無くしちゃいけないものを探す──コデラ総研 家庭部(86)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第86回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「無くしちゃいけないものを探す」。

文・写真:小寺 信良

kdr086_ph01_IMG_3592_x610.jpg

娘との2人暮らしが始まって5年になる。家族が2人しかいないと、いろいろ不便もある。もっとも問題だったのが、鍵の管理だ。

筆者がいつでも家に居ればいいのだろうが、取材や発表会等で家を空けることも多い。娘には家の鍵を渡しているのだが、この鍵をとにかくよく無くす。学校に行く前に鍵を持ったかと確認するのだが、持ってるつもりが持っていない、ということが多々ある。そのたび、筆者が戻るまでご近所の家で面倒見ていただいたりして、ご迷惑をかけている。

あるはずのところにない、ということは、どこにあるのか分からなくなっているわけである。そこからが大変だ。通学カバンをひっくり返したり、机の中をかき回したり、ポケットを探ったりと、鍵を探して1日中バタバタすることになる。習い事のバッグや、3日前にちょこっと出かけたときのポーチなどから発見されたときには、どうして最初にそこを探さないのか、と説教しなければならない。とにかく子供の鍵が見つからなければ、こっちも出かけられないのだ。

もういい加減説教するのもばからしくなったので、紛失防止のタグを導入することにした。Bluetooth LE(Low Energy)に対応し、スマートフォンと接続して、アプリから音を鳴らすことで、無くしたものを探すというタグである。

このジャンルには複数の製品があるが、今回は「TrackR bravo」という製品を使ってみることにした。ボタン電池を内蔵する円形のタグで、キーホルダーなどと一緒に鍵に付けられる。

正規販売ルートとしては、ソフトバンクが運営するクラウドファンディング「+Style」にて1個3229円で販売されている。Amazon辺りだと並行輸入品のようだが、価格は1600円〜3400円まで激しく変動している。

筆者は今年1月末に、アメリカの公式サイトから購入した。「Buy3 Get2」(3つ買うと2つオマケ)で送料含めて約110ドルだったので、日本円では1個2500円ぐらいだろうか。ちゃんと日本の技適も通っているので、法的にも問題なく使える。

可能性がある技術

TrackRは、鍵だけでなくいろいろ無くしてはいけないもの、居場所が分からないと困るものに付けることができる。

実は以前も、似たような製品を購入したことがあった。それというのも、夏冬の長期休暇では実家に帰省するのだが、そのときに飼い猫のはなちゃんも一緒に連れて行かなければならない。だがこのはなちゃんが、いざ行くぞというときに見つからないのだ。

一度はとうとう見つからず、やむを得ず家に置いていったこともある。それではかわいそうだと言うことで、首輪にBluetoothタグを付けて、居場所が分かるようにしておいたのだ。

ところがこのタグ、防水ではなかったために、はなちゃんが水を飲むたび、首輪から垂れ下がって水の中にボチャンと浸かる。3日程度で錆びて使えなくなってしまった。1個5000円ぐらいと結構高かったのだが、まったくヒドい目にあった。

今回のTrackRは、購入時に防水パッケージもサービスしてくれたので、こうした用途で濡れる可能性があるものにも付けられるのがメリットだ。現在はなちゃんにくっつけて2カ月あまりが経とうとしているが、まったく問題なく動作している。

TrackRは、スマホアプリで操作すると音が鳴って、そのもののありかを教えてくれる。また電波強度を計測し、そのものが近づいているのか、離れているのかも大まかに測定することができる(画面1)。

kdr086_ph01_IMG_3584_x400.jpg

画面1:はなちゃんの居場所が分かるだけで大助かり

さらに面白いのは、「クラウドGPS」という仕組みがあるところだ。タグ自体にはGPS機能はないのだが、スマートフォンと接続している限りにおいては、そのスマホ位置がタグの位置だと認識する。

TrackRのユーザーが専用アプリをインストールしていれば、そのスマートフォンはGPSの基地局のような働きをする。もし自分の持ち物が盗まれて、それにくっついているTrackRが別のTrackRユーザーの近くを通りかかると、「何時何分にその近くを通った」ということが通知される。

従ってTrackRユーザーが増えれば増えるほど、GPS基地局がメッシュ状に配置されることになるので、紛失物が追跡できるというわけだ。ただし現時点でこうしたクラウドGPSがきちんと実用的に使えるのは、アメリカの人口密集地に限られる。

こうしたメッシュネットワークは、一私企業の製品ユーザーという限られた範囲では、カバレッジに限界がある。もっと広く誰でも使えるオープンなプラットフォームになったら、もっと多くの人にメリットがあるはずだ。

例えば、認知症による徘徊老人の捜索するといった用途で、このようなBluetoothタグによる実証実験も行なわれているところでもある。こうした目的のために、自分もメッシュネットワークの1つのノードとして人知れず協力しても良いという善良な人たちは、大勢いるはずだ。

じゃあどこが音頭を取ってやるのか、というのが問題なわけだが、そんな中、TrackRが一番有力なのではないかという気がする。単に自分の捜し物が見つかるというだけでなく、一種のソーシャルネットワークとしての可能性もあるのではないだろうか。(了)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

Comment