやりんごは、炭酸が染み込むと同時に水も染み込むので、食感が水っぽくなってしまうのだ。
炭酸は、無味無臭の単純な刺激のはずだが、果物に入り込むとその刺激が酸っぱさとして感じられる。パイナップルはそもそも甘酸っぱい味だが、炭酸に漬け込むと酸っぱさがより強調される。水っぽいわ酸っぱいわで、散々な味だった。
りんごのほうは、多少水っぽくなっても食べられる果物だが、パイナップルと一緒に漬けたのが良くなかった。パイナップルの強い味がりんごに移ってしまっている。しかも酸味が増して感じられるので、こちらも失敗だった。
一方皮付きのぶどうは、味もしっかりしてシュワシュワ感もあり、なかなか美味しかった。マスカットやデラウェアなど、ぶどうも種類が多いので、いろいろなパターンが楽しめそうである。ただ、もうぶどうの季節は過ぎてしまっているので、次は夏過ぎに挑戦してみたい。
いちごは皮があるとは言えないが、自然界でもあのままなっているだけあって、あまり内部に水分を通さないようだ。こちらもかなり美味しい。いちごはハウス栽培でほぼ1年中手に入るので、これからも楽しめるだろう。
漬けたあとの炭酸水だが、多少はフルーツの味が溶けているかと思って飲んでみたところ、フルーツ味はまったくせず、単に青臭いだけだった。漬けた後の炭酸には、利用価値はない。
漬け込む時間だが、レシピには6時間程度とある。ビンの密閉度が高ければいいのだろうが、どうしても少しずつ漏れてしまうことを考えれば、3〜4時間ぐらいがいいように思う。試しに一晩漬けてみたが、炭酸がかなり抜けてしまって、ただの水に漬けた果物になってしまった。
つまり炭酸フルーツは、食べごろがかなり限定されるレシピだ。お昼に仕込んで夜食べるぐらいのスパンがちょうどいいが、うっかり忘れると翌朝には炭酸が抜けてしまい、美味しくないだろう。ただ数時間でできるのは魅力なので、ホームパーティのデザートとしては作りやすく、ウケもいいように思う。(了)
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