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洗剤依存症からの脱却──コデラ総研 家庭部(64)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第64回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「洗剤依存症からの脱却」。
文・写真:小寺 信良
料理は好きだが、後片付けが嫌いという人は多い。特に料理を始めたばかりのころは、作るのに夢中になって、気がついたらシンクが鍋釜類で山になってしまうものだ。その状態で食べ始めると、さらに食後には食器類の洗い物も加わるので、どこから手をつけていいか分からない状況になる。
洗い物を溜めるという習慣は、おそらく浸け置きしておけば洗いやすくなるという考えからきているのかもしれない。だが、鍋釜類の浸け置きは、ひどい焦げつきの場合には効果があるが、普通に煮炊きや炒め物で使ったあとでは必要はない。むしろ大物は早めに洗って片付けないと、他の調理の邪魔になってしまう。
うちではいつも、鍋やフライパンから調理したものをお皿に移したら、まだ熱いうちにお湯で洗っている。火傷に注意しながらの洗い物となるが、実際やってみると、洗剤を使わなくても驚くほど汚れが綺麗に落ちる。
その理由は、金属の熱膨張と収縮にある。金属は熱せられると膨張するのはご存じだろう。当然鍋やフライパンも加熱すれば、膨張している。
これを40度ぐらいのお湯で一気に冷ますと、収縮して元に戻る。このとき、表面に貼りついた焦げつきなどの汚れは、貼りついていた土台が縮むので、剥がれやすくなるのだ。餃子を焼いたとき、綺麗にとりだすために濡れ布巾の上でフライパンを冷ますが、要するにアレと同じである。水ではなくお湯を使うのは、油は水ぐらいの温度だと急速に固まって落ちにくくなるからだ。冷えてしまわないうちにさっと洗いきってしまうのがコツである。
しかも調理中にはかなりの高温になっているので、調理直後の鍋類は殺菌状態にある。これをわざわざ水に浸けて放置し、雑菌を繁殖させることはない。
注意点としては、スポンジやタワシの衛生だ。いくら鍋側に雑菌がないといっても、雑菌だらけのスポンジをこすりつけては元も子もない。うちでは洗剤はもっぱらスポンジの消毒としての役割が大きい。さらに言えば、食器洗い用スポンジなど5個セットで100円もしない。汚れが目立ってきたら、最後に生ゴミ受けなど超絶汚いところを洗って捨て、すぐに新しいものと交換するべきだ。
特殊な鍋釜類の洗い方
最近の鍋はほとんどがアルミ製だし、フライパンはテフロン加工など、焦げ付き防止の加工が施されている。これらは丈夫なので、急激に冷やしてスポンジや亀の子タワシで擦り洗いしても大丈夫だ。一方で洗い方にコツがいるものもある。
うちでは炊飯に土鍋を使っているのだが、土鍋は土を焼き固めただけなので、急激な温度変化に弱い。空になったからといって、急に冷たい水に晒すと割れてしまうので、注意が必要だ。土鍋は自然に冷えるのを待ってから、水洗いする。
また土鍋は、洗剤の浸け置き洗いは厳禁であることは、あまり知られていない。元々土鍋は吸水性があるので、洗剤を溶かした水につけておくと、洗剤まで吸い込んでしまうのだ。これでは次回使用するときに、吸い込んだ洗剤が溶け出してくる。土鍋は冷えたころを見計らって、水洗いするだけで十分だ。
焦げつきがある場合は、水を入れて火にかけ、いったん煮たたせる。そのあと冷えるのを待って、スポンジで水洗いすると綺麗に落ちる。また土鍋は底が濡れた状態で火にかけると割れてしまうので、底はなるべく濡らさないようにし、全体をよく乾かしてから火にかけるようにしたい。
最近ネットでもよく話題になるのが、中華鍋のような鉄鍋の扱いだ。これも洗剤では洗えない。
中華鍋は薄い鉄板であり、表面にテフロン加工などはまったくされていない。したがって最初に使うときには、熱したあと油を引き、野菜クズなどを使って炒め、鍋全体に油を馴染ませる「儀式」が必要になる。この油の膜が焦げつきやサビを防止するわけだ。
洗剤を使って洗ってしまうと、この油膜まで綺麗に分解して洗い流してしまう。中華鍋もやはり熱いうちにお湯で洗えば十分だ。
注意すべきは、洗い終わりのあとである。濡れたままで放置しておくとサビてしまうので、いったん火にかけてすぐに水分を飛ばしてしまったほうがいい。しばらく使う予定がないのであれば、手で触れるぐらいまで放置して冷まし、薄く油を塗ってからしまうといいだろう。
洗剤を使わないと、洗った気がしないという人もあるだろう。だが洗剤を使うべきではない鍋類もあることが分かれば、徐々に洗剤依存症から脱却できるのではないかと思う。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
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